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 2022年6月にモデルチェンジを行った新型シエンタ。販売は絶好調で、選べるグレードを制限することで、円滑な納車を狙う戦略を採用しているほどだ。

 先代シエンタは「隈取」デザインが特徴的だったが、新型では欧州車を思わせるような雰囲気を漂わせている。

 そこで先代シエンタのオーナーでもあった清水草一氏に、新型シエンタのデザインの魅力を聞いた。

文/清水草一、写真/ベストカー編集部、TOYOTA

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■先代シエンタの元オーナー、清水草一氏が新型シエンタを語る!

2022年8月に登場した新型トヨタ シエンタ。そのデザインは清水氏も絶賛!

 2022年8月23日に発売された新型シエンタの受注が絶好調だ。ボディ骨格には軽量低重心高剛性なTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用し、1.5ガソリン、1.5バイブリッドともに高効率な3気筒に変更して、パワートレインも一新。サイズは先代とほぼ変わらず、5ナンバーを維持している。

 これだけでも人気爆発は予見できるが、新型シエンタはデザインもスバラシイ。テイストとしては、「トヨタ製シトロエン」と私が呼んだ先代の正常進化形だが、魅力度はさらに増している。

 なにせ私は、先代シエンタの元オーナー。シエンタを選んだ最大の理由はデザインにあった。そのデザインが正常進化してさらにステキになったのだから、思わず「欲しい!」と思ってしまいました。

 先代シエンタのデザインは、前述のように和製シトロエンだったわけだが、シトロエンの特定のモデルにソックリというわけではなく、ポップで自由でアバンギャルドな雰囲気が、シトロエン的に感じただけ。

 ヘッドライトの隈取りは歌舞伎役者のようで、19世紀末のフランスを席巻したジャポニズム風と言えなくもなかった。

 思えば初代シエンタのデザインは、思い切り庶民的で生活感満点。便利で気取らず乗れるおふくろの味ではあったが、その内外装からは、オシャレな生活は微塵も予感させなかった。

 私は以前から、「日本の小型車は、イタフラの小型車をお手本にすべきだ。お金をかけなくても、センスでオシャレは実現できる!」と唱えていたが、それが出た! しかもトヨタから! と感激し、思わず買ってしまったのである。

■イタフラデザインのいいとこ取り!

清水氏が「和製イタフラミックスデザイン」と評した新型トヨタ シエンタ

 そして新型シエンタのデザインは、和製シトロエンから一歩進んで、「和製イタフラミックスデザイン」になっている。

 ヘッドライトの隈取りは微妙に残され、シエンタであることを主張しているが、その顔つきやスペース性は、先代ルノー・カングーを思わせる。

 カングーは、日本で最も人気のあるフランス車だが、その気取らないオシャレ感が新型シエンタには感じられる。あくまで「どこか似ている」程度というのがイイ。顔に関しては、同じルノーのトゥインゴにも若干似た雰囲気がある。

 サイドビューは、現行フィアットパンダにかなり酷似している。特にリアクォーターガラスの上下幅が狭まった部分や、サイドプロテクターの形状はソックリと言っていい。サイドだけでなく、顔つきもかなり似ている。

 ただ、フォルムを見比べると、シエンタはリヤに行くほどボディ断面がふくらんでいて、スペース性を優先したデザインになっている。その、ちょっと風船みたいな雰囲気が、ほのぼの感を漂わせる。

 個人的には、シエンタを見て真っ先に思い浮かんだのはカングーとパンダだったが、全体としては、シトロエン的なアバンギャルドさも残っている。人によっては、別のイタフラ車を思い浮かべることもあるだろう。つまり新型シエンタのデザインは、「良き雑種」ではないだろうか。

 イタリアでは、シエンタはパンダそっくりだと否定的に報道されているというが、根っからのイタフラ車ファンである私は、あまり気にならない。むしろ、カングーやパンダ風のデザインであることが嬉しく感じられる。

 なぜなら、シエンタのデザインは、非常に完成度が高いからだ。「マネ」と呼ばれるものは劣化コピーであって、元祖を超えていればコピーとは呼べなくなる。

 かつてのミラジーノは、ミニの劣化コピーだったが、新型シエンタはそうではない。あえて言えば、優れた「オマージュ」だ。

 初代ジュークの複眼デザインは、ジープ・チェロキーやシトロエンC3のデザインに取り入れられたが、それに近いとでも申しましょうか。

新型トヨタ シエンタのサイドビュー

 いや、サイドビューはパンダに似すぎと言えば似すぎかもしれないが、それが許せてしまうのは、やっぱり全体のデザインの完成度が高い上に、パンダに似たイメージでありながら、パンダにはない圧倒的なスペースユーティリティを実現しているからだ。

 実物を見比べると、ボディサイズや胴体の太さがかなり違うので、「そう言えば似てるね」程度だったりする。

 もちろん、「こんなマネっ子デザインは許せない! 俺は断然、ホンモノを買う!」と言う人もいるでしょう。ただ、イタフラ製のスペースユーティリティビークルでは、3列シートや5ナンバー幅など、日本市場の要求を完全には満たせないのも事実。

 イタフラ車のオマージュデザインが、安心安全なトヨタで買えるなんて、10年前まで考えられなかったことで、イタフラ車ファンとしては、「よかったなぁ」と思ってしまいます。

 新型シエンタのデザインは、実に秀逸だ。恐らく多くのフランス人やイタリア人も、それほど目くじらは立てていないだろう。

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