本誌『ベストカー』にて、毎号技術系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。
今回は京都のタクシー会社で採用が進む中韓EV、1年中履いていられる夢のスタッドレスタイヤ、運転のクセを改善する「KINTO FACTORY」の新たな試みなどの話題をお届けします!
※本稿は2022年8月のものです
文/角田伸幸、写真/TOYOTA、ベストカー編集部、AdobeStock ほか
初出:『ベストカー』2022年9月10日号『近未来新聞』より
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■京都でBYD「e6」やヒョンデ「アイオニック5」のタクシーが増殖中
中国BYDの乗用車発表は、あらたな「黒船」となりそうだが、そのBYDのクルマに一足早く乗れる町がある。京都だ。
もともと京都は、2015年に日本で初めてBYDのEVバスが走った町。BYDにとって思い出深いその町で、今年春からBYDのEVタクシーが走っているのだ。
導入したのは南区にある「都タクシー」。クルマは法人向けEVである「e6」だ。
e6は2021年に中国でデビューしたワゴンタイプのEV。4695mmの全長に対しホイールベースが2800mmもあるので後席が広く、まさにタクシーにはうってつけの車両だ。
バッテリーは71kWのリン酸鉄リチウムイオンを積み、航続距離も522kmと充分。しかしそれ以上に驚くのは価格で、なんと385万円という激安価格なのだ。
タクシー会社としては、コストを抑えたうえで脱温暖化にも貢献できるとあって、魅力的な一台に違いない。
京都で乗れるタクシーはBYDだけじゃない。同じ南区にあるMKタクシーは、ヒョンデのアイオニック5を50台導入すると発表した。
同社はタクシー車両の電動化に熱心で、今年2月にはLPガスを使う車両を全廃したほど。現在はPHVなども運用しているが、脱炭素を加速させるためEVを増やすことになり、快適なキャビンを持つアイオニック5に白羽の矢が立ったというわけだ。
同社は業界最速で電動化を進め、2030年までには全営業車両をBEV化すると言う。50台のアイオニック5が走ることは検証走行としても価値があるから、ヒョンデ側も喜んでいるはず。
長い歴史を誇り、伝統を重んじる京都だが、ことEVに関しては積極的に新しいものを取り入れて好感が持てる。京都旅行の際には体験してみてもいいかもしれない。
■1年中履いていられる?? 夢のスタッドレスタイヤ登場
雪道にはスタッドレスタイヤが必須だが、交換や保管がちと面倒。オールシーズンタイヤという手もあるが、アイスバーンなどでは心細い。
そんななか画期的なスタッドレスが登場した。トーヨータイヤが開発した「M937」がそれ。
コミュニティバスとして人気の日野ポンチョ向けなのだが、なんと「1年中履きっぱなし」が前提なのだ。
これまでもタクシーやバスの世界では、コストや手間を考えて、スタッドレスを履きっぱなしにする事業者は多かった。しかしスタッドレスは乾燥路面の摩耗に弱く、走行距離の多い車両では翌冬までもたずに寿命を迎えてしまうことも多かったのだ。
トーヨータイヤはこの問題に着目し、なかでも地方の交通過疎地などで重要な足となっているコミュニティバスを救おうと考えた。そこで、狭い道を走ったり、頻繁に発進停止を繰り返したりする同型車の特性も踏まえたうえで、摩耗に強いスタッドレスを開発したのだそうだ。
具体的には、幅広の接地面や高剛性のブロックで摩耗を抑える一方、排雪や雪上グリップ性能を確保、従来比で約1.4倍という耐摩耗性を実現したというから凄い。
ある意味、スタッドレスの常識を打破したとも言えるこのタイヤ、ぜひとも乗用車用も開発してほしい。
■ソフトでクルマが進化!! KINTOの新しい挑戦
愛車をあとからカスタマイズできるトヨタの「KINTO FACTORY(キント・ファクトリー)」。
これまでも、1500Wアクセサリーコンセントやパワースライドドアが後付けできたりして便利だったのだが(※車種制限あり)、いよいよソフトウェアのパーソナライズに向けて動き出すようだ。
具体的には、顧客がアクセルやブレーキ、ハンドルなどを操作する時の「クセ」を掴み、急加速や急ハンドルをソフトウェア的に改善する機能を提供する。
手始めに7月からアルファード/ヴェルファイアオーナーを対象にモニター募集を始め、運転データの取得を行うという。
運転手のクセをどうやってつかむのかというと、コネクテッドサービスである「Tコネクト」を使う。
現代のクルマは、ペダルやハンドルの操作量、車体の加速度などを常にモニターしているから、そのデータをTコネクト経由でサーバーに送り、母集団の数値と照らし合わせることで、ドライバーの運転特性がわかるわけだ。
クルマの性能や魅力を、ソフトウェアのアップデートによって維持しようというクルマを「SDV(ソフトウェア定義型自動車)」と呼んだりするが、まさに今回のキント・ファクトリーはその思想を先取りするもの。
今後は、運転特性以上に面白いカスタマイズメニューが登場することに期待したい。
■そのほかの「近未来系」ニュースを20秒でチェック!
●サンフランシスコで無人タクシーの営業を始めたGMのクルーズだが、そのタクシーが「反乱」を起こしたことが話題になっている。深夜、60台ものロボタクシーが一カ所に集まり、道路を封鎖してしまったのだ。封鎖は1時間以上にも及び、一般車の往来にも支障が出たという。
原因はサーバーの故障だといわれるが、それをカバーするはずのフォールバックシステムまで作動しなかったようだ。しっかりと原因を究明し、システムの信頼性アップに努めてほしい。
●「その手があったか」と思える運転代行が登場した。和歌山県のスタートアップ「マイキーパー」が始めた「ONEMAN(ワンマン)」というサービスがそれ。
普通、運転代行といえば、依頼者のクルマを運転するドライバーと、帰路用車両を運転する同行者の2人で行動するが、ワンマンの場合はドライバーが折り畳み式の電動バイクを携行し、帰路はそれを使う。だから一人での営業が可能になるのだ。
国から適法性のお墨付きももらい、トラブル時のための保険も準備したというから安心感も高そうだ。
●日本が優位と見られていたペロブスカイト型太陽電池を、中国企業が量産することが明らかになった。
同電池は日本の宮坂力氏が発明し、ビルの壁やクルマの屋根に貼れる次世代の太陽電池として注目されていた。どうやらその宮坂氏の弟子が中国で起業し、生産にこぎつけたらしい。日本企業は技術流出を真剣に防止すべきだ!
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