タカラバイオは、メッセンジャーRNA(mRNA)原薬の開発・製造受託(CDMO)事業で生産能力を増強する。滋賀県の工場で増設を行い、年度内に完工する予定。増強後の能力は、米ファイザー製新型コロナワクチンタイプで年3000万回分程度になるとみられる。さらにmRNAの合成などに用いる酵素メーカーとして研究用のほか、GMP(医薬品の製造・品質管理基準)グレードなど製品群を拡充する。CDMOと原料の2面で積極展開し、成長潜在性の高いmRNA医薬品市場で優位性の確立を目指す。
滋賀県草津市の本社工場で昨年、mRNA原薬の生産体制を構築したばかりだが、すでに設備増強を進めている。当初、ファイザー製の新型コロナワクチンで換算すると年1200万回分を生産できる能力を確保したが、その2~3倍程度に引き上げる。同工場ではmRNAの原材料となるプラスミドDNA(pDNA)も生産しており、pDNAからmRNA原薬まで一貫して製造を請け負うことができる。
mRNAワクチンや医薬品の研究開発は世界で盛んに行われている。日本でも新型コロナワクチンを開発中の第一三共をはじめ、国内製薬大手の多くが新たなモダリティ(治療手段)として創薬研究に取り組んでいる。今後はインフルエンザなど他の感染症用ワクチンや、がんなどの治療薬への応用が見込まれる。製薬企業の製造の外注化や、製造設備を持たない創薬ベンチャーの研究開発の進展などによりmRNA医薬品CDMO市場も拡大する見通しだが、現時点で国内に商用生産まで受託可能な体制は十分に整っていない。
タカラバイオはすでにVLPセラピューティクス・ジャパン(東京都千代田区)が開発中の新型コロナワクチンの原薬製造を受託している。引き合いも強く、他社に先んじて製造能力を拡大し商機を捉えていく。
タカラバイオはCDMOにとどまらず、原料メーカーとしてmRNA合成などに用いる酵素を製造・販売している。GMPグレードと、それらと品質が同レベルの研究用グレードを投入する予定で、幅広い品揃えで多様なニーズに対応する。GMPグレードは2023年から順次販売する見込み。CDMOと原料の2面でmRNA医薬品市場を開拓する。(岩﨑淳一)
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