2022年、全日本スーパーフォーミュラ選手権に佐藤蓮、三宅淳詞というふたりを擁し参戦したTEAM GOH。豊富な実績をもつセルブスジャパンのメンテナンス、そして山本雅史監督、アドバイザーの岡田秀樹、伊沢拓也というふたりと充実の体制で臨んだシーズンは、佐藤がランキング11位/ルーキー・オブ・ザ・イヤー、三宅が14位、チームランキング7位という結果で終えた。ドライバーふたり、そしてアドバイザーを務めた伊沢にシーズンを振り返ってもらった。
2004年のル・マン24時間優勝など多くの実績を誇るTEAM GOHは、今季初めてのフォーミュラへの挑戦として、スーパーフォーミュラを選択した。2021年までスーパーフォーミュラ・ライツに参戦していた佐藤が富士スピードウェイでの第1大会でいきなりフロントロウを獲得したりと、ルーキーふたり、新チームとは思えない印象的な速さをみせ、第4戦オートポリスでは三宅が初表彰台を獲得。第9戦鈴鹿でも佐藤が表彰台を得るなど、期待を大きく上回る活躍をみせてきた。
■充実の体制がふたりの成長を促す
そんなチームは豊富な実績をもつセルブスジャパンがメンテナンスを行い、山本監督、ふたりのアドバイザーと充実した体制を敷いており、「セルブスさんはスーパーフォーミュラはもちろん、スーパーGTではGT500もGT300もやっていますし、アドバイザーの岡田さんも伊沢さんもすごい経験を持っている方たちです。また山本監督もすごい次元で戦ってこられた方なので、そういった皆さんに引っ張っていってもらった感覚はありました」と三宅が言うとおり、その体制がドライバーふたりの成長を促したとも言える。
これまでもTEAM MUGENでアドバイザーを務めた経験をもっている伊沢は、スーパーGTでは現役であり、ドライバーに近い目線からふたりに助言を送ってきた。伊沢は「チームとしては、昨年までM-TECと組んで戦っていましたが、2台体制のTEAM GOHとして戦うにあたって、チーム運営を含めて大変になるかと思っていたものの、そこはやはりセルブスジャパンとしての経験があったので、チームとしてはあまりルーキーのようなところはありませんでした」と振り返った。
「あとはふたりのドライバーがどう頑張ってくれるか、持っているものをどう引き出すかというところでした。まずふたりの特徴としては、乗り方がけっこう違います。ドライバーごとにどうのせていくかの過程や、求めているものも全然違いました」
非常に興味深いところではあるが、ふたりの特徴として「どちらが良い、悪いというわけではないのですが」としつつ、佐藤については、第6大会のもてぎまで「すべてのレースで何かひとつ大きなミスをしてきた」のだという。ただもてぎ、そして第9戦鈴鹿と「初めて何もなく予選から決勝まで順位に関わるミスなく走ることができた。それはやはり結果に繋がった」と伊沢。
「佐藤選手は速さに関して疑うところはないドライバーですが、ちょっとした詰めがうまく噛み合わなかった。それがうまくできましたし、鈴鹿の第9戦でも僕たちが求めているものをやってくれました。ドライバーによってはこういうミスをしやすい……というキャラクターはありますが、どうしたらそれがないようにサポートできるのか? というと、そのドライバーの性格などもいろいろあります。僕たちが『落ちつけ!』と言って落ちつける子はいないので、どう言ったら落ちつけるかとか、うまくレースをまとめられるのかが大事ですね」
一方の三宅については、「飄々としていますが、いろいろと頭を使って考えて取り組むタイプです」という。「表彰台に登った後、少し細かいミスがあったりもしましたが、クルマの状況など違う要素で空回りしてしまったかもしれません。彼は本当に考えて走るタイプなので、エンジニアとの間でいろいろアドバイスしてあげれば、やれるドライバーだと思います」と評した。
■スーパーフォーミュラの難しさが“学び”に繋がる
こうして戦ったスーパーフォーミュラでの一年について、佐藤は「今までやってきたカテゴリーとは全然違いましたし、関わっている人たちの人数も違います。クルマ自体の難しさに対しても苦戦しましたし、経験としてはクルマへの理解がすごく深まりました。今までのレース人生のなかでも、いちばん成長できた一年だと思います」と大きな成長を実感していると語った。
また三宅もこの点は同様で「今年は要所要所で速さをアピールすることはできました。オートポリスでは表彰台に乗ることができましたし、富士の予選ではQ1でトップタイムを記録することもできました。しかし一年目ということで、Q2への読みも分からないですし、決勝に向けても同様でした。自分の感覚で物事を進められないところがありましたね。難しかったです。でも逆に言えばそれほど難しいクルマなので、すごく勉強になったとは思います」と語っている。
ふたりの成長については、アドバイザーの伊沢も「ふたりとも一年目としては素晴らしいシーズンを送ってきたのではないかと思っています」と高く評価している。
「僕がアドバイザーという立場で言うことは、自分でもやりたいことや、できないことを言ったりもします(笑)。僕のアドバイスがどこまで役に立ってきたかは分かりませんが、パッとふたりを見てすごく成長したな、と言っていいのではないでしょうか」
「彼らは今まで下のカテゴリーで戦ってきましたが、このスーパーフォーミュラに上がって、ドライバーが主導してやらなければならないこと、求められることもあります。エンジンについてもターボなので、エンジンマップなど、自分で気づいて細かく詰めていかなければならないことがたくさんあるんです」
ふたりのドライバーの実感、そして伊沢の評価は言葉こそ違えど、ニュアンスは同じように感じられる。ふたりが期待どおりの成長を遂げられた証とも言えるだろう。もちろん、まだまだ上には速さとともに強さをもつドライバーがいる。
「彼らは一年かけて、すごく学んでくれたと思いますね。意識として、プロドライバーになる過程を踏んでいってくれたと思います」と伊沢が言うとおり、将来キャリアを振り返ったときに、ふたりにとってTEAM GOHで戦った2022年が、大きなステップの一年になっているのではないだろうか。