“崖っぷちアイドル”として注目を集め、グラビア写真やバラエティ番組などで引っ張りだこになった熊切あさ美さん。
2015年に世間を騒がせた恋愛騒動で心ないバッシングを浴びせられ、7年経った今でも当時のことを思い出すと涙が止まらないほどのトラウマを抱えてはいるが、仕事は念願だった女優業も順調。
2019年には、3本の映画『笑顔の向こうに』(榎本二郎監督)、『悪い女はよく稼ぐ』(原隆仁監督)、『影に抱かれて眠れ』(和泉聖治監督)に出演。2020年に発売された16年ぶりの写真集『Bare Self』(双葉社)も話題に。
2022年11月18日(金)にはヒロイン役を務めた映画『愚か者のブルース』(横山雄二監督)が公開される。
◆プロポーション維持はキックボクシングで
2020年に発売された『Bare Self』(双葉社)は、熊切さんにとって、実に16年ぶりとなる写真集。撮影ではかつてないほど緊張したという。
「カメラマンさんやスタッフさんに『2、3年ぶりとかで、久しぶりだねというのはあるけど、16年も経って久しぶりというのは初めてだ』と言われました」
-グラビア撮影も久しぶりだったのですか?-
「はい。6、7年ぶりだったと思います。時代も変わっているので、緊張しすぎてレフ板の上に乗っちゃって…(笑)。その上に乗って撮影するのだと思っちゃったんですよね。恥ずかしい。みんなビックリしていました(笑)」
-“美魔女”と話題になりましたね-
「うれしかったです。しかも発売されてすぐに重版になったと聞いて、さらにうれしくなりました」
-16年前の撮影と変わっていたところはありました?-
「昔はデジタルがなかったので、チェック用にはポラロイドを撮って、それを記念にもらって帰っていたんです。写真の修正もお金がかかって高いからということで、一切やってもらえなかったのに、今はスマホのアプリでもすぐ修正できてすごいなあって」
-プロポーションを維持しているところがすごいですよね-
「若いときはトレーニングとかはまったくしていなかったんです。それでものすごく食べていたんですけど、今はキックボクシングと筋トレをしていて、キックボクシングがすごく自分を変えてくれたと思っています。
先生たちがすごく良い方で、一人ひとりを大切に見てくださるんです。自分の考え方がポジティブになったり、『運動は運を動かす』という言葉を信じてトレーニングも楽しくしているので、キックボクシングの先生の影響が大きいです。気持ちが強くなりました」
-キックボクシングをやっている芸能人の方は結構多いですね-
「そうですね。やっぱりみんな努力しているんだなって思いました。すごいストイックにやっているんですよね。『さっきまで生放送を見ていたのにもう来ている』とか。やっぱり見えない努力をしているんだなあと思いました」
※映画『愚か者のブルース』
2022年11月18日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
配給:アークエンタテインメント
監督:横山雄二
出演:加藤雅也 熊切あさ美 横山雄二 佐々木心音 小原春香 筒井真理子
◆念願だった女優業が本格的に始動!映画のヒロインに
2022年11月18日(金)に公開される映画『愚か者のブルース』ではヒロイン役をつとめた熊切さん。
主人公は、30年前、伝説の映画を監督したが、今や過去の人となっている男・大根(加藤雅也)。大根はタマコ(熊切あさ美)のヒモとなり空虚な生活を送っている。ある日、タマコの昔の男(仁科貴)が現れ、大根とタマコは大根の大学時代の後輩(横山雄二)が館長を務める広島のストリップ劇場に逃げ込むことに…。
-加藤雅也さんとは、『影に抱かれて眠れ』でも共演されていて、愛人でクラブの雇われママでしたが、切ない役でしたね-
「はい。加藤雅也さん演じる主人公に振り回されていました(笑)」
-あの映画の主人公は罪な男ですよね。ママとは肉体的には結ばれているけど、心は向いていない。中村ゆりさん演じるヒロインに対しては、心はあるけど肉体的には一度も結ばれない-
「そうですよね。(中村)ゆりちゃんは、YURIMARI時代にチェキッ娘の司会をしていたんですよ。そこから女優さんとして活躍されていて。すごいきれいで透明感があるステキな女優さんなので大好きです。(加藤)雅也さんは、すごく優しくて良い人なんですけど、演技がうますぎて役なりきるので、イヤな男に見えてきたり(笑)」
-前回も今回の映画もラブシーンがすごくきれいでしたね-
「ありがとうございます。同じ俳優さんと2回もラブシーンがあるというのは初めてだったので、ビックリしました」
-でも、初めましてじゃないということで、気分的には少し楽だったのでは?-
「そうですね。雅也さんはすごく真面目な方で、とてもよくしていただきました。私が演技の経験が少ないから、『タマコだったら、どういう気持ちで俺にこのセリフを言ったと思う?』とか、そういうことを話してくれるから、すごくやりやすかったです」
-タマコさんは男運が悪いですよね。監督(今の男)はヒモ状態で前の男は危険なストーカーで-
「そうです。でも、気持ちがわからないでもないというか、共感できちゃうところもありますね(笑)。たしかに雅也さんには役の中ではめちゃめちゃ振り回されました。
若い頃に撮った映画がいろいろな賞を受賞したけど、それから30年間、1本も映画を撮らず、ヒモのような生活を送っている映画監督ですからね。でも、多分そういう人を支えたくなるんでしょうねって思っちゃうんですけど(笑)」
-熊切さんにもそういうところはありますか?-
「今までそういうことはないのですが、『この人は私がいないとダメなんだ』とか、『私ぐらいだよ、こんな人を支えられるのは』と逆に思うのはあるかもしれないです」
-ちょっと危険ですね-
「やばいです(笑)。広島で先行公開だったので、友だちが広島に出張したときに観てくれたんですよ。それで、『何か普段のあさ美ちゃんと重なり合うところがあるね』って言われました。私はそんなことないと思っているのですが、友だちはそういうふうに思って感情移入しちゃったみたいです」
-母性が強いということなのでしょうか-
「よくわからないですけど、人に対して情が入りすぎちゃうのかもしれないです」
-完成した作品をご覧になっていかがでした?-
「セクシーなシーンもあるんですけど、すごくきれいに撮ってくださっているので、昭和の温かさが感じられるところが好きです」
-横山雄二監督はストリップ劇場の館長役で出演もされていますね-
「はい。あの方はすごいんですよ。現役のアナウンサーでアイドル的な人気がある方で。もともとは横山さんのバラエティの番組でご一緒させていただいたことがきっかけで、今回ヒロインのタマコ役で出させていただくことになったんです。
すごく幅広い分野で活躍されている方なので、(テレビ)局も許してくれているみたいで、映画も撮らせてくれて、映画の宣伝もしてくださっているんですよ」
-撮影は順調でした?-
「はい。順調でした。撮影期間は2週間しかなかったんですけど、ちょうどコロナが流行(はや)る直前でギリギリだったんですよね。雅也さんが『これは大変なことになる』と言っていたんですけど、そのときはまだ世の中がこんなことになるとは思わなくて…。
結局、公開が3年くらい延期になってしまって、そのおかげで『第一劇場』を壊すシーンが撮れたんです。最初あのシーンはなかったんですけど、壊すんだったら、そのシーンを入れたいって監督が言って」
-あのシーンは印象的ですよね-
「はい。本当に壊したと思ってびっくりしました。でも、この映画に出てストリップに対する見方がだいぶ変わりました。芸術的で、ストリップ劇場で踊るシーンを観ていると、いろんな人の生き様とか想いをすごい感じるんですよ。カッコ良くて、私もあそこで踊りたいって思いました。
横山さんは、アナウンサーさんという職業で監督さんでもあるので、人を見る目がすごいんです。私が撮影中に悩んでどうしたらいいかわからなくなっていたりすると、気づいてくださるし。
基本的に好きにやらせてくださる監督なんですけど、私がどうしたらいいのか悩んでしまったら、ものすごく忙しい方なのに1日時間を作ってくださって。監督とスタッフさんと3人で飲んだことがあったんです。
私はずっとお酒を控えていたので、1杯飲んだだけで酔ってしまったみたいで、『最初は演技の相談をしていたのに、熊切ちゃん途中から、このセリフがすごい私に当てはまっていて…みたいな感じで、自分の人生と映画のセリフを共感させながら泣いていたよ』って言われて(笑)。こんな忙しいときに申し訳ないって思いました」
-すごくいい感じの現場だったのですね-
「はい。とてもいい現場でした。でも、監督は大変だったと思います。出る役もあり、キャスティング・監督もですから。普段はニュースを読んだり、ラジオをやったり、すごく忙しい方なので、映画の撮影の合間に生放送に行ったりしていました。
みんなで一生懸命取り組んだ作品なので、一人でも多くの人に観ていただけたらいいなあと思っています」
-お仕事もかなり充実しているようですね-
「はい。またこうして仕事ができて本当にありがたいです。前はバラエティ番組のひな壇は、1列目がいいと思っていたんですけど、親友に『1列目じゃなくてもまた仕事ができていると思えば幸せじゃん。またテレビに出られていると思えば、どんな内容の仕事でも楽しいじゃん』って言われて(笑)。そうだなあって」
-いろんなことがありましたけど、もう大丈夫という感じですね-
「恋愛以外は問題が起きる行動をしていないので、何かあるとしたら恋愛だけですね(笑)。
恋愛をしたら多分仕事はできないです。年齢も年齢なので、需要があるうちは仕事を頑張りたいし、ドラマの中で恋をしているのが1番幸せですよね」
-エゴサーチとかはされるのですか-
「はい。しなきゃいいのに、やっちゃうんです。エゴサって好感度のない人に限ってやるんですよ(笑)」
-今後はどのように?-
「女優業を続けていけたらいいなと思っています。あとバラエティも好きなので頑張っていきたいです」
明るく真摯に答える姿に誠実な人柄が表れている。代表作となるであろう映画の公開に加え、12月には新しい写真集も発売予定。心ないバッシングから7年が経ち、仕事も好調。今後の活躍も楽しみ。(津島令子)