2022年10月26日、政府税制調査会(首相の諮問機関)は総会を開き、消費税や自動車関連諸税について議論した。参加した複数の委員から消費税の増税や(現在軽減措置を受けている)EVへの課税についての意見が出たという。自動車に関連する税金について議論するならば、まだ普及しておらず、普及を促進しなければいけない「EVへの課税」を考える前に、いままさに実施されている二重課税や、悪法としか言いようがない旧車への重税、「世界一高い」と言われている自動車関連諸税を見直すべきではないか。
文/ベストカーWeb編集部(編集長T)、画像/AdobeStock(@Tomasz Zajda)、日本自動車工業会
■アクセルとブレーキを同時に踏んでいる
10月26日に開催された政府税調の総会では、「EVは、普及させるために多額の税金を投入しているうえ(車両重量が)重いので道路への負担が大きい。エンジンがないからといって安い課税水準でいいのか疑問だ」、「走行距離に応じた課税などを検討すべき」との意見が出たという。
昨年(2021年)の日本国内におけるBEV(電気自動車)の累計販売台数は約2万台強であり、国内総販売台数約445万台の約0.5%程度に留まっている。残り99.5%は「世界一高い」と言われている日本の自動車関連諸税を支払っており、そちらについていっさい言及せず、また二重課税や旧車への重税など問題の多い税制を改善しようとせずに、優遇税制を受けているEVについてだけ「課税方法を考える」という趣旨の発言は、「取れるところから取ることしか考えていない」と言われても仕方ないだろう。
もちろん今後EVは増えてゆくだろうし、時代の移り変わりに応じて税制を調整することは重要ではあるが、いっぽう現在EVに対して税率が軽減されているのは「2035年までにカーボンニュートラル社会を実現する」と決めた日本政府の方針に依る。こうした状況でEVへの課税を検討するのは、アクセルを踏みながらブレーキを踏むようなものではないか。
現在、日本国内の自動車販売は低下トレンドに入っている。1990年には約777万台だった国内年間新車販売台数は、上述のとおり2021年に約445万台まで下がっている。自動車産業は国内経済の基盤であり、雇用と景気を支える重要な歯車のひとつといえる。政府税調はこの30年間の日本経済全体の疲弊について、責任を感じていないのだろうか?
そもそもの話として、自動車産業は裾野が広く、クルマの製造や販売だけでなく、各種部品やアフターパーツ、燃料代や高速道路利用料のほかにも、人が動けば移動先で食事をし、駐車して宿泊し、お土産を買う。多くの人がクルマを買ってクルマで動けば、経済全体が潤うことになる。本来は大事に育てるべきジャンルに対して、「クルマを買うこと」「持つこと」が、まるで「罰」のように感じられる税制はおかしい。
現在の自動車関連諸税は、「クルマを持っているということはお金持ちである≒なので税金をたくさんとっても大丈夫」という半世紀以上前の意識で組み立てられている。しかしたとえば高齢化が進む地方において、クルマは重要なライフラインのひとつでもある。そうした状況を税制に反映すべきではないか。
環境や社会情勢、人々の意識に沿って変えてゆくべきなのは間違いないのだけど、金の卵を産むニワトリを「食べられるから」といって調理してしまうような制度には、強く反対したい。
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