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 西鉄グループは、中古のディーゼルバスを電気自動車に改造するプロジェクトをスタート。しかも制作するのはグループ企業の西鉄車体技術が担当する。このレトロフィット電気バスは、完成した後に福岡地区へ導入する予定。

 自社のディーゼルバスを電気車に改造して走らせる試みはすでに実証実験として行っているが、今度は自社グループで製造してしまうようだ。

文:古川智規(バスマガジン編集部)


ポストディーゼルはまだ確定していない

 カーボンニュートラルの観点から、ディーゼル車の代替をするパワーユニットは選択肢が多くあり、まだ決定打というものはない。それぞれが日進月歩で新しい技術を開発して組み込んでいるからだ。最終的には普及したものが費用が抑えられ残っていくことになるだろう。

 バッテリーとモーターを積み、発進時の燃料消費と排ガスを抑えようとするハイブリッドバスはすでに確立していてかなり前から走っているが、路線車には多く導入されたものの尻すぼみになっている。

 完全にエンジンを廃し、バッテリーとモーターだけで走る電気車(EV)は、航続距離の問題があり、現在のところ日本のバスメーカーは積極的な開発を行っていない。

 ただし路線車であれば、1日の走行距離は多くないので充電設備さえあれば普及は難しくない。この分野では中国のBYD社のバスが日本でも導入され始めている。

 日本がポストディーゼルと位置付けたのかどうかは別として、最新の技術を身にまとったのが燃料電池車だ。現在ではトヨタSORAが量産化されていて、一部の事業者で導入されている。最多導入は都営バスで70台近くのSORAが都内を走り、乗ることはまったく難しくない状態だ。

 燃料電池車の問題は価格が高いことである。そして水素ステーションを持たなくてはならないことだ。新たな大規模インフラを必要とするので、水素ステーションの地域での共同利用等の整備が必要だ。

西鉄の選択はレトロフィット

 西鉄はこれらのうち、電気車を選択したようだ。そして日本メーカーがEV車を製品として製造していないので、自分で作ってしまおうというのが今回の取り組みだ。

レトロフィットバスは既存のディーゼル車を改造する(西鉄・N×より)

 ただしバスを一から製造するのではなく、自社で保有するバスを種車としてエンジン取り外し、モーターとバッテリーを組み込んでパワーユニットとし、改造(レトロフィット)で電気車を誕生させようというものだ。

台湾メーカーからの技術移転で製造

 レトロフィット電気バスの製作は、台湾最大手電気バスメーカーRAC Electric Vehiclesより設計や改造などの技術指導を受け、西鉄車体技術が持つバス車両改造等のノウハウを活かして製作を進める。

台湾Rac社から技術移転を受ける

 この電気バスの製作・導入にあたっては、国土交通省および北九州市の補助金を活用する。具体的には改造費として国土交通省から約800万円、技術移転費として北九州市から600万円の補助を受ける。なお改造費用は1台当たり2700万円だ。

片江営業所で導入

 西鉄車体技術で改造を施した2台が営業運転に就くのは2023年4月で、片江営業所に導入予定。西鉄では天神や博多地区を通る路線に導入し、今後も台数を増やしていく考えだ。

 新車を導入せずに改造で新しバスを誕生させるアイデアだが、このメリットは種となるバスはすでに自社で走っているバスなので、その費用が不要なことだ。

 そして自動車として最も大切なエンジンをモーターに積み替えるのでエンジンの経年劣化はもはや関係がないのもメリットだ。フレームと車体さえ生きていれば、導入が可能なのもアイデア賞モノだ。

普及に課題も

 非常に優れたアイデアで、費用も抑えられるのでいいことだらけだ。西鉄はかつて車体製造メーカーである西日本車体工業をグループに持っていたが、解散してしまったので、その技術を受け継ぐ西鉄車体技術が改造を担当する。

自社グループで改造できるのはに知って鵜の強み(西鉄・N×より)

 自社でバスの車両改造ができる会社を持っているからこその技であり、他社でここまでできるかどうかは今後の課題だ。レトロフィット電気バスの普及には、さらなる技術移転や国内でのパーツの製造、改造メーカーの誕生等の課題をクリアする必要があるだろう。

 まずは現在走っている北九州市内と福岡市内のバスの動向(バッテリーの仕様が異なり航続距離と充電可能回数がトレードオフになっている)により方向性が決まっていくのだろう。西鉄のお手並み拝見といったところだろうか。

投稿 西鉄が自社開発!? 中古のディーゼルバスを電気自動車に改造ってマジか自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。