飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラから、比較的手の届きやすい価格帯にある世界で最も人気のEVのSUV、モデルY。日本での発売が発表されたのは2022年の6月。
そのモデルYを、発表直後に注文して9月に納車され、実際に1ヵ月、400km乗ってみての満足な点・不満な点、初期トラブルの有無とその対応など、オーナー本人からしか聞くことのできない生の声を聞いてきました。
文/柳川洋
写真/ベストカーweb編集部
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■デザイン・価格・使い勝手・リセールを考えるとモデルYがベストの選択だった
テスラの最新モデルのSUV、モデルYが、筆者の20年来の友人であるN君のもとに納車されて1ヵ月が経ちました。
N君は米系金融機関・投資ファンド勤務を経て、現在はフリーランスでコンサルティング業を営んでいる、アクティブな40代男性。
イーロン・マスクが2006年に発表した、EVを低価格化させるとともに、ゼロエミッションを達成するというテスラの「マスタープラン」を読み、その将来性を見込んでテスラの株を保有しているほどのテスラファンです。
愛車のザ・ビートルが10年落ちとなり、次のクルマを探すなかでの一つのテーマが「使い勝手がよくて楽しく、所有欲を満たすうえに値下がりしにくいクルマ」。
ランクル300系なども検討対象になりましたが、ネックになったのは自宅マンションの駐車場。
全高1925mmのランクルを試乗して駐車場に入れられることは確認できたのですが、マンションの管理規約では地下にある駐車場にとめるクルマの全高は1.8mまで、と決まっていたのでそれらのクルマは断念せざるを得ませんでした。
そんななか、日本で発表されたテスラのモデルYを見て、「デザイン、価格、使い勝手、リセールを総合的に考えたら、もうこれしかない」と早速試乗を申し込み、直後にウェブから申し込んだそうです。
この記事を書いている10月末時点でのモデルY RWDの価格は643万8000円ですが、彼は発表時点での価格619万円プラスオプションの20インチインダクションホイールを選択し、600万円台半ばの乗り出し価格で購入できたそうです。
また、国からの65万円の補助金と東京都の補助金45万円も無事に申請できたそうです。まだ補助金は手元に来ていませんが、実質的には500万円台前半から半ばでモデルYが買えたことになります。
■街中ではかなりのボリューム感と存在感、後方からのアングルでは高級車のオーラ
週末の朝、都心にほど近い住宅地の駅前に、N君が乗ったパールホワイトのモデルYがやってきました。
写真で見るとモデル3と似ている印象を受けますが、実車を見て比較するとモデルYはSUVならではの圧倒的なボリューム感を誇り、モデルXと見間違えるような存在感を放ちます。
それもそのはず、モデル3の全長4694×全幅1849×全高1443mmに対し、モデルYは4751mm×1921mm×1624mmと、モデルYはモデル3に比べ全長が57mm長く、全幅が72mm広く、全高が181mm高いことになる。
またリアのドアパネルからテールゲートまでのグラマラスな造形もモデル3とは大きく異なります。前から見るとおとなしいクルマのような印象を受けますが、後ろから見ると押しの強さと高級感を感じます。
オプションのマットブラック塗装の20インチインダクションホイールがさらにアグレッシブさを引き立てます。
20インチのタイヤはミシュランのパイロットスポーツEV。重くてトルクが太く、加速時の駆動輪への、またコーナリング時のサイドウォールへの負担が大きいうえ、エンジン音がないためタイヤの静粛性が重要視されるEV専用のハイスペックタイヤです。
標準設定の19インチのハンコック製タイヤ装着時と比べ、数%電費は悪化するようですが、このかっこよさで満たされる所有欲は25万1000円分の価値があるように思います。
9月の有明ガーデン5Fにあるテスラ有明デリバリーセンターでの納車は、アメリカでレンタカー借りるときの手続きを思い起こさせるものだったそうです。
納車後、タイヤからコツコツした突き上げがあり、そのままデリバリーセンターに直帰。調べてみると、タイヤにフラットスポットができていたせいだったようで、そのまま板橋のサービスセンターに入院し2週間後にクルマは戻ってきたそうです。
そんな話をしていたら、「実は今日もタイヤからコツコツ音がしていて……」とN君が言います。リアタイヤを見てみると、なんとトレッド面にネジの頭が見えました。
ディスプレイの表示では、タイヤの空気圧は異常がないとディスプレイに表示されていますが、やや心配。テスラのサービスセンターに電話をしてみましたが、朝早いということもあって営業時間外。仕方がないのでしばらく様子を見ることにしました。
■400km走ってわかった、モデルYの満足・不満なポイント
納車から1ヵ月、タイヤのフラットスポット修理の2週間を除けば実質2週間で422kmを走ってみて、満足している点、していない点を、オーナーであるN君に聞いてみました。
満足している点としては、まずエクステリア・インテリアのデザインだそうです。非常にシンプルでミニマルな操作系は、ハンドルとそれに付随するスイッチ2つ、レバー2本と大きなディスプレイだけというシンプルさ。
肌に触れる部分のマテリアルは、超高級感がある、とまではいえないものの、クオリティは十分。動物皮革を使わずヴィーガンレザーオンリーな点も、時代への対応が感じられていいそうです。さすが意識高い系。
そして乗り心地。安定感と剛性感を強く感じ、SUVイコール重心が高くて安定しないかも、という先入観を吹き飛ばす乗り心地だそうです。
万が一の事故の場合も考慮に入れて、非常に剛性が高い設計となっているEVのバッテリーが、床下に配置されていて低重心化が図られているおかげのように思われます。
やや硬めの乗り心地ではありますが、段差での突き上げ感はあまり感じられないそうです。
またワンペダルモードで運転していても、街中で加減速を繰り返すようなシーンでもあまりギクシャクすることはなく、EVならではの加速感を強調しすぎていないところもグッドポイント。コーナリング時のロールも少なく、同乗者に優しい運転が可能で運転が上達したような気持ちになるそうです。
また、開放的な車内空間もポイント高い、とのこと。確かにガタイのいい筆者が助手席に座って男2人でドライブしていても、十分なスペースがあり圧迫感は感じられません。
そしてルーフ一面が巨大な1枚ガラスで覆われていることで、天井高の高さもあいまってとても開放的。
身長180cmの筆者は後部座席にも座らせてもらいましたが、ヒップポイントの高さのおかげで前方視界が開けること、その割にはひざ前・頭上スペースが確保されていること、リクライニングするリアシート、フロントシート下にあるスペースに足を伸ばせることなどでとてもリラックスできました。
最後にテスラのアプリの出来が非常にいい点もお気に入りだそうです。スマホによるドアの解施錠、電費が直感的にわかるアプリなど、クルマとアプリのインターフェースが優れていてストレスが少ないのが美点だということとでした。
不満な点はそれほどなく、あえて挙げるとすると、サイズが大きくて取り回しに苦労することと、クルマにトラブルがあった時の修理対応のレスポンスが悪く、やや不安になった点だそうです。
■コインパーキングでは苦労することなく普通に駐車可能
見た目はかなりボリューム感のあるモデルY、実際の取り回しはどうかということで、コインパーキングに駐めてみることにしました。
デパートや公共施設の自走式立体駐車場に入れたことがある、とN君は言っていましたが、昭和に造られ、クネクネとした圧迫感のあるランプウェイを通り抜けて狭い駐車スロットに停めなければならないのは、なかなかのストレスだったそうです。
試してみたところ、一般的なコインパーキングでは枠からはみ出すことなく、普通に駐めることができました。2ドアクーペではないので、ドアパネルの長さもさほど大きくなく、隣のクルマに気を使いすぎることもありませんでした。
モデルXもそうですが、テスラのSUVのモデルは全高が比較的低くできており、モデルYでも全高1624mmですので、立体駐車場でも全高はあまり問題にならず、ミラーを折りたたんだ時の1921mmという全幅が問題になる可能性が高いと思われます。
ご購入を検討されている方は、念のため試乗時に実際に自分の使っている駐車場に駐めてみることをお勧めします。
■都会の集合住宅に住む人にとってはスーパーチャージャーが命綱
自宅マンションの地下駐車場への充電器の設置には、管理組合との交渉が必要で、なかなか居住者一人がEVを買うからといってマンション全体で議論する、というのも難しく、N君いわく充電に関しては現在都内に11カ所ある、テスラのスーパーチャージャー(SC)を利用しているそうです。
やはり集合住宅居住率の高さと、集合住宅での充電器設置の難しさが、日本でのEV普及の大きなハードルになっていることを改めて強く感じました。
EVに乗るような「意識高い系」の住人が増えれば、集合住宅の資産価値も高まるはずなので、先行投資して充電器を集合住宅の駐車場に設置してしまえばいいのに、という気もします。
取材時、テスラのSCで充電しましたが、80%充電まで30分ほどでした。テスラSCではない共用の充電器で充電するためには、充電ソケットの形状が違うためにオプションのCHAdeMOアダプターを購入する必要がありますが、テスラ純正のものだと5万1100円で、現在は品薄でテスラアプリでは販売されていないようです(最近値上がりしたという情報も)。
現在テスラのSCは、仙台以北は盛岡、函館、札幌の3カ所のみ。福岡以南は熊本のみ。ホテルやパーキングなどでのデストネーションチャージングもありますが、SCより長い充電時間が必要です。CHAdeMOアダプターを買わずに北海道や九州でテスラ車での長旅を楽しむためには、計画性が必要になりそうです。
■街中のカー用品店のピットサービスでもEVの軽作業はお願いできる
朝10時を過ぎたので、タイヤにネジが刺さっている件で、テスラのサービスセンターに電話して対応をお願いしました。すると、定休日を挟むこともあり、見ていただけるのが2日後になる、とのこと。
これから首都高湾岸線を走って大黒PAまで試乗予定だったのに、このままスローパンクチャーとなってしまうリスクもあり、弱りました。
不用意にネジを抜いてしまったら、一気にエアが抜けて走れなくなってしまう可能性もあるのでどうしようと悩み、ダメもとですぐ近くにある代官山の某有名カー用品店に電話してみました。
一般に、EVは床下にバッテリーが設置されているため、タイヤ交換などでジャッキアップする時に最も高価な部品であるバッテリーを破損してしまうリスクがあります。
そのためディーラー以外に修理をお願いするのはややためらいがありましたが、そこはさすがの有名カー用品チェーンの都心の店舗。テスラ車のジャッキアップも手慣れています、とのこと。
すぐに見ていただいて、ネジを抜いてもらったら実は長さが意外と短く、石鹸水を吹きかけても泡が出てきません。ネジはゴムの表面に刺さっていただけでエア抜けのリスクがないことがわかり、一同ほっと胸をなで下ろしました。
「タイヤの空気圧計では2.9barとなっていますが、テスラは2.6bar以下になると警告が出るので、少し高めの3.1barまで入れておきますね」、と親切に教えてくれ、「ただネジを抜いてエア入れただけだからお代はいりません」、とのこと。
不安を抱えたままテスラのサービスセンターの入庫を2日待たなければいけなかったかもしれないことを考えると、まさに神対応でした。
■補助金後で500万円前半から半ばの価格でも割高には感じられない
筆者も大黒PAから都内に戻る、高速と街中の両方をカバーするルートでステアリングを握らせてもらいました。
湾岸線への合流時にアクセルを踏み込んだ時のリニアな加速感とトルクの盛り上がり感はまさにEVならではのものでしたが、前のクルマを追い越すために第三通行帯にやや加速して出てまた戻って減速のような場合、極めて自然な加減速で、内燃機関車に慣れている筆者も違和感を感じることはありませんでした。
また、ノロノロとしか進まない渋滞した都心の幹線道路を走っても、ワンペダルでギクシャクすることはなく、おおらかな気持ちで運転できました。
若干サスペンションの硬さは感じられなくはないものの、乗っていて不快なレベルではなく、走行距離が伸びるにつれて角がとれていくのではないかと思いましたし、幹線道路で急いでUターンしなければいけないような状況でも、腰高感を感じることはありませんでした。
モデルYが気になっている、という方は、実際乗られてみても期待を裏切られることはないと思います。補助金後で500万円台半ばというプライスタグですが、それが割高に感じることはありませんでした。
国からの補助金は11月上旬めどで一旦予算がなくなるようですが、現在の納車予定は来年の2月~3月予定ということで、それまでに補正予算もしくは本予算で再びEV購入補助金が用意される可能性が非常に高い状況であることを、念のため申し添えておきます。
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