賛否渦巻くなか、東京・日本武道館で27日に挙行された安倍晋三元首相の国葬儀。厳戒態勢となった当日の現場周辺を歩いた。
午後12時過ぎの時点で、一般献花の列は、九段下から2キロ以上離れた四ツ谷まで続いていた。列に並んでいた男性(48歳)に声をかけると、こう語った。
世論調査で過半数が国葬反対っていう結果、あれ本当なんですかね!? マスコミの言っていることは嘘ばっかりでしょう。この列を見てください。これが本当の日本の民意なんです。僕らは氷河期世代なので、雇用を回復させた功績に感謝している。安倍さんへの弔意を示したい。
一般献花者は2万3000人と発表された。
九段下交差点では、「国葬反対」を訴えるデモの列が通過すると、「反日集団はさっさと帰れ」と書かれたのぼりや旭日旗を掲げた人々が、拡声器を使って対抗する場面もあった。
学生運動をしていた昔の夢を求めているんでしょう
国葬に反対しているのは極左反日集団のごくごく一部じゃないですか!
などと言い、「帰れ! 帰れ!」とコールしていた。
国葬反対を訴えるデモは「デモ終了後、日本武道館へ抗議行動」を呼びかけていたため、参加者の一部が歩道上に集まり、デモを続行していた。周囲にいた警察官は「デモの許可申請があれば道路を歩くことになるので、歩道上のデモは許可が下りていないはず。道交法に抵触する恐れがありますが、ただちに検挙するわけではないので、穏便に収めたいところですが…」と苦慮している様子だった。
警察と対峙していた反対派のデモ参加者は
国葬粉砕! みんなで粉砕!
核戦争を止められるかどうかの一大決心です!
などと訴えていた。警察官は、国葬賛成派からは「何やってんだよ警察! はよどかせお前らー!」、国葬反対派からは「警察権力後ろに下がれ!」「権力のポチ!」などと大声で言われていた。国葬には、警視庁のほか全国の道府県警が応援が派遣され、2万人体制で警備にあたったという。
反対デモに参加していた60代の女性は、こう語っていた。
民主的な決め方をせずに強行した国葬には反対。岸田首相は安倍政治を継承していて、憲法改正や引いては戦争に持っていく気配を感じています。反対意見がなかなか報道されないので、声をあげなくてはいけないと思ってデモに参加しました。
近くを通っていた女性は、冷めた様子でこう語っていた。
賛成の人も反対の人も、みんな働いてないんですかね…。私は賛成反対どちらでもないですが、主張があるならやっておけばいいんじゃないですか。
献花を終えた47歳の男性は、夫婦で北海道から来たという。
遺影のお顔を見たら泣けてしまいまして…。色々と日本を良くしてくれた方なので、感謝の気持ちを伝えたかった。あんな亡くなり方をして欲しくなかったです。
自民党の萩生田光一政調会長は国葬に参列後、「結果として、国民に国葬に取り組む政府の思いが上手に伝わらなかった。そんな反省がある」などと語った。社会が真っ二つに割れた葬儀が終わり、今後の世論はどうなっていくのか注目したい。