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 浜名ワークス(静岡県浜松市)が2022年5月開催の「ジャパントラックショー2022」に出品した濃紺のキャリアカー(車両運搬セミトレーラ)は、自動車輸送大手ゼロと共同開発した「Zモデル」と呼ばれるもの。EV輸送にいち早く対応する、次世代の主力キャリアカーというから注目だ。

 一体、普通のキャリアカーとはどう違うのか? 実車をレポートした!

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部


EVの輸送効率アップを目指して開発されたZモデル

ゼロが浜名ワークスと共同開発した「Zモデル」

 ゼロは、神奈川県川崎市に本社を置く大手自動車輸送会社だ。年間300万台以上の新車/中古車を運んでおり、自動車輸送に携わるグループ従業員総数は2000人超。キャリアカーの総保有台数は1000台で、これは業界最多という。

 同社のキャリアカーの主力は、6台積みの1軸セミトレーラタイプ。最大積載量は約8.6tである。いっぽう、近年増加中のEVは、ミドルクラスで1.9〜2.0t、ラージクラスで2.3〜2.5tの重さに達するので、従来のキャリアカーではがんばっても3〜4台が限界だ。

 ただでさえドライバー確保がむずかしいなか、6台積みキャリアカーで3〜4台しか運べないのはコスト的にも合わない。この大ピンチを打破するため開発されたのが「Zモデル」である。

 Zモデルの開発は2019年にスタート。最大の目標は「最大積載量10t以上を確保」することだが、このほかにも「将来必要となる装備の導入」も目標に掲げられた。

徹底的な軽量化でEVの5〜6台積みを実現

 最大積載量10t以上を確保するためには、大幅な軽量化が必要。そこで開発陣はまず、上段デッキを支える「サイド枠」の削減に取り組み、車体の強度/剛性を維持しながら、サイド枠の柱/筋交いを片側4本削減。軽量化を図るとともに、商品車への乗降性アップも実現した。

 また、サイド枠の柱のうち、上段デッキを固定するピンが設けられる柱には、高い強度と耐蝕性を誇る新素材の「二相ステンレス鋼」を採用。これにより、従来と同等の強度を保ちながら軽量化を実現し、耐蝕性も向上した。

 車両価格は上がっているが、塗装が傷んでも錆びにくく、補修コストやメンテナンス時間が減ることで、生涯コストはむしろ低く済みそう。

 いっぽう、車軸は従来の拡幅式シングルタイヤ車軸から固定式ダブルタイヤ車軸に変更。構造がシンプルで軽量化に寄与するいっぽう、積み降ろし作業要領の大幅変更が必要になる固定式ダブルタイヤ車軸を主力モデルに採用する点に、ゼロの今後の自動車輸送への覚悟が感じられる。

 このほか、デッキのエキスパンドフロアの採用や、各部の軽減孔(肉抜き穴)など、Zモデルは車体各部を徹底的に軽量化。これにより最大積載量は目標を大幅に上回る11.2tを達成し、EVの5〜6台積みが可能となっている。

将来を見据えた数々の新装備にも注目

 Zモデルは、軽量化と同時にさまざまな新装備を採用しているのも特徴。専用スマホアプリによるデッキ&エアサス操作や、格納式車高カメラ、上段デッキ裏赤外線センサーなどはいずれもドライバーの作業支援のためのもので、各種データはクラウド上に保管され、ドライバー教育などにも活かされるという。

 トレーラ側にバッテリーと電動油圧装置を搭載しているのも大きな特徴で、これによりデッキなどの装置を、トラクタと連結していない状態(トラクタからの動力供給がない状態)で動かすことが可能。すでにこの仕組を利用した荷役分離ドッキング輸送の実証実験も予定されている。

 トラクタは初めてショートキャブを採用。2024年施行の改正労働基準法による運行時間の短縮化を見据えたもので、キャブが短くなったぶん、トレーラのグースネック部を延長。これによりトラクタの第5輪荷重11.5tを有効に使えることも、積載アップにつながっている。

 なお、グースネック部の延長に伴ってトレーラの前回り半径が拡大したため、従来のキャリアカーの運転に慣れた人は車両感覚に注意が必要とのこと。

 ゼロ・グループでは、すでにZモデルを10台導入し、各地に配備。使い勝手や積載性を実地テストしており、今後もさらなる改良を進めながら追加導入を検討しているという。

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