最近、バスファン業界のみならずファンの間でも話題となっているバスがある!! 59年も前の車両が復活を遂げたのだ。
それは旭川電気軌道のMR430という形式のバスだ。昭和38年製(1963年)のバスで、解体されずに放置されていたものをレストアしたのだ。復活劇自体はそれほど珍しいことではないが、注目はこの個体! 前輪が2軸(タイヤ4本)となっており、当時としても超珍しかったのだ。だからこそ部品の調達も困難を極めたという……今回はその復活劇のスゴさをお届け!
文:古川智規(バスマガジン編集部)
写真:旭川電気軌道
さすがに古すぎて見たことがない!
このバスは昭和30年代の製造で、バスと言えばまだボンネットバス(エンジンが前にある鼻が突き出たタイプ)だった時代から、現在のようなリアエンジンリアドライブ(エンジンが後ろにあり駆動輪も後輪)に進化する時代の車両だ。
昭和30年代に三菱重工が製造し、その後に三菱ふそうが手掛けたのがMR系列のバスだ。10m級のもの(現在のバスと同じ全2軸)は全国で活躍したが、今回紹介するMR430は12mのフルサイズの車両。乗車定員はなんと110名(仕様により異なるものもあり)。
見た目にも威圧感を感じるほどに迫力のある前輪2軸(全3軸)のスタイルは、当時の道路事情では活躍できる場が少なく、ごく限られた事業者にしか販売できなかった。
そのような事情で全国で見られる機会は少なかったものと解されるが、旭川電気軌道では前身の旭川バスで採用された。当該車両は1980年代に廃車されたものの、解体されることなく放置されていた。正確には倉庫として再利用された上で放置ということのようだ。
そして発掘される!
その後にバスファンがこのお宝を発掘し(普通の人にはオンボロ廃車バスにしか見えないがマニアが発見するとお宝に!)、これを古巣の旭川電気軌道がレストアすることになった。それも静態保存ではなく実際に走らせる動態保存のさらに上であろう「営業運転車」として現役復帰を目指すというプロジェクトだ。
動くようにすること自体はシャシー(骨組み)さえ残っていて耐えることができれば、車体やエンジンはどうにでもなる。極論だがエンジンは最新のものに置き換え、ボディは新製すれば良いからだ。
しかし当時の部品は当然ながらほとんど存在せず、部品取り車が存在し共食い整備できる車両でもない。そうした部品集めからスタートしなければならない状態でレストアが行われた。
ラッシュ用バスとして開発された
このMR430はラッシュアワーバスとして混雑地域の大量輸送用に開発されたバスである。12mのフルサイズボディにオールロングシートなのがそれを思わせる。合計3軸のバスはスーパーハイデッカーの初期やダブルデッカー車が思い浮かぶがいずれも後輪が2軸のバスだ。
前輪が2軸のバスと言えば、昨今では輸入車だがネオプラン・メガライナーの全4軸が思い浮かぶ。同じような迫力の車両では現在では大型トラックで前輪が2軸のものであれば日本全国で見ることができる。それでも大車両なので幹線道路に限られるかもしれない。
しかしこのMR430誕生時に前2軸のモデルが存在しなかったため、事実上、三菱ふそう初の前2軸車なのだ。
このレストアされたバスは仮ナンバーを経て車検を無事取得し、このたび営業用ナンバープレートが交付され、晴れて営業運転の任務に就くことが可能になった。
まずはお披露目試乗ツアー
同社では9月28日にセレモニー出席と試乗撮影会の特別ツアーを募集した。参加費用が3万3000円と比較的高額だが定員が30名なので、完売するだろうというのがバスマガジン編集部内での大方の見解だった。しかしまだ応募締め切り前の10月1日には、もう完売のアナウンスが出され完売と相成った。
キャンセル待ちはできないものの、空きが出次第再販するとのことなので、ファンはチェックに余念がないようだ。仮に現存していても間違いなく博物館行きの車両を登録までしてしまう執念と技術力には脱帽だ。旭川に行く機会があれば一度は目に、そして可能なら乗車してみたい車両だ。
投稿 なにこのSF感!! 幻の6輪バスMR430が59年ぶり復活 北の大地のバス愛が半端ない は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。