かつて日本にも導入された初代は、当時のジープでは初となる3列シートを装備。位置付けもグランドチェロキーの上という堂々たるものだったが、新たに登場した2代目はキャラクターを一新。「司令官」という勇ましいネーミングながら、その中身は実に手堅いものに仕上げられていた。
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2Lディーゼルターボは期待値通りの経済性
「司令官」を意味するネーミング、3列シートを備えたSUVというボディ形態こそ共通しているが、新型コマンダーはかつて日本でも販売された初代とは完全な別モノだ。そのエクステリアは、合理的なパッケージングをうかがわせるキャビンの長さが印象的。背が高く、長いボンネットとスクエアな造形で当時でもクラシカルな風情を醸し出していた初代と比較すると、新型はいかにも現代のジープらしい仕立てになった。
スリーサイズは、全長4770×全幅1860×全高1730mm。ホイールベースは、奇しくも初代と同じ2780mmとなるが、現行のジープではコンパスとグランドチェロキーの中間的ボリューム。全高を除けば初代とさほど変わらない体躯である点は少し意外だったが、SUVとしては日本でも持て余す心配がないサイズ感に仕立てられている。
一方、室内に目を転じるとインパネ回りもまた現代のジープらしい。奇をてらったデザインではないが、ドライバー正面のメーターには10.25インチディスプレイを採用。センターには10.1インチのタッチパネルが備わり運転支援系を筆頭とする装備回りも充実。ジープに限らず、初めてSUVを購入しようというファミリー層へのアピールにも抜かりはない。
3列シートを備えたSUVとしての使い勝手も満足できる仕上がりだ。リクライニング機構を除けば2、3列目シートに特別な調整機能は備わらないが、身長178㎝の筆者が2列目に座っても当然ながら干渉する箇所は皆無。膝を抱えるような姿勢になること、そして頭上回りが多少窮屈なことを除けば3列目の実用度もまずまずと言える広さが確保される。
日本向けの初代がV8ガソリンオンリー(4.7Lと5.7L)の布陣だったことを思えば、新型は搭載するエンジンの選択も実に堅実だ。日本仕様のジープとしては初めてのディーゼルとなる2Lターボのアウトプットは170psと350Nm。1.9トンほどの車重に対して、動力性能は必要にして十分というところ。日常域から高速のクルージングに至るまで、過不足のない速さを披露してくれる。ディーゼル特有の音、振動についてはその素性を包み隠さず……という水準にとどまるのは少しばかり残念だが、組み合わせる9速ATがワイドレンジなだけにいったん速度が上がれば絶対的な静粛性にも不満はない。また、経済性に関しては期待値通り。今回は街中から高速のクルージングまでを試したが、燃費は終始2桁台をキープ。ここ最近の燃料費高騰を思えば、ジープに興味を示す潜在ユーザーの背中を後押しできる実力であることは間違いない。
一方、それを受け止めるシャシー回りの味付けはジープだと思うと引き締まった印象だ。アメリカ生まれのブランドらしい、肩の力が抜けた鷹揚さはなく特に低速域だと路面からの入力は正直に伝わってくる。とはいえ決して不快なレベルではなく、中・高速域になればフラットなライド感を披露してくれるので、ロングクルージングの機会が多い人なら気にはならないだろう。また、ミドルサイズのSUVとしては操縦性も素直な味付けだけに、スポーティというレベルまでなら十分に対応できる。レーンアシストを筆頭とする運転支援系の制御が多少大雑把な点は気になるものの、全体的なまとまりは最新SUVとして満足できる出来映えと言える。
と、このように豪放磊落な印象もあった初代と比較すればミドル級のSUVに要求される要素がそつなく網羅されている新型。新たに赴任した”司令官殿”は初めてのSUV、あるいはジープを購入しようという潜在層にとって手堅い選択であることは間違いない。
【Specification】ジープ・コマンダー・リミテッド
■全長×全幅×全高=4770×1860×1730mm
■ホイールベース=2780mm
■トレッド(F:R)=1580/1590mm
■車両重量=1870kg
■エンジン種類=直4DOHC16V+ディーゼルターボ
■排気量=1956cc
■最高出力=170ps(125kW)/3750rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1750-2500rpm
■燃料タンク容量=60L(軽油)
■燃費(WLTC)=13.9km/L
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=マクファーソン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F&R)=235/55R18
■車両本体価格(税込)=5,970,000円
■問い合わせ先=ステランティスジャパン 0120-712-812
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