都議会自民党が、昨年の都議選時に公約にしていた、「都民税の20%減税」「事業所税の50%減税」の実現に動き出した。29日に行われた都議会本会議で、同党の川松真一朗議員が小池都知事に、都民税と事業所税の減税を強く求めた。
“減税派”の都民ら突き上げ
自民党都連は、昨年7月に行われた東京都議会選挙で、16項目の公約を発表した。その中で、「コロナ感染症対策」に次いで掲げたのが、「都民税の20%減税」「事業所税の50%減税」。
しかし、自民党は33議席を獲得して都議会第1党にはなったものの、公明党の23議席と合わせても全127議席の過半数に届かなかった。このことで、自民党が都議選の際に掲げていた公約、特に減税に関する公約が宙に浮く形となって1年以上が過ぎた。関係者によると、一部の議員には、ダメもとで公約通りに提起するべきという“主戦論”もあった一方、パフォーマンス視されることを憂慮したのか“慎重派”も多く、目立った動きはなかった。
ただ、そうなると減税公約に一票を投じた都民は黙っていない。この間に都議会自民党はSNSでネットの減税派などから強い突き上げを食ら雨事もあった。
都議選の自民党公約は忘れられてしまったらしい
一つも動かないなら次回は都議自民全員落選で
都議選で自民党は減税を公約されました。実現するための質問等はされたのですか?
都民税減税はどうなったのでしょうか?状況を教えてください。都議選では都民税減税を公約にされていたので自民党の候補に入れました。
こうした根強い「民意」を意識してか、ようやく自民党都連で減税を求める動きが本格化してきたようだ。
川松議員「減税の決断を強く、強く求める」
そして28日に行われた都議会本会議の代表質問で、自民党都議会幹事長の三宅正彦議員が「多くの都民の家計と、中小零細事業者の経営が極めて厳しい状況にある今こそ、大都市・東京ならではの大胆な支援策を打つべき時」と小池知事に減税を迫った。
これに対して小池知事は、次のように述べた。
足元の危機を乗り越えるために価格転嫁が困難な事業者への直接的な支援など一歩踏み込んだ対策を実施していきます。今後も都民生活や東京の経済を支えるためにさまざまな観点から必要な支援を検討するとともに、持続可能な社会の実現に向けて長期的な視点に立った都政運営を行っていきます。
さらに、29日に行われた一般質問で自民党の川松真一朗議員は、減税政策について次のようにたたみかけた。
「東京は豊かだ」と思われがちですが、総務省の全国消費実態調査をもとにした、国土交通省の中間世帯の経済力分析によれば、東京は47都道府県で最下位なのです。これは諸経費を引いた後の自由に使えるお金が最も少ないことを示しています。だからこそ、特に子育て世帯や若者の世帯が使える手元のお金を増やし、生活を応援し、ひいては経済を活性化させたいと考えています。そのための都民税20%減税です。
川松議員は、往年の国会で「政治とは何か」を問われた大平正芳元首相が発した「明日枯れるかもしれない花にも水をやることだ」という言葉を引用したうえで、次のように述べた。
今のコロナ禍、このままだとみんな干上がってしまいます。枯れるかもしれない花にも水をやる。その先です。絶対に今を枯らさないために小池都知事に減税の決断を強く、強く求めて質問を終わります。
小池知事は完全シカト
川松議員から減税を求められた小池都知事。前日の三宅議員への答弁では「一歩踏み込んだ対策を実施していきます」と述べていたが、この日の態度は違った。
川松議員はこの日、減税のほか、環境政策やインフラ整備、アスベスト対策など7項目の質問をした。ほかの質問に対しては、小池知事に代わって都の担当者が答弁をしていたが、減税については答弁に立った都の担当者はいなかった。もちろん、小池知事も答弁することはなかった。つまり、小池知事は川松議員の質問のうち、減税だけ完全無視したわけだ。
それに、よくよく考えてみれば、前日の三宅議員の代表質問への答弁でも「支援を検討していく」と述べてはいるものの、「減税を検討していく」とは述べていない。現状、小池知事は減税を一切考えていないだろうということは、この2日間の答弁内容からよく分かる。
自民党都連関係者によると、今後、小池知事に対して減税を粘り強く訴えていく方針だというが、小池知事はそれに対してどう応えるか。日本の首都で減税が実現するかどうかがかかっているだけに、都民ならずとも要注目だ。