ピーク時に比べると減少していた自動車盗難。しかし、2022年になって一気に増えているという。特に神奈川県では、R32GT-Rや80スープラなどの旧車盗難が激増している。
なぜ自動車盗難が2022年になって急増しているのか? どんなクルマが盗まれているのか? ここでは自動車盗難の最新状況についてお届け。
さらに、旧車の車両保険事情や盗まれないための対策、実際に盗難被害に遭われた方のお話と合わせてご紹介する。
文/加藤久美子
写真/TOYOTA、自動車盗難情報局、盗難被害者、Adobe Stock、ベストカーweb編集部、ベストカー編集部
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■自動車盗難が急増している!
警察庁の発表によって2022年1~7月は前年同期に比べ「盗難認知件数」が急増していることがわかった。2021年1~7月→2801件、2022年1~7月→3336件と、535件増加しており増加率は19.1%となる。
参考までに近年の自動車盗難認知件数は以下となる。
・2019年1~12月 7143件
・2020年1~12月 5210件
・2021年1~12月 5182件
コロナ禍で外国との往来が制限されていたこともあり、2019年は7143件だった認知件数は2020年に5210件にまで減った。2021年も2020年とほぼ変わっていない。しかしこの数字も2022年になると一気に増えてくる。1~7月でとくに多い都道府県が関東地方では以下の4府県だ。
・東京 46.4%増(69→101)
・栃木 31.6%増(152→200)
・群馬 59.8%増(82→131)
・埼玉 70.2%増(242→412)
埼玉県の1~7月412件の盗難認知件数は、千葉(429→389)や茨城(389→353)を抜いて全国トップの件数となる。
また地域では中部地方が30%増、近畿が41.1%増と多い。中部地方の中でもとくに多いのが70%増の三重県である。盗難件数が近年ふえておりそれに伴って解体ヤードの急増で2021年10月から全国5県目となる「ヤード条例」も施行されている。
しかし三重県の検挙率はいまひとつだ。2022年1~7月には63件の盗難が認知されており、検挙できたのはこのうち10件のみで検挙率は15.9%と2021年の27%よりも下がっている。ヤード条例を施行したからといってすぐに検挙率が上がるわけではないのだろう。自動車盗難は余罪や共犯者が複数になることが多いので検挙に至るまでには時間がかかるのだろう。
■どんなクルマが盗まれているのか?
盗難認知件数は警察庁のデータであるが、もう一つ日本損害保険協会が出している盗難台数のデータがある。なお、盗難認知件数とは警察に盗難届けが出された件数のことで未遂も含まれる。
一方、損保協会の盗難台数ランキングは盗難が発生しておおむね1ヵ月以上発見されず、契約している車両保険から保険金が支払われた件数のランキングである。ゆえに、車両保険を契約できる比較的新しいクルマで全般的にはやはり高級車が上位となっている。2021年は1位ランドクルーザー、2位プリウス、3位レクサスLX、4位アルファード、5位クラウン…という順位だ。
2019年、2020年、2021年の3年間を比較すると2019年の1位はプリウス、2位はランクル。2020年も同様。2021年は1位ランドクルーザー、2位プリウス、3位がレクサスLX…そして9位まで全部トヨタ&レクサスである。また2019年からの3年間でも10位までの非トヨタ車は2019年10位のヴェゼル(ホンダ)だけ。
盗難手口として急増しているCANインベーダーが「トヨタ・レクサス車で有効な仕様になっている」という事情もあるだろう。
世界的で人気が高い車種でもあるゆえに、盗難市場での需要も高い。トヨタ車が多く盗まれるのも無理はない。
なお、盗難による車両保険支払い件数は2019年3800台、2020年2964台、2021年2425台と減少傾向にあるが、1件あたりの支払保険金額は2019年208.0万円、2020年225.7万円、2021年236.9万円と年々高額になっている。
これに対して、警察庁が発表する「盗難認知件数」は車両保険の支払いなどは関係ない。盗難の被害届が出された(受理された)台数となる。上位5車については車名や台数、盗難率が公表されているので、以下参考にしてみてほしい。
こちらは2020年および2021年中における自動車盗難データを関連資料から抽出し、盗難台数が多い5車種(通称名)について盗難台数及び盗難率を算出したもの。
注目すべきはSUVやワンボックスの盗難が増加していること。上位5車のうちプリウス以外はすべて盗難台数も盗難率も前年プラスとなっている。
■旧車スポーツカーも条件が揃えば中古車相場と同額の車両保険がつけられる!
車両保険の話が出てきたので、ここで旧車の車両保険について少し紹介しておきたい。旧車は車両保険を付ける条件が厳しい。新規での契約はダイレクト型の場合、車種に関わらずほとんどの保険会社で却下されると思っていい。
しかし、代理店型なら旧車でも車両保険を新規で付けられる場合もある。
・鍵付き、シャッター付きのガレージに保管している
・車両のメンテナンス状態が良い。大きな傷や損傷個所などがなくきれいに保たれている
・これまで保険金の支払いで怪しい履歴がない。
・保険代理店との信頼関係が築かれている
このように条件が揃えば旧車も中古車相場と同じ額の車両保険を付けることができる。つまり、同じ10万km走行のスカイライン32GT-Rでも、50万円しか付けられない場合もあれば、相場を考慮して800万円の車両保険がつけられる場合もあるということだ。
とはいえ、一番いいのは盗まれないことである。盗まれないための有効な対策をすることが最良の選択である。
しかし実際、自動車盗難情報局に登録されている旧車の盗難状況を見てみると、盗難対策は「特になし」「施錠のみ」というケースが目立つ。盗難対策ありの場合もタイヤロックやハンドルロック、バッテリーを外す、ハンドルを外すなど簡易な対策が大半だ。これらの簡易的な対策は4~5分の時間稼ぎにはなる程度で根本的な盗難防止にはならない。
窃盗団は入念に下見をするので対象車のセキュリティ状態をしっかり確認してバッテリーやハンドルが外されていればそのクルマに合うものを持参して盗みに来る。
大切な旧車を絶対に盗まれないためには、20万~30万円かけて誤報のないゴルゴやパンテーラなどの国産セキュリティを技術力の高いプロショップでつけるのが筆者は一番だと思う。
ただし、あまり乗らない場合はバッテリー保護のために自動的に一定期間でセキュリティの電源が切れる場合がある。そのあたりの説明や対策もしっかりしてくれるショップを選んで欲しい。また、昨今の盗難で発見例が相次いでいるアップル社エアタグや移動を検知するGPSを仕込んでおくのも有効だ。