もっと詳しく

 11月5日、2022年全日本ロードレース選手権の最終戦が行われている三重県の鈴鹿サーキットでメディア発表会が行われ、2023年から全4クラスのうちJSB1000クラスのみカーボンニュートラル・フューエルを導入することが明らかになった。

 現在、さまざまなカテゴリーのモータースポーツで、カーボンニュートラルに向け動き出しており、FIMでも2024年からMotoGPやSBKで40%非化石由来原料の燃料の導入が決定されている。四輪の最高峰F1でも2022年から10%、2026年から100%の非化石由来の燃料を使用する。

 そんななか、JSB1000、ST1000、ST600、J-GP3の4クラスが開催されている全日本ロードでは、2023年からプレミアムクラスであるJSB1000クラスでカーボンニュートラル・フューエルが使用されることが決定した。現状、その他のクラスは電動化も含めて新燃料の導入を検討しているという。

日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ) 鈴木哲夫会長
日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ) 鈴木哲夫会長

 燃料のサプライヤーは、ハルターマン・カーレス・ジャパン社となる。同社は、医療用、産業用、農業用などさまざまな市場で使用されるハイドロカーボンのリーディングカンパニーとして実績がある、イギリスとドイツの会社が合併した会社で、生産拠点もドイツとイギリスが主になるとい、150年以上の実績がある歴史の深い化学メーカーだ。

 スーパーGTはすでに、2023年より、ハルターマン・カーレス社のカーボンニュートラル・フューエルを使用することを4月のスーパーGT開幕戦岡山で発表している。また、スーパーGT最終戦もてぎ後の11月7日にテストがあり、GT500クラスは13チーム、GT300は10チームが参加を予定している。

 同一メーカーの燃料をスーパーGTとJSB1000で使用することとなるが、JSB1000用に改良が加えられているため、スーパーGTで使用される燃料とは、厳密には異なる。

 ハルターマン・カーレス社はレース燃料メーカーとして『ETS Racing Fuels』のブランドで事業を展開。JSB1000で使用されるのは『RenewaBlaze』というレース燃料で、『ETS Renewablaze NIHON R100』という種類となる。そして、2023年は最高峰クラスは『JSB1000 Supported by ETS Racing Fuels』へと名称が変更される。

 原料は第2世代バイオマスと呼ばれる木材のチップや植物のはぎれといったゴミとなるもので、そこからアルコールを作り、触媒反応でガソリンにしてレース燃料に変えている。年間レースで約40kL使用するため、この燃料に変更することで86トンのCO2がオフセットできる。

 すでに、国内4メーカー(カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハ)でベンチテストが実施されており、エンジンに改造を施す必要がなく、ECUのセッティングレベルで使用可能であることが確認されたため、採用することになったという。

 テストでは、エンジンの出力は約1%のダウン、燃料の噴射量を増やすため燃費も最大5パーセント悪くなったようだ。そのため、サーキットによってはこれまでの周回数から減らす可能性があり、シーズンオフに行われる予定の走行テストなどを考慮して決定されるだろう。

 価格は1500円/リッターだが、国内外の車両メーカーやタイヤメーカーなどのステークホルダーが分担してコストを負担。また、ハルターマン・カーレス・ジャパン社がオフィシャルサプライヤーとして協賛するため、エントラント側は特別価格の400円/リッターで購入できる。53L缶で供給予定であり、200Lドラムも対応は可能だという。