東京都足立区の公立中学校への支援が手厚いと話題になっている。足立区では2012年から、家庭の事情等により学習塾に通うことが難しい生徒を対象に、無料の進学塾「足立はばたき塾」を開講している。足立区内の区立中学校に通う中学3年生が対象で、区の施設で難関高校受験のための指導を行う。
年収23区最下位も塾通いの波
足立区教育政策課長の田巻正義さんは、はばたき塾が生まれたきっかけについて、こう語る。
「塾に通えないので、体験講座をいくつも周って勉強している」との生徒の声があったそうです。意欲のある生徒の受け皿も必要だろうと、はばたき塾の実現に繋がったと聞いています。
昭和や平成初期の頃と子供を取り巻く教育環境は大きく変化しており、塾に通うことがより一般化しつある。文部科学省『平成30年度子供の学習費調査』によると、公立校の中学3年生の学習塾費は31万3780円となっている。
一方、総務省『令和2年度課税標準額段階別所得割額等に関する調査』によると、足立区の平均年収は東京23区の最下位で347万1928円。トップの港区1163万円1584円、10位の杉並区469万5874円と比べても大きな開きがある。もともと、はばたき塾のような存在は需要が大きかったと言える。
区議会でも時々取り上げられますが、卒業生も含め『続けるべき』との声がほとんどです。
塾は毎週土曜日、16時半〜20時半までの4時間、英語と数学を中心に学ぶ。夏季や冬季の長期休みには集中講座もあり、国語や理科、社会の授業も受けられる。クラスは4段階に分けられ、年間5回の学力模試も用意されている。トップレベルのクラスでは、難関校に向けた指導も行っている。定員は100名。入塾の際には、所得の状況を見た上で、入塾テストをクリアする必要がある。
石原都政で塾通いが増加
はばたき塾のような支援が必要となった背景には、高校入試の制度改革があるという。
東京都では2001年に都立日比谷高校が「自校作成問題」の出題を開始し、その後、西高校、戸山高校などの難関校で出題されるようになりました。
90年代以降、東京都では石原慎太郎都知事(当時)が「都立復権」を掲げて都立高校の受験エリート化を推進。難関校は各校が独自の問題を出題するようになり、試験対策が必須となったため、塾での重点指導の必要性が高まったと見られている。
はばたき塾は株式会社エデュケーショナルネットワークに運営を委託している。同社はZ会グループで、プロポーザル方式で受託が決まった。授業内容は一般的な進学塾とまったく変わらないものを提供しているという。
今年の委託料3200万円はもちろん税金から支払われているが、こうした使い方であれば、多くの人が賛同できるのではないだろうか。