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 今週末の10月29~30日にスペインを代表するF1トラック、カタロニア・サーキットで争われる2022年WorldRX世界ラリークロス選手権第8戦/第9戦に向け、併催イベントとして実施予定の電動ワンメイク戦『FIA RX2e Championship』にビッグゲストが登場する。2輪、4輪ともに最高峰の世界選手権を経験したニック・ハイドフェルドとカルロス・チェカが、デュアルサーフェスの特設コースでラリークロスに初挑戦することがアナウンスされた。

 ドイツ・メンヒェングラートバッハ出身のハイドフェルドは、1999年に国際F3000王者を獲得して以降、2000年から11年間のF1時代に13回の表彰台を獲得。プロスト、ウイリアムズ、BMWザウバー、ルノーなどで活躍を演じた。

 F1卒業後は耐久シリーズに活動の場を移し、2013年にはALMS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)のプチ・ル・マンを制覇。続く2014年には、WEC世界耐久選手権LMP1-Lクラスでエントリーしていた本家ル・マン24時間で、当時のレベリオン・レーシングとともにクラス優勝を果たしている。

 さらに、マクラーレンMP4/13をドライブしたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、2019年にフォルクスワーゲン『ID.R』に破られるまで約20年にわたって、象徴的なヒルクライムのレコードを保持していただけでなく、電動シリーズのABB FIAフォーミュラE世界選手権にも参戦するなど、さまざまなジャンルでその才能と多様性を示してきた。

 現在、本格的な競技からは約4年ほど遠ざかっているハイドフェルドだが、今週末に向けては2021年に創設された電動ワンメイク・シリーズへのゲスト参戦を決め、ひさびさにレーシングスーツへ袖を通すこととなった。

「本当に心の底からワクワクしているよ! 僕はドライビングが大好きで、さまざまなカテゴリーのクルマを数多く試してきたが、ラリークロスはそれらともまったく別モノだろうからね。さまざまな路面状況でのドライブで、ドリフトやジャンプに接近戦、そして少し傾いたり互いに跳ね返ったりしながら、サイド・バイ・サイドのバトルをすることも含まれるだろうしね……」と、初挑戦のラリークロスに向けた意気込みを語るハイドフェルド。

 スペインの電動機構サプライヤーであるQEVテクノロジーズ社と、スウェーデンの名門ビルダーであるオルスバーグMSEによって開発された電動ワンメイク車両『RX2e』は、特別に仕立てられた軽量スペースフレームシャシーを中心に、4輪駆動の電動パワートレインを搭載。32kWhのバッテリーとふたつの独立したモーターを組み込み、約250kW(335bhp)のパワーと最大460Nmのトルクを生成する。

スペインの電動機構サプライヤーであるQEV Technologies社と、スウェーデンの名門ビルダーであるOlsberg MSEによって開発された電動ワンメイク車両『RX2e』
ニック・ハイドフェルドも、レースウイークに入って『RX2e』の初テストを経験した
「この経験は近い将来、僕をふたたびレースの世界に呼び戻すことになる……かも」と含みを持たせたハイドフェルド

■カルロス・チェカ「テストはしたが、レースで戦うのはまた別のことになるだろう」

「このアイデアと機会は、本当に直前の最後の瞬間に思いついたんだ。ラリークロス用のマシンで1周もしたことがないから、準備はできていないことになるが、挑戦することは大好きだよ。(フォーミュラE時代に所属したマヒンドラ・レーシングを通じて)QEVをすでに知っていたから、このような短期間でここに飛び込むという僕の決定は、計り知れないほど容易になったんだ」と、その内幕を明かしたハイドフェルド。

「僕にとって完全に新しいことであり、非常にオープンな心構えで週末に臨み、すべての側面を本当に楽しみにしている。最初の目標は楽しむこと。もちろん、良い結果が得られたときはさらに楽しいだろうが、僕はラリークロスの専門家ではないし、本当に長い間レースをしていないことが、どういう意味を持つか。自分自身でもよく分かっている。たぶん、この経験は近い将来、僕をふたたびレースの世界に呼び戻すことになる……さて、どうだろう?(笑)」

 同じくバルセロナ出身のチェカも、2輪の世界で輝かしい実績を残してきたライダーだが、1996年にMotoGPの前身であるロードレース世界選手権500ccクラスで初優勝を飾った思い出の地だとしても、ワールドチャンピオンシップで通算22回の表彰台を獲得したバイクのような走りが「再現できるかどうかは、ぶっつけ本番だ」との見通しを示した。

「僕は長年、個人的にラリークロスをフォローしてきたんだ。すでにカラファトでRX2eのマシンをテストしたが、レースで戦うのはまた別のことになるだろうね」との予想を語ったチェカ。

 2008年には清成龍一とのペアで鈴鹿8耐を制覇し、その3年後にはドゥカティにまたがりSBKスーパーバイク世界選手権のタイトルも獲得しているチェカは「僕にとってカタルーニャ・サーキットはとても感動的な場所」だと続ける。

「1993年に125ccの世界選手権で最初のレースを開始した場所であり、500ccでレースに勝った最初の場所でもあるんだ。ここに戻り、こうして素晴らしいチャンピオンシップに参加できることは非常に特別なことであり、これからの週末に向け非常にやる気を感じているよ」

 そのチェカは、すでに10月26日の水曜には同じくスペイン出身のライア・サンズと合流し、海岸沿いのラ・バルセロネータ地区で『RX2e』車両を使った“エキシビション・ラン”を実施している。

 すでに今回のバルセロナ戦で自身4回目の出場となるサンズは、この週末も電動ワンメイク・オフロード戦、エクストリームEで“帝王”カルロス・サインツともタッグを組むアクシオナ・サインツXEチームからのエントリーになり、同イベントには総勢11台の参加が見込まれている。

同じく『FIA RX2e Championship』参戦を果たす地元スペイン出身のカルロス・チェカ
チェカも10年以上にわたり世界選手権で戦ってきたライダーだけに、初挑戦の電動ラリークロス車両をどう乗りこなすか
同じく2輪出身で14回のトライアル選手権女性世界王者に輝くライア・サンズも、今季4回目の出場を予定する