創設2年目を迎えた南半球のリージョン選手権、TCRサウスアメリカ・シリーズの最終戦が10月8~9日にアルゼンチンのサン・フアンで開催され、前戦ブエノスアイレスで実戦わずか2戦目ながらポール・トゥ・ウインでのシリーズ初優勝を飾った新型『トヨタ・カローラGRS TCR』が、引き続き“実力どおりの直球勝負”となるレース1を制覇し、連勝を記録した。
新型TCRマシン開発を託された18歳の新鋭ホルヘ・バリオは、続くレース2でも肉弾戦を演じてペナルティ裁定を受けつつも3位に喰い込み、この南米発のモデルに高い戦闘力が秘められていることを示した。
コロナ禍突入前に新設されたトラック、エル・ビリクムで開催された第8戦の週末は、FP1から今季のポイントリーダーであるファブリツィオ・ペッツィーニの僚友、ホセ-マニュエル・サパーグ(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)が立て続けにエンジンを壊す波乱で幕を開けた。
タイトル候補のスペアエンジンを温存するべく、これで最終戦の週末から撤退の憂き目となったサパーグと同様、地元の人気ツーリングカー選手権TC2000(旧スーパーTC2000)で今季もタイトル候補として戦うベルナルド・ラヴァー(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が、シリーズレギュラーのアルセウ・フェルドマンから引き継いだマシンでFP2の最速を刻むと、そのままQ1でもトップタイムをマーク。その背後に、同じくSTC2000の若手有望株として活躍を演じるバリオのカローラが続く展開となる。
しかしQ2では意地を見せた選手権首位ペッツィーニが、シーズンフィナーレでの戴冠に向けポールポジションを死守。フロントロウにもブラジル代表として今季のFIAモータースポーツ・ゲームス参戦が決まった実力者、ラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が続き、直前のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)改訂で最低地上高が80mmから70mmに改められたカローラは、わずかに0.083秒差で及ばず。2列目3番手からの勝負となった。
明けた日曜現地午前9時にスタートが切られたレース1は、スタートでペッツィーニがリードを維持し、その背後にいたTOYOTA GAZOO Racingラテンアメリカのカローラが、レイスのクプラを捉えて早々に2番手へと浮上する。さらに初参戦ラヴァーもチームメイトをパスして3番手に追随してくる。
■ポールシッターのペッツィーニが4位で今季タイトルを確定させる
その直後、後続でクラッシュが発生してセーフティカー(SC)が導入されると、3周目のリスタートからバリオがチャージを開始。背後のラヴァーも絡んだ横並びの勝負が続くと、その重圧に耐え兼ねたか、7周目にはブレーキングが遅れてワイドになったポイントリーダーが首位から陥落。バリオのカローラに続き、ラヴァー、レイスのクプラもトップ3へと進出する。
その後、9周目にも2番手、3番手のポジションが入れ替わったものの、首位バリオのポジションを脅かす存在は現れず。12周を走破した『トヨタ・カローラGRS TCR』が前戦に続くレース1勝利を獲得し、ポディウムの両脇をW2プロGPのふたりが固める結果となった。
一方、その表彰台背後ではポールシッターのペッツィーニが4位に滑り込み、この瞬間、2022年のドライバーズタイトル獲得を決めることとなった。
「本当にチームには感謝しかない。彼らはすべてを正しく実行し、僕にタイトルをプレゼントしてくれた。昨年から自分が素晴らしいクルマを持っていることはわかっていたが、それ以上に、彼らは素晴らしい仕事の規律を持っており、ほとんどミスを犯さないんだ」と、チームの貢献に感謝の言葉を述べた新王者ペッツィーニ。
これでタイトル確定後の総力戦と化した今季最終ヒートのレース2は、リバースグリッド後方からスタートしたバリオのカローラと、TCR本格デビューのラヴァーがレース終盤に向け上位進出を果たす展開に。さらに9周目には、3番手争いを展開していたペッツィーニが他車からの衝突でふたたびのSCが導入される。
このリスタートから激しい首位攻防を展開したラヴァーとバリオは、14周目にミスを犯したクプラの隙を見逃さず、バリオが首位に浮上する。しかし、ここで諦めなかったラヴァーはサイド・バイ・サイドで追い縋ると、ディフェンスラインが昂じてカローラがクプラに接触。ここで漁夫の利を得たのが3番手にいたファン-アンヘル・ロッソ(スクーデリア・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)で、2番手バリオに0.273秒差、3番手ラヴァーに0.885秒差と団子状態でトップチェッカーをくぐることに。
さらにレース後、スチュワードはバリオの接触行為に1秒加算のタイムペナルティを科し、トップ3はホンダ、クプラ、トヨタの最終結果となった。