11月5日、三重県の鈴鹿サーキットで一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)は、2023年から全日本ロードレース選手権JSB1000クラスでカーボンニュートラル・フューエル(CNF/バイオマス由来の非化石燃料)を導入することを発表した。ところが、走行テストはまだ行われておらずエントラントからは不安の声が上がっている状態であるため、この燃料についての特性をMFJに聞いてみた。
世界的に多くのモータースポーツでカーボンニュートラルに向け動き出しており、100%非化石由来の燃料を使用するのは、WRCが2022年から、F1が2026年から、MotoGPが2027年からとなっている。ところが、日本で行われるスーパーGTと全日本ロードJSB1000で2023年と早期に導入されることになった。
全日本ロードではハルターマン・カーレス・ジャパン社がサプライヤーを務め、『ETS Racing Fuels』の『RenewaBlaze』というレース燃料のなかから『ETS Renewablaze NIHON R100』がチョイスされた。スーパーGTでも同メーカーの燃料が使用されるが、完全に同一の性質をもつ燃料ではないという。
スーパーGTでは11月7日に、GT500クラスは13チーム、GT300は10チームが参加した初のテストが4時間行われ、マシントラブルは見られなかったようだ。とはいうものの、全日本ロード側はその燃料を入れたバイクのテスト走行や現物も確認できていないため、新燃料導入への不安、エンジンやマシントラブルの懸念などの声がエントラントから上がっている。
MFJの鈴木哲夫会長にエンジンが壊れる可能性があるか尋ねると「全くない」と語った。というのも、JISが定めている自動車ガソリンの要求品質(JIS K 2202:2012)に則った特性に仕上げられているからだ。
この新燃料はガソリンと置き換えで使用できることを条件に開発されたため、マシンにリスクはないという。会見ではECUの調整が少し必要になると説明されていたが、それも大きな問題は起きないという。
例を挙げると、今年は全日本ロードではサーキットで販売されるガソリン、EWCの鈴鹿8耐ではPANTA OILのレース燃料が使用された。全日本組は鈴鹿8耐の週末はマシンの出力や燃費が少し変わったというコメントをしていたが、新しく導入されるカーボンニュートラル・フューエルもその程度の違いであり、最適に走らせるために細かな合わせ込みが必要になることが出てくる程度のようだ。
そのため、化石燃料(ガソリン)ではなく、全く新しい燃料だからといって大きな違いはないということだ。そのため、全日本ロード鈴鹿2&4での鈴鹿8耐トライアウトの参加者もその燃料を使用する必要があるが、こちらにも大きな心配はないという考えだ。
また、スーパーGTでのテストでは匂いのキツさが問題に上がったが、全日本ロードの燃料は匂いはできるだけ消えるように要望が出されている。そして全日本ロードでのテストは日程は決まっていないが、参加希望者にはオフシーズンにテストが用意される。
しかし、デメリットは金額面で、レースウイークに約2万円だった燃料代が、倍の約4万円に膨れ上がることが挙げられている。環境への配慮などの取り組みは今後も切り離せない問題となってくるだろうし、一般にも流通するほど生産されれば価格も下がってくるだろう。