先週、米サンフランシスコ一帯でマグニチュード5.1の地震が起こり、その直前に100万人以上のAndroidユーザーが「地震が起きようとしている」との警告を受け取ったという。
これはAndroid端末が揺れを検知して地震警報を発するシステム「Android Earthquake Alerts System」(AEAS)の成果である。米Wiredは複数の関係者に取材し、その仕組みを明らかにしている。
GoogleでAEASプロジェクトを率いるマーク・ストガイティス(Marc Stogaitis)氏によれば、こうした警告をAndroidスマホが受信するのは初めてではないとのことだ。しかし、ベイエリアは人口が密集しているために多くの端末に届き、その結果として一般の人々にも知られることになったという。
また米国地質調査所(USGS)にて地震の早期警報システム「ShakeAlert」の運用に関わるロバート・デ・グルート(Robert de Groot)氏は「我々がやろうとしていることの1つは、地震の早期警戒産業を築くことだ」と語る。つまり今後も安定して研究を続け、より信頼性の高いシステムを作る上で、ビジネスの基盤は不可欠ということだろう。
この技術は現時点では地震を予知できないし、USGSも「近い将来」も予知できるようになるとは考えていないとのこと。それでも人々がふつう感じるよりも早く地震を検知できる。そして、ゆくゆくは警報をより早く出すことで、人々が避難する時間をより多く確保することを目指しているそうだ。
今回のAndroidによる警報は、まずShakeAlert発のデータに基づいていた。 地震は西海岸で起こり始めたとき検出され、実際にベイエリアに到達するまで数秒間かかった。Googleは、この貴重な数秒間を活用するために手段を講じたという。まず、このShakeAlertを自社のシステムに組み込み、地震が起こる地域にいるAndroidユーザーに、アプリをダウンロードすることなくプッシュ通知を送信したのである。
ShakeAlertシステムの仕組みは、こうだ。まず地震が発生すると、最初にP波(縦揺れの振動)が地面を伝わっていく。これを、1300ものUSGSのセンサー・ネットワークが捉える。そのうち4つのセンサーが同時に作動すると、データ処理センターに警告を送信。そのデータが一定の基準を満たした場合、ShakeAlertシステムはより強いS波(横揺れ。被害や人的被害をもたらす場合がある)が近づいている可能性があると判断するわけだ。
それに加えてGoogleは、Androidスマートフォン1つ1つを小型の地震センサーとして活用している。これらに搭載された加速度計が地震を検知すると、そのデータと「この都市」という大まかな位置情報まで一緒に送信する。それを受けたサーバーが、収集したデータから地震が生じた場所を特定し、警告を発するという具合だ。
ストガイティス氏によると、スマホは電源に繋がれてロックされているときだけ地震波を感知するという。これによって、バッグやポケットの中で揺れ動いている状態を誤検知することを防げるわけだ。さらに長期的な目標としては、地震が生じてから、それを検知して警告を出すまでの時間をなるべく短縮することだそうだ。
人々が警告を受け取れるのは地震に襲われる直前のことだが、それでも先に認識し、備えられるということが重要だとデ・グルート氏は強調している。これまでは地震のまっただ中にいるときしか地震を感じなかったが、「揺れが来る前に何かできる」ことが新しいというのだ。
確かに数秒もあれば倒壊しそうな建物や、ガラス張りのビル(最近の超高層ビルは対策済みのものが多いが)から距離を置くこともできるだろう。さらなる進化を期待したいところだ。
- Source:Wired