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福島県のローカル紙、福島民報(本社・福島市)が20日の朝刊で掲載した、安倍晋三元首相の国葬を巡る県民世論調査結果のうち、「18〜19歳は100%国葬に反対した」とする内容について、統計調査上の疑念がネット上で噴出している。

写真:ロイター/アフロ

「驚きの結果」のはずが…

調査では全世代では「反対」が66.3%を占めたが、このうち年代別では「18~19歳が100%と最も高く」出たとしている。調査を担当した記者は「特筆」事項として、調査結果の概要を伝える本記とは別稿のコラムを執筆。

「若者は『国葬』に賛成している」。最近一部でそんな声を耳にしますが、本当にそうなのでしょうか。

と切り出し、「世代別に見ると驚きの結果」を伝えた。

若い世代の国葬の賛否を巡っては、安倍元首相の「宿敵」だったはずの朝日新聞の世論調査(9月10、11日)で「賛成」が58%と「反対」の29%を大きく上回った。賛否の傾向がほぼ真逆だった50代、60代、70代以上の世代との違いが話題になっていた。福島民報の担当記者は、地元の若者たちの意識が、こうした世間一般の傾向と逆だったことがよほど嬉しかったのだろうか。

案の定、「アベガー」と呼ばれる反安倍派の人たちは早速ネットで勝ち誇ったように拡散。著名人ではタレントのラサール石井氏は「誰だ、『若者は国葬に賛成している』なんてデマを流したのは、 こうやって誰かの一言が拡散してありもしない空気を作るんだねえ」と満足そうにツイートした。

田端氏「分母って何人でしょうかね?」

しかし、この石井氏の投稿が、調査統計に見識のある人たちからの疑念を呼んでしまう。

LINEやZOZOの執行役員時代から、マーケティングを担当してきた田端信太郎氏は石井氏に対し、「これ福島県民が対象の世論調査なので携帯を除いた福島県の市外局番の固定電話へのRDD(ランダム電話)調査と推測」と呼びかけた上で「だとすると、常識的に考えて、18,19歳が電話に出る確率は、かなり低いですよ。「反対100%」と見出しにする18歳と19歳の分母って何人でしょうかね?その数値言えないと信頼性ゼロでは?」と疑問を示した。

福島民報の問題の記事中(電子版)には、サンプル数は明記されていないが、福島テレビのネット配信記事には「9月17日に福島県内の有権者718人を対象に、電話で世論調査を行った」とある。しかし、そこでも今回の焦点である「18歳、19歳」のサンプル数については公開されていない。

田端氏はツイートで一般的な統計の「常識」として、調査主体や全体サンプル数、サンプルのピックアップ手法などを見る必要があるとも指摘。そうしたことが十分に公開されていない調査結果の報道については「フェイクニュースでの世論誘導行為だと思うべき」と辛辣に評した。そして「政治的な主張や意見は、色々とあっていい」としながら、「世論調査においてサンプルやセグメント母数のN値も出さずに、『反対100%』って見出しに書けてしまうのは、どうみても、頭が悪すぎる」と酷評した。

仮想通貨取引所「ビットフライヤー」の加納裕三代表もこの田端氏のツイートを引き合いに「賛成か反対かが50%で場合に、母数Nが仮に24人だとして全員が反対である確率は、宝くじの一等よりも低い確率です」と指摘。「流石に24人くらいには聞かないと統計とは言えないですよね」と述べ、同じく数字の出し方に懐疑的だった。

国葬の賛否とは別に、調査のあり方の「そもそも」に疑問符をつけられた格好の福島民報は、田端氏らのこうした指摘をどう受け止めたのか。

福島民報社はこの日、SAKISIRU編集部の取材に対し、「固定電話による調査を行い、回答者数は718人です。年齢別の詳細は公表しておりません」と、18、19歳の数字について明らかにしない意向を改めて示した。さらにネット上で「母数が少なすぎるのではないか」との疑問が出ていることについても「お答えしておりません」と回答を避けた。