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「ホンダ・スピリット」は消えない これが新時代への回答か 評論家3名が感じた「新型シビックe:HEV」のモノスゴさ

 現行のFL型シビックは2021年8月に登場。CVTモデルと6MTモデルで販売をスタートした。それから約11カ月後の今年7月1日、ハイブリッドのe:HEVモデルが登場した。

 141ps/18.6kgmを発生する2L、NAエンジンに2モーターを組み合わせる。モーターのスペックは184ps/32.1kgmと高く、軽快な走りを実現する。静粛性、ハンドリングなどの基本性能は高く、ハイレベルでスポーティな1台へと仕上がっている。ホンダは北米市場をこのシビックで席巻するつもりだ。

 今回、国沢光宏、斎藤聡、松田秀士、3人の評論家は、このニューモデルをどう評価するのか?

※本稿は2022年8月のものです
文/国沢光宏、斎藤 聡、松田秀士、写真/HONDA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年9月10日号

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■「厳しい規制にも対応可能なエンジンなのにパワフルに感じられるのが凄い!!」(国沢光宏)

ホンダ シビックe:HEV。装着タイヤはミシュランパイロットスポーツ4S

 このクルマが持つ“本当の凄さ”について理解している人は多くない。

 おそらく多くの試乗レポートを読むと動力性能について高く評価していると思う。

 実際どうかとなれば、絶対的な出力やハイブリッドシステムによる車重の増加もあって1500ccターボエンジンを搭載するモデルに届かない。

 ただ、アクセルレスポンスなどは従来のホンダ製ハイブリッドより着実に進化しており、普段使いでは元気よく走ってくれます。というかパワフルになったと思えるほど、よくできている。

 凄さとは何か? このエンジン、やがて施行されると言われている次世代の厳しい厳しい排気ガス規制『ユーロ7』に対応できるようだ。

 ユーロ7の詳細は最終決定していないものの「どんな使用状況であっても二酸化炭素を除き大気レベルのエミッションをキープしなければならない」というもの。

 例えば、冷間時どんなに寒くても始動直後からエミッションなし。トレーラー引っ張ってアクセル全開で坂を登ってもエミッションなし。これ、超難しい。

 はたまた同じ頃に騒音規制「フェーズ3」も施行されるため、エンジン音だって極めて小さくないとダメ。当然ながら燃費は普通に走って25km/L程度が要求される。

 そいつをすべてクリアできるメドがついているというのだから素晴らしい! おそらく世界で初めてだと思う。

 そんなエンジンが、むしろパワフルに感じるように走れてしまうのだから、ぶったまげた。

 繰り返す。このユニットは電気自動車の時代になるまで生き延びるということです。

●国沢光宏の採点表
・ハンドリング:9点
・加速性能:6点
・静粛性:9点
・内外装の質感:8点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:6点

(TEXT/国沢光宏)

■「まるで8速ATのようなフィーリングのこれまでにないパワーユニット制御だ!!」(斎藤 聡)

エンジンは新開発の直噴2L、4気筒を搭載。モーターはアコードと同じ仕様

 シビックe:HEVは、ゴリゴリのハイブリッド車なのに、そこをあえて売りにしないで、まるで上質な乗用車に乗っているかのような不思議なドライブ感覚を持ったクルマだと思います。

 興味深く感じたのは、アクセルを深く踏みこんで強い加速をしようとすると、エンジンがまるでシフトアップしていくかのようにエンジン回転が上下することです。

 しかもこれが笑ってしまうくらいリアルで、山道を走らせてみると、あえてモーターの加速感にも段差をつけて、まるでエンジン車に乗っているかのような錯覚に陥るほど。

 そんな具合に徹底してパワーユニットを制御しているからモーターの気配が希薄で、慣れ親しんだエンジン車+7〜8速ATの感覚があります。

 で、実際の走りはというとEVならではの分厚い低速トルクが、力強さや余裕のある走り(加速)を支えているので、貧弱さや非力さはまったくありません。

 それどころか滑らかで上質ささえあります。

 ちょっとボディは重いのですが、その重さも逆手に取ってしっとりしたサルーン風味の上質な乗り心地を演出している気配さえあります。

 EVに大きく舵を切ったホンダですが、パワーユニットに関しては単純にモーターに切り替えるという考えではないように感じました。

 誰が運転しても違和感がなく、モーターでもエンジンでもない、あるいはいずれとも取れるような、これまでにないパワーユニットに感じました。

 来るべき未来に向けてホンダのさまざまな思いを詰め込んだクルマが、シビックe:HEVであるような印象を持ちました。

●斎藤 聡の採点表
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・静粛性:9点
・内外装の質感:6点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:8点

(TEXT/斎藤 聡)

■「どんどんコーナリングが楽しくなる!! ホンダのスポーツ魂が宿る1台だ」(松田秀士)

水平基調のインストルメントパネルはゴテゴテしさはいっさいなく、シンプルで美しい。操作もしやすい

 1983年に当時のスーパーシビックレースで4輪レースデビューしたボクにとってシビックは特別なモデルだ。

 しかも今年はシビック誕生から50周年のメモリアルイヤー。F1を撤退したホンダに今問われているのはスポーツ魂ではないだろうか? そんな思いでステアリングを握った。

 まず、サスペンションが硬くなっている。

 これまでのホンダのサスペンションの方向性はソフトでストロークを重要視するものだった。ところが今回は明らかに硬い。

 ストロークもこれまでほどはない。

 ただ意外にも乗り心地はそれほど悪くない。

 それは、サスペンションストロークは短くなったが、決してオーバーシュートせず余計なバウンシングやピッチングがないから。路面の突起で跳ねることもない。

 例えばスラロームでステアリングを切り込んでから逆方向に操舵する瞬間のニュートラル位置を通過する時、クルマの姿勢がデフォルトに戻っているのだ。その際の揺り戻しなど皆無。

 だからレーンチェンジやコーナーからの立ち上がりで、その前のヨーやロールを引きずらず、すぐさま次のアクションに移る準備が整っている。

 まさに路面に張り付いたようなフィーリング。

 減衰力可変ダンパーなど使わず、コンベンショナルなショックアブソーバーで、ここまでセットアップしたことは高く評価できる。

 さらにアコードからキャリーオーバーした2Lエンジンの採用でe:HEVの力感も厚くなり、特にスポーツモードでの走りがアグレッシブ!

 新型シビックe:HEVにはホンダ開発陣のスポーツ魂が宿っていると感じた試乗だった。

●松田秀士の採点表
・ハンドリング:9点
・加速性能:8点
・静粛性:8点
・内外装の質感:8点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:6.5点

(TEXT/松田秀士)

●ホンダシビックe:HEV 主要諸元
・全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm
・ホイールベース:2735mm
・車重:1460kg
・最低地上高:135mm
・最小回転半径:5.7m
・エンジン:直4DOHC、1993cc
・最高出力:141ps/6000rpm
・最大トルク:18.6kgm/4500rpm
・モーター:184ps/32.1kgm
・WLTCモード燃費:24.2km/L
・価格:394万200円

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