前日の雨模様とは打って変わって、晴れ間も見えた鈴鹿サーキットでのF1第18戦ホンダ日本GP。初の母国凱旋レースとなっている角田裕毅(アルファタウリ)だが、ブレーキトラブルに苦しめられて、予選Q2で敗退。「仕方ない」と語るものの、その表情からは悔しさがあふれていた。
12時00分からのFP3に備えて、10時前にパドック入りした角田。笑顔をみせるなど、かなりリラックスした表情だった。ドライコンディションとなったFP3では、ミディアムタイヤでコースイン。1分35秒台から入り、その3周後には1分34秒977をマーク。開始30分を経過したところでは5番手につけた。
セッション後半はソフトタイヤを装着し、さらにタイムを上げていったが、最終的にベストタイムは1分32秒377で、トップから1.7秒差の17番手という結果になった。ちょうどFP3前にチーム離脱が発表された僚友のピエール・ガスリーも20番手となるなど、アルファタウリがドライコンディションで2台揃って苦戦する結果となった。
この時点ではQ2進出がひとつの壁になるかと思われたが、予選までのインターバルでマシンを改善した角田。Q1ではソフトタイヤを3セット投入し、タイム更新を試みた。セッション開始直後に行った1回目のアタックでは1分31秒631を記録したのだが、2回目のアタックではシケインで激しくブレーキをロックさせてしまい、自己ベストタイムを更新できなかった。それまでは問題なくブレーキも機能していたそうだが、このタイミングになって想定している作動温度の領域に到達しない状態になっていたようだ。
「(ブレーキトラブルは)FP3では問題なかったのですが、Q1の2ラン目から大きく問題が出てしまい、その周のセクター1から(違和感を)感じていました。ブレーキというのは予選でかなり重要な心臓部分なので、そこでコンシスタンシーを失うと(ドライビングは)かなり難しくなりました」
「(問題の詳細は)簡単に言えば温度です。(温度の)ワーキングレンジに入っていなかったです。セットアップだったり、クルマのマネジメントで対処するしかなくて、僕ができることは“ブレーキを踏む”ことでした。それにはスピードもありますし、タイヤのウォームアップもしなくちゃいけないので、そこは難しかったです」
それでもQ1の最終アタックでは、しっかりと対処し1分31秒130をマーク。12番手でQ2進出を果たした。Q2でも力強い走りをみせたが、最後のアタックではピットアウトの時からミック・シューマッハー(ハース)と交錯するシーンがあったが、角田によると「フラストレーションは溜まりましたけど、(アタックへの影響は)小さかった」とのこと。最後のアタックも特にミスらしいミスはなく、1分30秒808を記録したが、わずか0.152秒差でQ3進出は叶わず、明日は13番手からスタートする予定となっている。
Q1でのブレーキロック以降は問題はなさそうに見えた角田だったが、Q2でもブレーキの対処に意識がいっていたことは確かだったという。 何事もなければQ3進出の可能性も十分にある勢いだっただけに、角田は「しょうがないです」と言いつつも、悔しさを堪えきれない様子だった。
トラブルと格闘しながらの予選セッションとなったが、この日は6万8000人の観客がサーキットに詰めかけ、角田がコースインすると前日以上の盛り上がりをみせていた。
「今日も応援してくれる皆さんのおかげで、自分も気持ちをリセットして毎回アタックに臨むことができました。本当に感謝していますし、何よりみなさんの応援から凄くパワーをもらえていたと思います」と角田。ドライコンディションの鈴鹿で初のF1走行となったのだが「ドライの鈴鹿は本当に楽しかったですね。以前に僕が走っていたときと比べて40秒くらい違うので、別次元ですし、すべてが早送りのような感じで、楽しいひと時でした」と、コース攻略に関するコメントでは、笑みがこぼれていた。
明日の決勝レースは現時点の天気予報によると、スタート時刻の付近から雨が降り出し、レース後半に向けて雨脚が強くなる見込みとなっているが、角田は「明日の天候は、どうなるか分からないので、とにかくコンスタントな走りをしつつ、僕のアグレッシブなドライビングスタイルも、みなさんに見せられればなと思います」と気合いは入っている様子だった。
あと一歩のところでトップ10圏内を逃す悔しい予選となったが、その分、決勝では追い上げの走りを期待したい。