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よく考えると…なぜ? これ合法?? クルーズコントロールが制限速度以上に設定できる理由となるほどな事情

 現在、運転支援技術のひとつとして普及が進んでいる、アダプティブクルーズコントロール(追従型クルーズコントロール、以下ACC)。設定できる速度は115km/hが一般的ですが、最近は国産モデルでも135km/hや180km/hに設定できるモデルが登場しています。

 しかし日本の高速道路は、決められた最高速度がもっとも高い場所でも120km/h。135km/hや180km/hがACCで設定できてしまうことは、疑問でもあります。なぜACCの速度設定は、実際には使わないような車速まで対応しているのでしょうか。その理由について考えてみました。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ARVD73
写真:Adobe Stock、写真AC

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ACCは安全面でも有効な運転支援技術

 近年、多くのクルマに採用されている運転支援技術のひとつであるACC。設定した車速を保って走行できるだけでなく、前走車がいる場合は、高速走行でも渋滞走行でも、適正な車間距離を確保しながら、自動的に車速を調整して安全に追従走行してくれます。

 ACC作動中は、基本的にはアクセル/ブレーキによる車速調整が不要となるため、ドライバーの疲労軽減につながりますし、ヒューマンエラーを防ぐことができることから、安全面でも有効です。無駄なアクセル/ブレーキ操作が減るので、燃費向上にも貢献します。

 そんなメリットの多いACCですが、本稿で注目したいのは、ACCの上限設定速度が、日本の高速道路の法定最高速度である100km/hや120km/hよりも高く設定できること。なぜ、実際には使うことがない高い車速まで設定しているのでしょうか。

近年は多くのクルマで採用が進むACC。設定した一定の車速で走行することができ、前走車がいる場合は、適正な車間距離を確保しながら、自動で車速を調整して安全に追従走行する(PHOTO:Adobe Stock_ utah51)

スピードメーターの表示速度は、実際の車速よりもちょっと高い

 スピードメーターで表示される速度は、実際にクルマが走行している速度とは、すこし乖離があります。スピードメーターの表示値は、車輪速センサーで計測したタイヤの回転速度とタイヤの外周から算出しています。センサー自体の精度は高いのですが、タイヤ外周の変化、具体的には空気圧不足やタイヤ表面の摩耗などによって誤差が発生してしまうのです。たとえば、空気圧低下で外周が1%減ったとすると、実際の車速はメーターの指示値より1%ほど下がることになります。

 このようなことを踏まえて、スピードメーターの表示値と実際の車速との誤差については、道路運送車両法の保安基準で規定され、スピードメーターの誤差範囲は、次の式で定められています。

10(V1-6)/11 ≦ V2 ≦ (100/94)V1
V1:スピードメーターの表示速度、V2:実際の車速

 この定義によると、スピードメーター 100km/hの指示値は、実際の車速で85.5km/h~106.48km/hの範囲に収まらなくてはいけません。誤差規定のポイントは、スピードメーターの指示値は、多くの場合実際の車速よりやや高めに表示しやすい、言い換えると高めに表示することを推奨しているのです。

 これは、ドライバーの認識以上に実際の車速が出ることによって起こる交通事故を防ぐため。また、スピード違反で検挙された場合に、メーターの表示値に従って決められた速度の範囲で走行していたと主張するドライバーとのトラブルを回避する狙いもあるようです。

115km/hの設定は、誤差を考慮したもの

 2010年ごろまでの国産車は、冒頭でも触れたように大半がACC上限速度115km/hに設定されていましたが、これは国内メーカーの自主規制によるものであり、前述したスピードメーターの誤差を考慮したものでした。

 ACCの上限速度を115km/hに設定した場合、先の誤差基準の式[10(V1-6)/11 ≦ V2(実際の車速) ≦ (100/94)V1]に当てはめると、スピードメーターの許容誤差範囲は、99.1km/h ≦ V2 ≦ 122.3km/h となります。すなわち、ACCを115km/hに設定すると、最大の誤差でギリギリ法定最高速度の100km/hを下回る。また多くの場合、実際の車速はACC上限速度115km/hより低いので、100km/hを大きく超える可能性は低い、許容範囲という判断をしていたのです。

 以上は、国内に限った話なので、輸入車は対象外です。輸入車の多くは、上限速度が180km/hか、それ以上というのが一般的であり、世界標準に対して、日本車はACCの使える範囲が狭いという状況になっているのです。

高速道路の法定最高速度引き上げの動きに対応するもの

 2020年12月には、新東名の静岡区間の一部で、そして2022年10月には東北道の一部区間で、最高速度が120km/hまで引き上げられるなど、日本でも高速道路の法定最高速度が引き上げられつつあります。

 高速道路を120km/hで走行できるようになると、上限設定速度115km/hのままでは十分な機能が発揮できなくなります。昨今の新型車でACCの上限設定速度が135km/hのモデルが増えてきたのは、この高速道路の法定最高速度引き上げの動きに対応するもの。「135km/h」というのは、先の誤差基準式に準じて余裕も持たせた設定で、スバルの「レヴォーグ」や「WRX」、日産の「スカイライン」、軽でもホンダ「N-WGN」は、上限を135km/hまで引き上げています。

 さらに、「レクサスLC」やトヨタ「カムリ」、マツダ「CX-8」は、上限を180km/hに設定しています。180km/hまで上げると、さすがに日本で使う機会はまずありませんが、日本車であってもほとんどのクルマは、海外への輸出を視野に入れて開発されています。そのため、海外のライバルメーカーに負けないような高速走行の性能を確保することは重要。海外のクルマの多くが、上限設定速度180km/hを超えている以上、使う機会がなくても日本車も同等以上にして、国際標準に合致させる、という自動車メーカーの考え方で決めているものと考えられます。

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 たとえ法律で許されない性能が発揮できるとしても、機能として持つことは違法ではありません。カタログの最高速度が日本の法定最高速度を大きく上回るのも同じで、クルマに制限をかけるのではなく、ドライバーの自主性に任せる、最終的に責任を負うのはドライバー自身である、というのが一般的な考え方なのです。

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