11月9日(水)、バーレーン・インターナショナル・サーキットは、WEC世界耐久選手権第6戦『バーレーン8時間』レースの走行前日を迎えた。いよいよ2022年最終戦、すべてのタイトルが決する舞台とあってパドックの緊張感は高まりつつあるようだが、水曜日のサーキットでは関係者が皆、空を見上げていたという。
そんなバーレーンから、走行前日に得られた各種トピックスをお届けする。すでに来季に向けても、いろいろと動き出しているようだ。
■サーキットに響く轟音の正体
WECのシーズンファイナルに向けたイベント準備は、ジェットエンジンの轟音をバックにして行われた。戦闘機が曲芸飛行などを披露する『バーレーン国際航空ショー』が行われているためだ。
今年で10回目を迎えるこのショーは、バーレーン・インターナショナル・サーキットの真東に位置するサクヒール空軍基地で行われている。
アラブ首長国連邦やイギリス空軍の展示機、アメリカ空軍のF16、ガルフ・エアのボーイング787-9ドリームライナーなどがサーキット近くを飛行し、ドライバーを含むパドック関係者が空を見上げる姿が見られた。
この航空ショーは水曜、木曜、金曜に開催される。
■エンジニア移籍に伴う体制変更
ハイパーカークラスに参戦するトヨタGAZOOレーシングは、8号車GR010ハイブリッドのレースエンジニアを務めていたヤコブ・アンドレアセンがユナイテッド・オートスポーツへと移籍してから初めてのレースとなる今週末、エンジニアの入れ替えを行った。
アンドレアセンが担当していた8号車には車両オペレーションマネジャーのマシュー・ガロッシュが就き、7号車のレースエンジニアはマルコ・フーガが引き続き務める。
なお、8号車のセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮は、アルピーヌ・エルフ・チームのニコラ・ラピエール/マシュー・バキシビエール/アンドレ・ネグラオと同点で首位に並び、ドライバーズ選手権を争う重要な一戦を迎えている。
ブエミは次のように語った。「理想的な状況ではないと言わざるを得ないが、(マシューは)とても経験豊富で、すべてを知っている。僕らは彼を知っているし、大丈夫だろう」。
■2023年、トヨタのリザーブドライバーは誰に?
トヨタのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、前戦富士6時間レースでの7号車と8号車のパフォーマンスギャップは、天候による「独特な」セットアップの違いであり、レース中に予想以上に気温が上がったことで7号車がより「オーバーステア要因」となったことが原因であると明かした。
また、バセロンは来年のル・マン24時間レースに3台目のGR010ハイブリッドを投入する可能性を否定している。
トヨタの2023年のドライバーラインアップについては、1月にアナウンスされる予定だ。テスト兼リザーブドライバーであるニック・デ・フリースがF1世界選手権に参戦することから、このポジションは変更されることになりそうだ。
「(トヨタ)ファミリーの一員」であるセバスチャン・オジエがリザーブドライバーになる可能性はあるかと尋ねられたバセロンは、次のように答えている。
「この種の答えは1月の初めに出されるだろう」
■LMP1も“最終戦”。TFスポーツは来季体制を確定か
今回のバーレーン8時間レースは、LMP1マシンにとって最後のWECレースとなる。
トヨタとタイトルを争うアルピーヌA480・ギブソンは来季、LMHおよびLMDhに対する新規則適用免除の対象外となるためだ。2012年以降のWECでは、すべてのレースで少なくとも1台のLMP1マシンがグリッドに着いてきた。
2023年から、LMP2マシンおよびパーツの価格は、IMF国際通貨基金がG7諸国に対して表明しているインフレ率に連動、または自動的に連動することになる。WECはそのレートを各チームに通知することになる。現在、IMFのインフレ率は7.2%である。
LMGTEアマクラスに参戦するTFスポーツは、来季も2台のアストンマーティン・バンテージAMRを使用する予定だ。チームのボスであるトム・フェリエは、コルベット・レーシングに移籍するブロンズドライバーのベン・キーティングに代わるライアップを確定したことを示唆した。
なお、TFスポーツは今回のバーレーンでは、富士で走らせたアストンマーティンでGTEアマ選手権の獲得を目指す。富士から走っているマシンは、第4戦モンツァでエンリケ・シャベスが起こしたエアボーン・クラッシュにより破損したシャシーを、後日交換したものだった。モンツァでクラッシュした車両は現在、完全に修復されていることが分かっている。
■火曜日の出産に備え、サーキットを離脱へ
LMGTEプロクラスでコルベット・レーシングのシボレー・コルベットC8.Rをドライブするトミー・ミルナーは、妻が火曜日に第2子を出産予定であるため、土曜日のレース終了後すぐにバーレーンを発つ予定だ。
ミルナーは当初、決勝翌日に行われるルーキーテストに参加する予定だったというが、チームメイトのニック・タンディが代わりにテストでステアリングを握るという。
■2台の車両でテストを進めるフェラーリ499P
2023年のハイパーカークラスに参戦するフェラーリは、その新型車両499Pを発表したイベント『フィナーリ・モンディアリ』の翌日、イモラ・サーキットで何周かのフィルミング(撮影)ラップを完了した。
フェラーリは、フィナーリ・モンディアリとWECバーレーン戦の間にはテストを行っていないが、年末までにさらに多くの走行が計画されている。
フェラーリ499Pのこれまでのテストプログラムのほとんどでは、2台の車両が使用されており、各車には異なる課題が割り当てられている。
テクニカル ディレクターのフェルディナンド・カニッツォは「2台のフェラーリ499Pで開発プログラムを構成し、1台はパフォーマンスに、もう1台は信頼性に焦点を当てた」と語っている。
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WEC第6戦バーレーン8時間レースの走行初日となる11月10日(木)には、90分間のフリープラクティスが2回、予定されている。FP1は現地時間12時15分(日本時間18時15分)から、FP2は17時30分(同23時30分)から、セッションが開始される。