インドのリライアンス・インダストリーズが石油化学事業へ大規模投資を決めた。今後5年間で7500億ルピー(約1兆3500億円)を投じ、ポリエステルチェーン、ビニルチェーンを増強する。同国初となる炭素繊維の生産にも乗り出す。将来的に化石燃料を再生可能な代替燃料に置き換える構想。持続可能な化学産業の拠点としての発展を目指す同社の取り組みに、目を凝らす必要がありそうだ。
リライアンスは2019年8月、製油所と石油化学が垂直統合したO2C(オイル・トゥ・ケミカル)事業へ20%出資を受け入れることで、サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコと法的拘束力のない基本合意書(LOI)を締結した。原油の調達安定性を高め、原油処理から化学品生産までの垂直統合体制を強化するのが狙いだった。20年3月には実施に向けてO2C事業の分社を発表した。しかし同年11月になって「前提が変わった」として、これを撤回、O2C事業の分離申請を取り下げた。
前提を変えたのは再生可能エネルギーの拡大だ。リライアンスのムケシュ・アンバニ会長は先月開催した株主総会で「この1年で、リライアンスの再生可能エネルギーの消費量は352%も増加した。このような取り組みと、O2C資産の再生可能エネルギーへの移行が相まって、当社の『ネット・カーボン・ゼロ』への道のりが加速されると確信している」と述べた。
再生可能エネルギー拡大への自信が、O2C事業への積極投資につながっている。ポリエステルチェーンでは、年産300万トンと、単一系列で世界最大級となる高純度テレフタル酸(PTA)プラントをインド西部のダヘジに建設する。併せて年産100万トンのポリエチレンテレフタレート(PET)プラントも設置する予定。いずれも26年の完成を目指している。ポリエステルにも投資し、26年までに年産100万トン以上の能力を追加する。
ビニルチェーンでは、26年までに原料からの一貫体制により年産150万トンの能力増強を完了。炭素繊維の生産にも乗り出し、アクリロニトリルを原料に年産2万トンと世界最大級の能力を配備する。
同社の取り組みは、70年のカーボンニュートラル達成に向けたインド政府の施策と重なる。太陽光発電や風力発電に適した広大な土地を持つインドは再生可能エネルギーのポテンシャルが高く、すでに設置容量は世界第4位となっている。豊富な再エネを背景に、二酸化炭素排出をともなわないグリーン水素を30年には年間500万トン製造することを目指している。
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