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東京都足立区では2012年から、家庭の事情等により学習塾に通うことが難しい生徒を対象に、無料の進学塾「足立はばたき塾」を開講している。足立区内の区立中学校に通う中学3年生が対象で、難関高校受験のための指導を行い、成果も出してきた。

後編では、同塾の卒業生らに取材などで聞いた感想を紹介したい。

「はばたき塾」の授業

卒業生に聞く成果

前編でクローズアップされた都立高校への進学実績も着実に積み重ねている。日比谷高校、戸山高校、青山高校、新宿高校といった難関高校に、毎年一定数の生徒を送り出している。現在都内の難関私立大学に通う女性も、はばたき塾で学力を磨いた。

母親が区役所ではばたき塾の案内を見つけてくれて、入塾しました。最初は下のほうのクラスでしたが、丁寧に教えてもらい上のクラスに上がれました。高校受験では、第一志望の都立高校に進学できました。はばたき塾には、とても感謝しています。

授業回数は限られているが、密度の濃い授業を受けられたという。

週に1回だけで宿題の量もかなりあるので、ある程度の自主管理が必要にはなりますが、クラスの仲間たちとともに乗り越えていくことができました。

「はばたき塾」の授業

塾に通って学んだ教訓」

卒業した塾生のアンケートには、以下のような声があった。

はばたき塾のようなレベルの高い講座を受けることができるのは、本当に感謝すべきことで受験勉強の時にすごく支えてくれる存在になりました。

はばたき塾の1年はハードなものでしたが、結果、志望校に合格して高ランクの奨学生の認定をもらえました。さらには、継続することの大切さなど、塾に通って学んだ教訓も多くありました。

普通だったら関わることのない別の中学校の人たちと一緒に勉強することで新たな発見もたくさんあったし共に高め合うことができたから本当に通えて良かった。苦手だった教科が得意になった。

足立区教育政策課長の田巻正義さんは、はばたき塾によって生徒たちが社会の仕組みを考えるきっかけにもなったと語る。

生徒の書いた作文などを見ると、税金の使われ方を実感したという生徒も多いようです。区役所が運営する塾ということで、税金がどのように社会の役に立っているかを考えるきっかけにもなったようです。

勉強が不得意な生徒への行政支援は比較的多く見られるが、ある程度勉強ができてさらに上を目指したいという生徒への支援は、全国的にもまだ多くないという。社会の変化とともに、行政サービスも変化を続けているようだ。