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 11月上旬、イタリアのミラノで開かれたEICMA 2022(通称ミラノショー)で、ホンダはヨーロッパ向け2023年モデルとして4台のバイクを発表した。そこにはアドベンチャーバイク「トランザルプ」の750ccモデルやスクランブラータイプの新車「CL500」といった華々しいモデルも含まれるのだが、ホンダ初の一般向け電動バイクである「EM1 e:(イーエムワン・イー)」の公開も大きなニュースだ。

 バイク好きの方はご存じのとおり、日本のバイク市場にはこの11月から「平成32年(令和2年)排ガス規制」が適用された。ところが50cc以下の原付一種だけは車両価格の高騰を招くとして、2025年11月まで適用が延期されることとなった。一部では「2025年に50cc原付は全滅する」という噂も流れる中、ホンダはこの「EM1 e:」でその「壁」を乗り越えようとしているようなのだ。早速その詳細をお伝えしよう。

文/ベストカーWeb編集部、写真/ホンダ

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バッテリーには充電に悩まない交換式を採用

ホンダ EM1 e:(パールサンビームホワイト)

 断っておくが、ホンダがいままで電動バイクを作ってこなかったわけではない。むしろホンダはこの分野の草分けで、1994年に「CUB ES」という電動スクーターを発表して以降、何台かの電動モデルを投入している。ところがこれらはすべて官公庁や自治体、一部のビジネス向けのモデルで、広く一般に市販される電動バイクは扱ってこなかった。今回登場した「EM1 e:」はこの点で注目を集める「ホンダ初の一般向け」電動バイクなのだ。

 一目見て分かるとおりこの「EM1 e:」は、日本に導入されれば原付一種にクラス分けされそうなコンパクトなスクーター。詳しいサイズなどは非公開だが、女性にも扱いやすい車体であることは間違いない。

 駆動システムだが、ホンダが以前からアジア圏で普及を進めている交換可能バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」を1個搭載し、後輪に組み合されたインホイールモーターを駆動する。モーター出力は非公開だが、日本ならば原付一種の規制値に合わせて0.6kW以下に設定されるだろう。オイル交換やプラグの点検といったメンテナンスから解放される点は、電動バイク冥利に尽きる。

 交換バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」だが、重量が10.3kgで出力は2.5kW。「EM1 e:(イーエムワン・イー)」を最高速度45km/hまで加速させ、満充電なら40kmの走行を可能にするという。すでにアジア圏では、この「Honda Mobile Power Pack e:」を交換・充電できる交換ステーションが街のあちこちで稼働しており、ユーザーは手軽にバッテリーを交換して走る続けることができる。この11月には日本での検証も始まり、東京・西新宿にビジネスバイクを対象とした第1号の交換ステーションが設置されたばかりだ。もちろん自宅での充電も可能で、バイクから降ろして屋内のコンセントに繋ぐことができる。

20万円台のプライスタグが付けられるか?

シート下に交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を1個搭載する

「EM1 e:」に話を戻すと、欧州でのボディカラーはパールサンビームホワイトと、デジタルシルバーメタリック、マットガンパウダーブラックメタリックの3色が用意された。フラットフロアの足元は足載せ性もよさそうだ。ブレーキはフロントがディスクでリアがドラムだが、コンビブレーキを採用し制動力を高めている。

 収納はバッテリーを格納するためシート下へのメットインこそ不可能だが、最小限のラゲッジスペースは確保しているもよう。フロントカウル裏側にも小物入れがあり、もちろんリアキャリアにトップボックスも装着できる。灯火類はフルLEDで、消費電力を抑える仕組みだ。

 この「EM1 e:」だが、日本のバイク市場では重要な意味を持つ。冒頭でも述べたとおり、原付一種は「平成32年(令和2年)排ガス規制」への対応が難しい。50ccエンジンの市場がほぼ日本に限られるため量産メリットが活かせず、排ガス規制適応のためには法外な車両価格の値上げが避けられないためだ。「EM1 e:」は電動化によってその壁を破ろうとするわけだが、こちらにも不安がないわけではない。理由はやはりコストだ。

 たとえばホンダが現在ビジネス向けに市販している電動原付「ベンリィe:」の価格は36万3000円。3輪のジャイロe:に至っては55万円だ。排ガス規制適合にはお金はかかるが電動化も安上がりというわけではなく、原付バイクの値上げを招いてしまう可能性は高いのだ。

 もちろんホンダに代表される二輪メーカーはこのことを十分承知していて、現在必死の思いでコストダウンのネタを拾い集めている。規制延期の措置が切れる2025年までには、なんとか20万円台のプライスタグが付けられることを願いたいが、まずは先行発売される欧州で、「EM1 e:」がどんな価格を付けるのかを楽しみに待ちたい。日本の暮らしを支えてきた原付バイク。その火を簡単に決してはいけない!

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投稿 50cc原付絶滅の救世主? ホンダの電動スクーター「EM1 e:」が日本の原付市場を変える!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。