ソフトバンクグループは31日、ラジーブ・ミスラ氏が同社副社長を退任すると発表した。
インド出身のミスラ氏は、米マサチューセッツ工科大学スローンスクールの経営学修士号(MBA)を取得後の1997年からドイツ銀行の債券部門の責任者を務めた。2014年にソフトバンクグループに入社し、2017年に取締役、2018年に副社長に就任した。運用総額が約10兆円に上る巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を孫正義社長と二人三脚で立ち上げ、孫社長の最側近かつ後継候補と目されていた。
朝日新聞によると、副社長退任はミスラ氏本人からの申し出で、後任はおかない。ミスラ氏は、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド1」を運営するSB Investment Advisersの最高経営責任者(CEO)は引き続き務めるという。
副社長3人体制→2人→1人→ゼロ
ソフトバンクグループはミスラ氏の退任により、副社長不在という“異常事態”になった。同社は今年初めまで、ミスラ氏、マルセロ・クラウレ氏の2人の副社長という体制だった。しかし、クラウレ氏は今年1月28日に退任。一部報道によると、役員報酬を巡って会社側と対立していたとの情報もあるが、詳細は明らかになっていない。
なお、それより以前はソフトバンクの副社長は3人体制だった。2018年6月にソフトバンクグループはミスラ氏、クラウレ氏に加えて、ゴールドマン・サックス出身で、ゆうちょ銀行副社長だった佐護勝紀氏の3人を副社長とする人事を発表した。佐護氏は投資戦略統括チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)として、自己資本投資などを担当していたが、昨年3月に退任している。
相次ぐ副社長の退任に、ネットでは、「金の切れ目は縁の切れ目か?」「沈む船から逃げることネズミの如し」といった反応が目立っていた。
実際、ネット民がそう指摘したくなるほど、今期のソフトバンクグループの決算内容は同社の将来性を心配させるものだった。
6カ月間で約5兆円の赤字!
ソフトバンクグループは8月8日、2023年3月期第1四半期決算説明会を開催し、孫社長が連結業績について説明した。
それによると、四半期の純損失が約3.2兆円、その前の四半期が約2兆円の赤字だった。孫社長は、「この6カ月間で約5兆円の赤字を出したことをしっかりと反省し戒めとして覚えておきたい。今日はわれわれの実態がどういう状況であるかを、反省をこめて語りたい」と述べたうえで、赤字になった要因を「世界的な株価下落」と「急速な円安」の2つを挙げていた。
特に、同社にとって深刻だったのは「世界的な株価下落」の方で、保有する株式価格の大幅な下落により「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が出した赤字は、第1四半期だけで約2.9兆円に上る。「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、直前の四半期も約3兆円の赤字を計上している。わずか半年の間に、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」だけで6兆円の赤字を出していることになる。
損益の累計では、2021年3月期第一四半期には7兆945億円の利益があったが、現在は1122億円に目減り。この半年間で、同ファンドで得た利益のほぼすべてを吐き出した格好だ。
孫社長はこの結果について、「創業以来最大の赤字を出したことを真摯に反省すべきと考えている」と述べた。
今回、巨額な赤字を出した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の責任者である、ミスラ氏がソフトバンクグループの副社長を退任することとなったが、同ファンドを運営するSB Investment AdvisersのCEOは引き続き務めるという。SNSでは、「本当に大丈夫か?」と訝しがるユーザーも少なくなかった。