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「日本の代表的高級車=クラウン」を取り戻せるか 新型クラウンが目指した走りと強力ライバル

 先日の新型クラウンクロスオーバーRSの試乗では、見た目からは想像がつかない走りを体感することができた。格上の世界のラグジュアリーメーカーのモデルにも勝る出来栄えであり、これこそが新型クラウンクロスオーバーの真骨頂だと感じた。

 新型クラウンクロスオーバーに設定されている、2.5Lハイブリッドと2.4Lターボハイブリッド、どちらも試乗したことで、新型クラウンとしては、まだセダン・スポーツ・エステートが残されているものの、クロスオーバーが目指すビジョンやライバルなどはみえてきたように思う。はたしてクラウンは、「いつかはクラウン」から、「Discover your CROWN」となったことで、目指す先は変わったのだろうか。 

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、MAZDA、Mercedes-Benz、BMW、VOLVO、ベストカーWEB編集部/撮影:奥隅圭之

【画像ギャラリー】これこそが新型クラウンのライバルだ!! 新型クラウンクロスオーバーRSに試乗してわかった、新型クラウンが目指すライバルたち(15枚)画像ギャラリー

2.5L HVと2.4LターボHVでライバルは異なる

 エンジン横置きFFベースの改良型GA-Kプラットフォームに、リフトアップしたセダンボディというスタイリング、後輪モーター駆動の4WDでDRS(後輪操舵)は標準装備、全モデルハイブリッド、というキャッチーなアイテムがいくつも投入された新生クラウンクロスオーバー。最上級グレード「RS」では、システム最高出力が257kW(349ps)にもなるデュアルブーストハイブリッドが搭載されている。

 スペックだけ見ていても、実際に乗ってみるまで、どんなクルマなのかまったく想像つかなかったのだが、2.5Lハイブリッド/2.4Lターボハイブリッドそれぞれで、多様なシーンを走行させていただいたことで、新型クラウンクロスオーバーの全貌がようやくみえてきた。

 走りについての詳細はここでは割愛するが、走ることが好きな方であれば、一度乗ってしまうと2.4Lターボハイブリッドしか選べなくなるだろう。逆に、そこまで走りは不要で、最新デザインで優雅にドライブを楽しみたいという方であれば、22.6km/Lの超低燃費をたたき出す2.5Lハイブリッドという選択肢は大いにアリだ。

左がCROSSOVER G 「Advanced Leather Package」、右がCROSSOVER RS「Advanced」。見た目は同じだが、キャラクタは全く異なる

2.5L HVのライバルは「ハリアー」

 新型クラウンクロスオーバーの2.5Lハイブリッド(「X」と「G」)は税込435~570万円、一方2.4Lターボハイブリッド(RS)は税込605~640万円。両者の間には(最上級グレードでの比較で)約70万円もの差があり、走りのキャラクタも全く違うことから、2.5Lハイブリッドと2.4Lターボハイブリッドとでは、ライバルも変わってくると思われる。

 2.5Lハイブリッドのライバルは、車両スペックや価格帯、知名度などから考えると、ハリアーハイブリッド(G:433万円、PHEV:620万円)やエクストレイルe-4ORCE(G:449万円~)、マツダCX-60ディーゼルハイブリッド(505万円~)といった、国産クロスオーバーSUVの上級グレードではないかと考えられる。

 なかでもガチライバルとなるのは、身内である「ハリアー」のハイブリッドだろう。ハリアーの背が低く、フロントからリアへと流れるようなデザインは、非常にスタイリッシュで、クロスオーバーSUVの見本ともいえる。なかでもPHEVモデルの走りには期待でき(RAV4PHVの試乗から推測)、新型クラウンクロスオーバー2.5Lハイブリッドにとっては最大の敵となるはずだ。

2.4L ターボHVのライバルは「Eクラス」「5シリーズ」「V90」

 一方の2.4Lターボハイブリッドのライバルは、600万円以上(フル装備だと750万円オーバー)という価格とボディサイズを考慮すると、高級輸入車となるだろう。海外市場へ出た際には、強敵が出そろうEセグのラグジュアリー界隈で戦うことになる。

 日本で購入できるEセグのラグジュアリーは、メルセデスベンツE200ステーションワゴン(920万円~)、BMW523dツーリング(853万円~)、ボルボV90 B5(884万円~)などだが、いずれも価格帯が100~200万円ほど上であり、パワートレインや基本装備(4WDや後輪操舵など)などを同等にすると、余裕で1000万円オーバーとなる。

 それらと比べれば、圧倒的にコスパがいい新型クラウンクロスオーバー2.4L ターボHVだが、ただそのぶん、新型クラウンクロスオーバーは最上級グレードであっても、インテリアの質感がこれら高級輸入車のレベルには全く追い付いていない。走行性能については、これらと同等以上だといえるが、「価格の安さをとるか、インテリアの質感をとるか」ということになりそうだ。

クラウンが見据えるのは「世界のラグジュアリーメーカーのモデルたち」

 「いつかはクラウン」は、1970年代から1980年代の著しい経済成長によって豊かになった日本で、日本人のひとつのステータスとして掲げられたフレーズだ。この「いつかはクラウン」以降も、クラウンのキャッチコピーは、日本人エンジニアが、日本の顧客が欲しいモデルを提供する、という意味が込められたフレーズだった。12代目の「ゼロクラウン」も、これまでのクラウンのイメージを知っている日本人へ向けたフレーズだ。

 ただ、今作の「Discover your CROWN」は、世界に向けて発信したフレーズだ。「4つのモデルからお気に入りを探してください」というメッセージだが、ここにこれまでのクラウンの歴史や、日本人に向けたメッセージといった要素は一切ない。これまで海外では限定的な販売だったクラウンも、今作から世界約40カ国で販売されることとなり、いよいよ世界の荒波にさらされることになる。新型クラウンが見据えるのは、世界のラグジュアリーメーカーのモデルたち。そこには、後悔するほどの強敵と、それらを崇拝する顧客が多くいる。

 トヨタブランドは世界中で有名だが、クラウンは、(中国を除く)海外ではほとんど知られていない。「Discover your CROWN」の「お気に入りを探して」という意味の中には、「(お気に入りを探すことで)クラウンを知ってください」という意味もこめられているのだろう。日本では、70年近くもの歴史をもつ名門「クラウン」だが、その歴史を引っさげることもなく、また自らを卑下することもなく、グローバルへの船出のキャッチコピーとして、いいキャッチコピーだと思う。

 新型クラウンクロスオーバーは、特に2.4Lターボハイブリッドの出来が素晴らしく、世界のラグジュアリーメーカーのモデルとも堂々と戦える仕上がりだ。この新型クラウンクロスオーバーを知った海外がどのような反応をみせるのか、日本が誇る名門「クラウン」が海外で活躍する日が非常に楽しみだ。

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