2022年10月12日(水)よる9時からスタートするドラマ『相棒season21』。
“5代目相棒”として新シーズンから登場するのは、初代相棒でもある亀山薫(寺脇康文)。
season7で卒業して以来、満を持して再び杉下右京(水谷豊)とタッグを組む。
そんな『相棒』シリーズは、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」「テレ朝動画」にて、過去全シーズンとスペシャルドラマに加え、劇場版、スピンオフも配信中だ。
テレ朝POSTでは、この伝説のコンビ復活を記念し、同シリーズの過去回から杉下右京と亀山薫が活躍するオススメのエピソードをピックアップ。
今回は、時効制度を題材にした社会派作品『相棒 season3』第11話「ありふれた殺人」(2005年1月19日放送)を紹介する。
◆殺人事件の犯人が時効成立後に自首
警察署の前で不審な男と出会った薫(寺脇康文)は、その男から20年前に人を殺したと告白される。
小見山(信太昌之)というその男は20年前、当時高校生だった坪井里子(小林千恵)を殺害。事件は5年前に時効が成立し、民事の時効も1カ月前に成立していた。
そんな彼がなぜ、今ごろ自首したのか…。
右京(水谷豊)や薫に問い詰められた小見山は、「誰かに狙われている」と訴えるが、詳しいことは何も話さない。しかも、遺族に謝罪する気はまったくないらしい。
結局、「俺はもう罪人じゃない」とうそぶき、署から出て行ってしまう。
罪の意識を感じていない小見山に怒りを覚える薫。右京に誘われるように、20年前の里子殺害事件を改めて調べはじめる。
そんななか、殺された里子の父・貞一(上田耕一)が特命係へやって来た。
里子を殺した犯人を教えてほしいという。どうやら犯人が自首したという報道を見たようだが、当然復讐を防ぐため教えることはできない。
貞一の妻・幸子(吉村実子)は、里子を殺されたショックで手首を切り、自殺未遂までしたという。そんな苦しい胸の内を語る貞一に、同情する薫は唇を噛む。
ところがその翌日、小見山が遺体で発見。状況から20年前の里子の殺し方と酷似していることがわかる。
里子の両親による復讐殺人が疑われるが、だとしたら彼らはどうやって小見山が犯人だと知ったのか…。
実は小見山が殺される直前、薫が貞一夫婦の自宅を訪ねていた。家の前まで行ったものの、貞一らとは会わずに引き返したという。
この不用意な行動が問題視され、薫は遺族に犯人の名前を教えたと疑われてしまう。
自らの汚名を返上するため、右京と薫は真犯人探しに乗り出すが…。
◆時効の前で刑事は無力なのか
殺人罪の時効が撤廃されたのは、今から12年前の2010年のこと。
本作が放送された2005年当時は、たとえ凶悪な殺人犯であっても一定の期間を逃げ切れば法的に処罰されることはなかった。
家族を殺された遺族は時効が成立した後も苦しみ続ける一方、罪を償わずに逃げおおせた犯人は裁かれることはない。
そんな時効制度が抱える矛盾をテーマにした「ありふれた殺人」は、社会問題に切り込む『相棒』の真骨頂ともいえる作品だ。
作中、右京は薫に対し、自分たち警察官は「時効の前では無力」と話す。
犯人が自白したにもかかわらず、捕まえることも名前を公表することもできない。むろん遺族を救うこともできない。
いったい何のために時効制度はあるのか――。
お人好しで人情肌でもある薫は、そんな現状にやるせなさを感じ、遺族に同情。人としての「情」と刑事として守らなければならない「法律」との間で苦悩する。
結果的に、その同情心のせいで遺族が疑われることになるのだが、事件を通して薫が刑事として成長していく姿は本作の大きな見どころだ。
また、この物語を語る上で欠かせないのは、終盤からラストにかけての意外な展開。
殺された小見山の自宅に残された“2つの指紋”をきっかけに、右京は隠された真実にたどり着く。そのときはじめて、本作の副題が「ありふれた殺人」である理由が視聴者に明かされるのだ。
そしてすべてが明らかになった後、薫は遺族に「ある言葉」を告げる。それは非情に聞こえるが、薫の刑事としての覚悟から出た言葉だった。
薫と遺族、両者の想いに心震える。そんな切ないラストシーンにも注目して見てほしい。