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1939年のナチス・ドイツによるポーランド侵攻から83年にあたる1日、ポーランド政府は、第2次世界大戦で受けた被害額が6兆2000億ズロチ(約180兆円)に上るとする報告書を発表し、ドイツに対して賠償交渉を求める方針を示した。

Aleksandra Aleshchenko /iStock

ネット民「なんで今さら請求?」

AFPによると、事実上の指導者の元首相、同国与党「法と正義」のヤロスワフ・カチンスキ党首が報告書を発表した会議で、賠償金の大部分は「520万人以上のポーランド国民の死に対する」ものだと述べた。

ドイツ政府はこの問題に対して、「解決済み」との立場を示しており、1日に行われたAFPの取材でも、ドイツ外務省の報道官は「ドイツ政府の立場は変わらず、賠償問題は解決している」と回答している。

このニュースが報じられると、ツイッターなどのSNSでは議論百出となった。意見の大半を占めたのが「今さら賠償請求するのか」というものだ。

え⁉️今⁉️韓国政府みたいなことするんだ。ポーランド政府

ポーランドよ、流石にこれはダメだろ。なんで今さら請求してドイツを亡国にしようとしているのか?

何年前の話してんだよ。当時のドイツ人なんて殆ど死んでんだろ。子孫だからって賠償を請求すんのは血統による差別と同義じゃねーの?せめて直後にやれや

日本も中国に元寇の賠償請求しようぜ!

ポーランドは1953年に賠償請求放棄

1939年9月1日、バルト海南部に面するポーランドの都市・グダニスク(ドイツ名・ダンツィヒ)を親善訪問中のドイツ巡洋艦が、突如、ポーランド側に対して砲撃を開始。これをきっかけに第2次世界大戦が始まった。

ナチス・ドイツは開戦の理由として、ポーランド国内でドイツ系住民が迫害されていることを挙げ、その保護を理由にしてのポーランド侵攻であったが、後にその事実がなかったことが証明された。くしくも、83年後の現在、ナチス・ドイツと同じ理由でロシアがウクライナに対して戦争を起こしている。

ナチス・ドイツ兵士に扮する男性(Artsiom Malashenko /iStock)

なお、ポーランド侵攻によって、ポーランドでは300万人のポーランド系ユダヤ人を含む約600万人が犠牲になったとされる。AFPによると、ポーランド政府は今回、第2次世界大戦で受けた被害額について、物的損失は8000億ズロチ(約24兆円)と推定。人的損失額は、各個人が生涯収入として国内総生産(CDP)に寄与できたはずだった額に基づき算出されたという。

ただ、ポーランドは過去にドイツへの賠償請求を放棄している。ポーランドは1953年に、ドイツに対する賠償請求を放棄しているのだ。だから、ネット民の多くから「今さら何を言っているのだ」と指摘されている。

ドイツ政府もポーランドの賠償請求放棄を受けて、請求権は消滅したとの立場で、「賠償問題は解決済みだ」と主張している。

ギリシャもドイツに賠償求める

ただ、最近になって、ポーランドのように過去の経緯を無視して、ドイツに戦時賠償を求める国が現れだしている。2013年、ギリシャのディミトリス・アブラモプロス外相(当時)は、議会で「賠償金請求をギリシャは諦めていない」と発言した。

2015年にもギリシャ議会は、ドイツに2787億ユーロ(約36兆円)の賠償金支払いを求めた。ロイターによると、ドイツのガブリエル経済相は「ばかげている」と述べ、取り合わない姿勢を示していた。

さらに、2019年にはギリシャのミツォタキス首相が、ドイツのメルケル首相(当時)に対して、ナチス・ドイツの占領下で受けた損害に対する巨額の賠償金を求めている。

しかし、ドイツは1960年に1億1500万ドイツマルクの支払いを行い、ギリシャへの義務を果たしたとの立場を崩していない。

ポーランドやギリシャに対して、今さらドイツが賠償金を支払うとは思えないが、たびたび賠償金をチラつかせてくる隣国を持つ日本としては、ドイツの対応を注視せざるを得ない。