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2013年、連続テレビ小説『ごちそうさん』(NHK)でヒロインの小学校時代の同級生・泉源太(愛称:源ちゃん)役を演じて注目を集めた和田正人さん。

『黒革の手帖』(テレビ朝日系)、『陸王』(TBS系)、『教場』(フジテレビ系)、映画『Fukushima 50』(若松節朗監督)など多くのドラマ、映画、舞台に出演。私生活では3歳の長女と2022年10月に誕生したばかりの長男のパパ。

12月2日(金)には映画『海岸通りのネコミミ探偵』(進藤丈広監督)が公開。公私ともに多忙で充実した日々が続いている。

 

◆クセがある役はやった気になれる

善人から悪人までさまざまな役柄を演じてきた和田さん。『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』(読売テレビ・日本テレビ系)、『純愛ディソナンス』(フジテレビ系)ではクセのある役を演じた。

「今年(2022年)はクセのある悪いやつを結構やりましたね。悪役って続くんですよ(笑)。クセがある役は、やった気になれるので嫌いじゃないですしね」

-反対に『パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件』(WOWOW)の善人役も印象的でした-

「あの作品は言ってくださる方が多いです。生活保護利用者と直接向き合うベテランケースワーカーの山川という役で、第1話でボッコボコにやられて死んじゃうんですけど」

-親身になって相談に乗ってあげる人間味のあるケースワーカーでしたが、演じていていかがでした?-

「撮影は2019年だったんですけど、結構色ものの役をやりはじめていた時期でもあったので、守りに入らず果敢にいろんなことにチャレンジする始まりだったんですよ。

そんなときに、ああいうちょっと落ち着いた、ただただ良い人。でも、もしかしたら犯人かもって思わせておいて、本当にただの良い人だったという役をやることになって。

1話で死んじゃう役だから、何かすごく爪痕を残さなきゃいけないのかなと思ったんですけど、純粋にあの役のことを考えたら、本当に淡々と困窮している人のことを思って力になろうとしている人なんだって、まっすぐに台本に書かれた通りに演じたという感じですね」

-生活保護の不正受給という社会的な問題の要素を盛り込んだ骨太のドラマでした。和田さんが演じた山川さんのような職員の方がいてくれたらと思う人が多いでしょうね-

「そうだと思います、本当に。実際、僕が演じた山川と同じような心ある職員の方もいらっしゃると思うんですよね。

でも、なかには詐欺まがいのことをして生活保護を受給しようとする人たちのことも問題になっているから、どうしてもきつくというか、厳しくしなければいけないということもあると思うし…。やっぱり税金ですからね。いろいろなことを考えさせられた作品でした」

-山川さんは、橋本愛さん演じるヒロイン、新人ケースワーカーの指導役でもありました-

「橋本愛ちゃんがすごくいい空気感を醸(かも)し出していたので、そこに寄り添うというか、彼女の心のすきまにちょっとお邪魔しますくらいな気持ちが僕の中にもあったので、彼女の空気感がいい感じで引き出してくれたのかなって思います」

 

◆3歳の愛娘と2人で過ごした5日間は…

私生活では2017年にタレントの吉木りささんと結婚。2019年に第1子となる長女が誕生し、2022年10月には長男が誕生したばかり。出産のため奥さまが入院していた間は、和田さんと長女の2人きりの生活だったという。

「出産の前後で5日間入院していたので、その間娘と2人きりの生活だからちょっと不安はありました。もちろん僕も一緒に遊びに行ったりとかしていましたし、大好きなのでいろいろやっていたんですけど、やっぱりどうしてもママじゃないですか(笑)。

ママがいると僕のところにはなかなか来ないし、別にそれはそれでいいやと思っていたんですけど、『2人きりで大丈夫かな?』って。僕より妻が不安だったみたいで、家の冷蔵庫とかキッチン周り、衣類棚、食器棚など、全部に妻が付箋を貼ってあったんですよ(笑)。

僕はそんなに料理ができないわけじゃないんですけど、やっぱり結婚して妻がキッチンに立つようになってから、どこに何があるか、開けてみないとちょっとわからなくなっていたところがあったんですよ。

子どもの何がどこにあるかということもあまり把握できていなかったんですけど、それを全部付箋で貼ってありました。燃えるゴミの曜日とかも。

娘は3歳になったばかりですけど、ママはいないということがわかるんでしょうね。そうすると、娘がすごく頼ってくるわけですよ。今までだったら僕が添い寝していても『ママ、ママ』って言っていたのにおとなしく寝るし。

それでその5日間を過ごすと、規則正しくなるんですよね。それまで僕は、娘と妻が寝ると、3時間くらいテレビとかDVDを見ながらお酒を飲んだりしているうちに2時になっちゃったとかで起きるのが8時くらいになったりしていたんです。

でも、そのときは娘を保育園に連れていかなくちゃいけないから、早起きして朝ご飯を作って、歯を磨かせて食べさせて…ってやっていると、『朝ってこんなに忙しいの?』って(笑)」

-普段の奥さまの苦労がよくわかったわけですね-

「はい。娘を保育園に送り届けて、それからやっと自分の時間で、夕方また迎えに行って、ご飯を食べさせてお風呂に入れて寝かせて…『ああ、ママって毎日こんなにいろんなことをやっていたんだ』って。その5日間がすごく充実していたので、お風呂に入れて、寝かしつけてというのは、今もやっています」

-退院してきた奥さまが、お嬢さんの成長にちょっと寂しさを感じたとブログに書いていましたね-

「そうですね。退院した日に娘がファミレスが好きだから行ったんですけど、それまでは娘はだいたい妻にくっついて座っていたのに、僕の隣に来てチョコンと座ったんですよ。

それを見てママが『えーっ?!』って驚いて、うれしいやら寂しいやらという気持ちになったって言っていました」

-お嬢さんも色々学んで成長した5日間だったのですね-

「そうなんですよ。本当に充実していましたし、良かったなあって思いました。実は、先日娘の幼稚園の面接があって、妻が産後すぐで面接に行けないので、僕が連れていかなきゃいけなかったんですよ。

普段娘がパパに懐いていないと不安になって『ママ、ママ』って泣いたりすると落ちちゃうじゃないですか。人気がある幼稚園なので、誰でも受かるというわけじゃないですから。

そのために2人で公園に行ったり、お風呂に入れたり、幼稚園の試験に出てきそうなことをいっぱい遊びながら練習させたりというのをずっとやっていたんですけど、あの5日間は大きかったですね。頑張って受かりました」

-良いパパですね。そういう役は?-

「一度ショートムービーでそんな感じの役をやったことがあって、夫婦役で共演した紺野まひるさんが『すごくいいと思うし、今そういう良いパパを演じられる俳優さんは意外と少ないから、和田さんすごくいいと思いますよ』って言ってくれたんですけど、逆にそういう良いパパが出てくる作品が今はあまりないですよね(笑)。一昔前はあったんですけどね。良いパパの役やりたいなあ」

-お嬢さんは焼きもちを焼いたりは?-

「それが全然しなくて、退院初日に息子をベビーベッドに寝かせていたら、娘がベビーベッドによじ登って中に入って息子のお腹(なか)をトントントントンって優しくやっているんですよ。

僕は『気をつけてね』って言いながら見ていたんですけど、娘はそのまま横に添い寝して寝かしつけちゃったんですよ。『初日から生まれたばかりの子どもを寝かせつけた、すごい!』って、ずっと写真を撮っていました(笑)」

©2022「海岸通りのネコミミ探偵」製作委員会」

※映画『海岸通りのネコミミ探偵』
2022年12月2日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
配給:ビデオプランニング
監督:進藤丈広
出演:牧島輝 和田正人 菊池爽 尾関伸次 徳井優 ベーコン(猫) ぽんず(猫)/星野真里

◆最新出演映画でペット探偵の存在を知って…

和田さんは、2022年12月2日(金)に公開される映画『海岸通りのネコミミ探偵』にペット探偵・猿渡浩介役で出演。

この映画は、湘南の海を舞台にした、猫が起こす奇跡のストーリー。湘南の浜辺でいなくなったペット猫・ミミちゃんを探している猫塚照(牧島輝)に依頼され、一緒にミミちゃんを探すことになるが、無一文で調査の報酬が払えない猫塚は、猿渡の探偵業務を手伝うことに…。

-ペット探偵の猿渡はユニークなキャラですね-

「胡散臭(うさんくさ)い人だなと思うけど、漏れてくるその人の誠実さとか、色気とか、そこを見せたかったというところがあって、キャラを作って。Amazonでサングラスを買って、衣装も雰囲気はあんな感じで衣装合わせに行きました」

-撮影はいかがでした?-

「楽しかったですよ。進藤さんは前にご一緒させていただいたこともありますし、いろんなものをすごくおもしろがってくれる方だったので、いっぱいアイデアを出していったほうがいいなあと思って。

だから衣装合わせをする前にもZoomで監督とプロデューサーと3人で、打ち合わせをしてから衣装合わせに行ったりしていたので、僕の中ではここ最近の中では一番いっぱいいろんなアイデアだとか提案をさせてもらって、結構アドリブも入れさせてもらいました」

©2022「海岸通りのネコミミ探偵」製作委員会」

この映画は、人生何もうまくいかない青年(牧島輝)が飼い猫・ミミちゃんの行方がわからなくなってしまったことからペット探偵(和田正人)と出会って見習いとなり、心に傷を持つ少年との交流を通して新たな人生を見つけ出していくという展開だが、ミミちゃん役の猫・ぽんずの名演も見どころの一つ。

「ぽんずはすごい売れっ子猫みたいで、いろんな作品に出ているんですよ。『耳をすませば』(平川雄一朗監督)にも出ていて、すごいいい演技をしているんですよ(笑)。『ぽんず、いい芝居をしているなあ』って」

©2022「海岸通りのネコミミ探偵」製作委員会」

-お宅では、ワンちゃんを飼ってらっしゃるとか-

「はい。ワンちゃんを飼っているので、基本的に動物と触れ合うことは好きだし、慣れている部分もあります。映画の題材も“ネコミミ探偵”というポップな雰囲気の作品で、パッケージの雰囲気もちょっと中高生向きというイメージだったりして架空の漫画に出てきそうな感じじゃないですか。

でも、蓋(ふた)を開けると、ペット探偵というのは実在して、すごくペットのために活躍されているということ。しかもやっていることはすごく泥臭くて、地味な職業だけど、世の中にペットを飼っていらっしゃる方はごまんといて、その中で行方がわからなくなって悲しい思いをされた方もたくさんいらっしゃると思うんです。

そんな悲しい思いをする人が少しでもいなくなるように尽力してくれるペット探偵というのは、もっと世の中にあっておかしくない仕事だと思うし、メジャーであっていいと思うんですよね。ペット探偵という存在をもっともっと知ってほしいなあと思います。

いなくなったペットを探すという仕事を真剣に描いている、そこでペットと飼い主の絆、人間との絆がすごく心の隙間にフワッと刺さってくるというか、じんわりとぬくもりを感じさせてくれる作品だと思うので多くの人に観てもらいたいです」

-今後は、どのように?-

「陸上をやっていたときのように、目の前のことを一生懸命やっていこうと。与えられた役を一生懸命やっていれば、自分が行きたいほうなのか行くべきほうなのかわからないけど、道は開けていくというような、動物的というか、道の進み方をしているので、そのままだと思います。ものすごく良いパパ役もやってみたいですけどね。やったことがないから(笑)」

ご家族について話すときの幸せそうな優しい笑顔が印象的。クセのある役もおもしろいが、良いパパを演じている和田さんもぜひとも観てみたい。(津島令子)

ヘアメイク:五十嵐千聖
スタイリスト:奥村渉