来る11月10日~13日、12年ぶりに「ラリージャパン」が開催される。愛知県と岐阜県を激走することになるTOYOTA GAZOO Racing WORLD RALLY TEAMの活躍に期待したいところだが、日本車とWRC(世界ラリー選手権)の関係といえば、思い出されるのが「スバル インプレッサvs.三菱 ランサーエボリューション」の激闘だ。
現在はスバルも三菱も残念ながらWRCには参戦していないわけだが、WRCが12年ぶりに日本へ戻ってきたことを記念し、両雄の激闘っぷりを振り返りつつ、そのベースモデルの「現在の中古車事情」を探ってみたい。
文/伊達軍曹
写真/三菱、スバル、ベストカーweb編集部
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■インプレッサWRX STIバージョンII 中古車価格=約400万~530万円 三菱ランサーエボリューションIV 中古車価格=150万~360万円
レオーネにてサファリラリーにスポット参戦していたスバルは、1990年からはついにワークス体制でWRCに参戦。その際のワークスマシンはレガシィ RSだったが、1993年途中の1000湖ラリーから、初代インプレッサWRXをベースとするグループA車両を投入。初戦の1000湖ラリーでいきなり2位に入るという幸先の良いスタートだった。
翌1994年シーズンはドライバーズ、マニュファクチャラーズともに2位となり、1995年はついにマニュファクチャラーズタイトルを獲得。ドライバーズ部門でもコリン・マクレーが1位でカルロス・サインツが2位という、いわゆる無双状態であった。
この頃に発売されたインプレッサWRXの市販バージョンが、1995年8月発売の「WRX STIバージョンII」と、グループAマシンである「インプレッサ555」のイメージを再現した限定車「WRX STIバージョンII 555」だ。
最高出力275psの水平対向エンジンはDOHCのバルブ駆動に直動式を採用するなどした魅力的なものだが、直近の中古車流通はかなり少なく、バージョンIIが2台、バージョンII 555が1台流通しているのみ。価格はバージョンIIの低走行物件が約400万円で、希少なバージョンII 555には約530万円の値札が付いている。
対する三菱も、WRCにおいて手をこまねいておいたわけではない。
1994年に投入されたランサーエボリューションIIではスバルの後塵を拝し続けたが、ランエボでの参戦3年目となった1995年にはトミ・マキネンが新加入し、第2戦のラリー・スウェーデンで1-2フィニッシュでの初勝利をマーク。
そして同年中にランサーエボリューションIIIを投入し、翌1996年シーズンはランエボIIIを駆るマキネンが「9戦中5勝」という圧倒的な速さを見せつけ、見事ドライバーズタイトルを獲得したのだ。
さらに翌1997年には、ランサーのフルモデルチェンジに合わせてグループAマシンも「ランサーエボリューションIV」に進化。これを駆ったマキネンは年間4勝をマークし、2年連続のドライバーズチャンピオンに輝いた。
そんな三菱 ランサーエボリューションIVの中古車は、同世代のインプレッサWRX STIよりも流通量は比較的多く、2022年10月下旬現在で12台ほどが販売されている。価格は150万~360万円といったところで、走行距離ひとケタ万kmで修復歴のない個体には350万円以上のプライスが付いていることも。
なおランエボIVは12台中7台が「修復歴あり」という状況だが、まぁ車のキャラクター上、ここは致し方のない話であろう。
■インプレッサWRX STIバージョンIV 中古車価格=約200万~300万円
ランエボIVのトミー・マキネンが2回目のドライバーズタイトルを獲得した1997年も、そしてその前の1996年も、インプレッサは決して惰眠をむさぼっていたわけではない。
1997年シーズンにおける三菱のマキネンとスバルのマクレーのポイント差はわずか1ポイントでしかなく、マニュファクチャラーズタイトルも、1996年と1997年シーズンは三菱ではなくスバルが獲得している。要するに大激戦だったのである。
そしておおむねこの頃に発売されたインプレッサが、1996年9月発売のWRX STIバージョンIIIと、1997年9月発売のWRX STIバージョンIVだ。
バージョンIIIはベース車のマイナーチェンジに合わせてエクステリアを変更し、メタルガスケットや鍛造モリブデンコートピストン等々を採用したEJ20エンジンの最高出力は280ps。バージョンIVは最高出力こそ280psと変更なしだったが、最大トルクは微妙に増大している。
中古車価格は、WRX STIバージョンIIIは流通量がきわめて少ないため不詳だが、バージョンIVはいちおう4台が流通しており、プライスは200万~300万円ほど。
WRCにおける3年連続チャンピオン獲得を記念して1998年1月に発売された限定モデル「WRX TypeRA STIバージョンIV V-Limited」は230万~550万円といったところだ。これも、走行距離ひとケタkmの物件には500万円以上の値札が付いている。
1997年シーズンから、WRCは「グループA」よりも改造範囲が広い「WRカー規定」を導入。スバルは当然、これに合わせて2ドアボディの「Impreza World Rally Car 97」を投入した。
■ランエボV、VI、VIトミー・マキネンエディション 最高価格はトミー・マキネンエディションの約800万円!
だが三菱は「あくまでも市販車に近いグループA車両で戦う」という姿勢を崩さなかった。
そして1998年途中に投入された「ランサーエボリューションV」は、改造範囲が広いWRカーたちを次々と粉砕。終盤戦の3連勝を含む計4勝を挙げ、トミ・マキネンのドライバーズ3連覇に加え、三菱に初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらしたのだ。
さらに翌1999年シーズンはフォード フォーカスWRCやプジョー206WRCといった、小ぶりで運動性能的に有利なコンパクトハッチバック勢を相手に、正常進化した「ランサーエボリューションVI」で対抗した。
ランエボVIは、それまでは前輪側のみだった電磁式アクティブデフを後輪側にも搭載して「4輪フルアクティブ制御」を実現。これにより、大混戦ではあったがトミー・マキネンが「4年連続ドライバーズタイトル獲得」という快挙を成し遂げたのだった。
この頃の「ランエボ市販バージョン」の、現在の中古車相場はおおむね下記のとおりである。
●ランサーエボリューションV:200万~400万円(※走行3万km台で約700万円という個体もごく少数存在)
●ランサーエボリューションVI:230万~430万円(※500万円超または700万円超の低走行物件もごく少数存在)
●ランサーエボリューションVI トミー・マキネンエディション:400万~800万円
上記の「エボリューションVI トミー・マキネンエディション」は、トミ・マキネンの4年連続ドライバーズチャンピオン獲得を記念して作られた、2000年1月発売の特別仕様車。通常のランエボVIより10mmダウンさせたターマック仕様サスペンションなどを採用し、巷では「ランエボ6.5」と呼ばれている大人気モデルだ。
■スバルインプレッサ22B-STIバージョンは最高価格の3000万円!
いっぽうのスバルは1997年シーズンに投入したWRカー「Impreza World Rally Car 97」が、デビューウィンからの3連勝に加えてトータル8勝をマーク。見事その年のマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、1995年、1996年からの“3連覇”という偉業を達成した。
それを記念して発売されたのが、Impreza World Rally Car 97のビジュアルを忠実に再現しつつ、2.2LのEJ22改エンジンを搭載した400台の限定車、「IMPREZA 22B-STI VERSION」だ。
1998年の発売時には瞬殺で完売したこちらの新車価格は500万円だったが、現在では1500万~3000万円ほどで、ごくたまに売買されている。
結論として、日本車のWRCベースマシンの最高価格は、3000万円という新車価格の6倍というインプレッサ22B-STIバージョン。次いでランエボIVトミー・マキネンエディションが約800万円の価格を付けている。今後、さらに値が上がっていくだろうが、ラリーファンなら一度は購入することをおススメしたい。
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