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 ドイツ・ハノーバーで9月20日~25日にわたり開催された「IAAトランスポーテーション2022」は、それまでの商用車トレードショーから、将来のトラック輸送を各社が提案するイベントへと趣旨を変えたものだ。そのトレンドを現地取材から紹介する。

 まず、毎回大規模な出展を行なっている欧州の大手トラックメーカー5社を3回にわけてお伝えする。第1回目は、既報と重複するがダイムラートラックと、ボルボトラックだ。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/「フルロード」編集部、ダイムラートラック、ボルボトラック


ダイムラー/大型・小型のEVトラックを大量ラインナップ

メルセデス・ベンツ「eアクトロス・ロングホール」4×2セミトラクタ

 世界最大のトラックメーカー・ダイムラートラックは、大量の新型量産EVトラックを出品した。21年から生産を開始したメルセデス・ベンツの大型EVトラック「eアクトロス300/400」は、IAA2022でセミトラクタモデルを発表し、24年に製品化する航続距離500kmの「eアクトロス・ロングホール」のプロトタイプを公開、さらに今年7月から生産を開始した低床キャブ大型EVトラック「eエコニック」も登場した。

 「eアクトロス300/400」は、高電圧バッテリーの容量が300kWhで航続距離300kmの「300」、同じく容量が400kWhで航続距離400kmの「400」で構成され、「eエコニック」も基本的に同様である。これらには、冷凍車、スワップボディ車、塵芥車など特装ボディが架装されており、多様に用いられている大型トラックを実際にEV化して見せるという意図がうかがえる。さらに試乗車として、eアクトロス300・4×2ドライバン数台が用意されていた。

メルセデス・ベンツ「eアクトロス300」4×2セミトラクタ

 IAA2022では、グループの三菱ふそうの小型EVトラック「eキャンター」次世代モデルの欧州プレミアも行なわれた。全42車型のうち、車両総重量(GVW)が最も軽いGVW4.25トン・標準キャブ車「4S15e」のダンプと、最も重いGVW8.55トン・ワイドキャブ車「9C18e」のキャブ付シャシーとボックスバンボディ車を展示した。

三菱ふそう「eキャンター9C18e」ボックスバンボディ

 さらに実車展示はなかったものの、メルセデス・ベンツの中型EVトラック「eアテーゴ」を製品化することが公表された。eアテーゴの詳細は明らかになっていないが、ダイムラーは小型・中型・大型の全クラスで、EVトラックを揃えることになる。

 燃料電池車では、アクトロスベースで航続距離1000km超を狙う長距離大型FCEVトラック「GenH2」のセミトラクタモデルが出品され、試乗会も行なわれた。

ボルボ/大型EVトラックの実用化で先行・新開発eアクスルも発表

ボルボ「FMエレクトリック」4×2セミトラクタ

 大型EVトラックの製品化でリードしているボルボトラックは、「FMエレクトリック」「FMXエレクトリック」「FEエレクトリック」「FEローエントリーキャブ・エレクトリック」を展示するとともに、プレスデー当日に新開発eアクスルを発表、数年内に長距離EVトラックに搭載し、FCEVトラックにも採用することを明らかにした。

 展示された大型EVトラックは、FMエレクトリックの4×2セミトラクタ、FMXエレクトリックの後3軸8×4クレーン付平ボディ車、FEエレクトリックの6×2脱着ボディ車、FEエレクトリック・ローエントリーキャブの6×2キャブ付シャシーで、こちらもさまざまな特装車に対応できることをアピールするものだった。

ボルボ「FMXエレクトリック」後3軸8×4シャシーベースのクレーン付平ボディ車

 新開発のeアクスルは、トラックの駆動軸にモーターを直接組み込むもの。ボルボの現行EVトラックのプロペラシャフトが不要で、高電圧バッテリーの搭載数を増やせるため、航続距離が確保しやすい。すでにダイムラーなどが導入を進めている方式だが、実用化は数年内とし、実物(またはモックアップ)公開もプレスデー初日の記者発表時のみに限られていたようだ。

数年以内の実用化を発表したボルボのeアクスル

 また、燃料電池車の実車は展示されなかったものの、ボルボとダイムラーの合弁会社・セルセントリックが開発・生産するFCシステムの単体が展示されていた。
 
 なお、ボルボグループのルノートラックスは今回、参加していない。

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