マクラーレンのダニエル・リカルドを含む多くのドライバーによると、近年世界中でF1人気が高まるなか、パドックでの問題も大きくなっているという。
F1は、インディカーやNASCARなどのより一般大衆向けのシリーズと比べて、ドライバーとファンの間に大きな距離を置いていると批判されていたものだった。元F1のCEOであるバーニー・エクレストンは、レース経営に直接関与していない人物にパドックパスを配ることはほとんどなく、F1は「ハンバーガー店ではなく、ミシュランの5つ星レストランだ」と明言していた。
だがそのアプローチは新オーナーのリバティ・メディアの下で変更された。パドックはかなり混雑するようになり、この数戦において熱心なファンたちにもみくちゃにされたドライバーたちは不満を抱いた。
裕福なゲストがパドッククラブとF1エクスペリエンスに入場できるトップフライトパッケージは、3日間でひとりあたり6000ドル(約88万円)を超える収益になるが、これには代償もある。
「今年はさらに熱狂的だ」とリカルドはメキシコで語った。
「雰囲気があるのは好きだし、楽しい場所であるべきだと思うよ」
「でも境界もあってしかるべきだ。これは特権であり、ある程度成熟した敬意ある行動もするべきだ。今年はいつもそうだったわけではない。みんな正気を失ってしまうんだ」
「少なくとも『これがパドック内でのルールです』というようなガイドラインを設定すべきだ。正直なところ、警備員がいるのがいいとは思えないし、混雑のなかただ人混みを通り抜けることもしたくない。僕は写真を撮ったり、サインをしてあげられるようにしたい。みんなが『お願いします、ありがとう』と少しでも敬意を示してくれれば、僕たちは当然敬意を返し続けるよ」
「正直なところ、みんなが『お願いします』や『ありがとう』を言わないことが多いと非難している自分自身に驚いているくらいだ。彼らは走り寄ってきて、何も言わずにやりたいことをやって去っていく。そうされると少し『利用された』と感じる」
「何かガイドラインがあれば役に立つかもしれないと思う。今は何もないからね」
フェラーリのシャルル・ルクレールも、「自覚があれば、彼らは多少落ち着くかもしれない。変わってほしいというわけではない。ただ大人は大人として振る舞う必要があると思う」と同様の考えを示した。
「パドックには大勢の人がいる。F1への関心がどれだけ高まっているかを示しているのだから、よいことだよ。いつもここ(メキシコ)はクレイジーだけど、今年は特にそうだった」
「僕たちがもう少し楽にパドックを歩けるように、何か方法を見つける必要があるかもしれない」
「ファンに囲まれるのは歓迎だよ」とチームメイトのカルロス・サインツは語った。「みんなに囲まれて応援されるのは素晴らしいことだ。特に僕がラテン系だからかもしれないけれど、特別な関係を持てていると思う」
「みんなにパドックでは落ち着いて、押したり叫んだりするのは控えるよう頼むだけだ」
アルファタウリのピエール・ガスリーは、私物のカバンをずうずうしいファンたちに開けられたことが何度かあると不満を漏らし、そうしたファンはドライバーにもっと敬意を示すべきだと促した。また、多くのスーパースタードライバーたちと同様の注目をメキシコで集めていたメルセデスのトト・ウォルフ代表は、さらに大きく深刻な懸念があると感じたという。
「日常のこととしては、ガレージに行ったりスクーターに乗ることがさらに難しくなっている」とウォルフは語った。
「彼らはスクーターの前に飛び出してくるのだ。このような経験は前にはしたことがない」
「だがこれほど熱心なファンがいることに、我々は感謝して謙虚になる必要がある。数年前まで、誰もパドックに興味を持っていなかった日々のことを思い出すよ! ここ(メキシコ)には素晴らしい熱狂と情熱と感情がある。マイナス面は、自分が思うよりも人々が少しでも近づいてこようとすることだ。この週は毎日がそうだった」