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 菅前総理が2050年のカーボンニュートラル、2030年のGHG(温室効果ガス)削減率46%を提言して以降、日本国内でもEVやFCEVといった電動化の動きが活発になってきている。

 いっぽうで、液化天然ガスやバイオ燃料、eフューエルといった将来燃料に対する認知度はまだ低く、欧州諸国に比べると普及も遅れている。

 そうした中、いすゞ自動車はユーグレナ社の次世代バイオディーゼル「DeuSEL(デューゼル)」を使用したシャトルバスの運行を、新たに栃木工場でスタートさせた。

 あたためて次世代バイオディーゼルとはなにか? いすゞとユーグレナのバイオ燃料に対する取り組みをまとめてみた。

文/フルロード編集部 写真/フルロード編集部・ユーグレナ・いすゞ自動車


いすゞ栃木工場にDeuSEL給油スタンドがオープン

 いすゞ自動車栃木工場にユーグレナ社が生産するミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル「DeuSEL(デューゼル)」の給油スタンドが10月3日に開設され、同燃料を使用する工場〜最寄駅間(野木駅・静和駅)のシャトルバスの運行が始まった。

 ユーグレナといすゞは2014年から次世代バイオディーゼルの開発を目指し、藤沢工場〜湘南台駅間で稼働するシャトルバスで実証実験を行なってきた経緯がある。藤沢工場では現在も2台のDeuSELバスが走っており、累積走行距離は28万キロに及んでいる。

いすゞ栃木工場に設置されたDeuSELスタンド。次世代バイオディーゼルは分子構造が軽油と同じだが、分子構造が異なる従来型バイオディーゼルは軽油との混合比率は5%までと規格化されている

 ユーグレナの次世代バイオディーゼルは、普及の容易さを重視し、エンジン等の車両に変更を加えないでそのまま使える燃料であることがコンセプトで、含有率100%でも使用できる(いすゞのDeuSELスタンドでは、軽油との混合率10%のものが使用されている)。

 栃木工場と藤沢工場のDeuSELバスは、専用のラッピングが施されているが、中身はディーゼルの中型路線バス「いすゞ・エルガミオ」そのもの。藤沢工場では8年間、とくに問題なく稼働してきているという。

 バイオ燃料は、植物や動物などの生物資源(バイオマス)を原料にして製造する燃料で、燃焼した際に排出されるCO2は既存の化石燃料と変わらないが、バイオマスの成長過程で光合成を行ないCO2を吸収する。

 全体のライフサイクルでみると、CO2排出量を相殺するカーボンオフセットの考えのもと、石油代替燃料の選択肢として注目されている。

軽油とDeuSELの負荷性能試験と排ガス試験の結果。ほぼ同等という結果になっている

ユーグレナのバイオ燃料への挑戦

 ユーグレナといえば、理科の授業でもお馴染みミドリムシなどの微細藻類を活用した、健康食品、化粧品で一世を風靡したヘルスケア商品の会社。

 2010年からエネルギー・環境事業へ参入しており、バイオジェット燃料の研究を開始し、2014年には、いすゞと次世代バイオディーゼルの共同研究契約を締結。「DeuSELプロジェクト」をスタートさせた。

 そしていすゞとの実証実験を経て、2018年に生物資源のミドリムシと廃食用油を原材料にした、バイオ燃料(次世代バイオディーゼル・バイオジェット燃料)の実証製造プラントを横浜(鶴見区)に竣工。2020年から次世代バイオディーゼル、2021年からバイオジェット燃料の供給を開始している。

使用済み食用油(廃食油)とユーグレナを原料とするバイオ燃料の生産の流れ

 なお、いすゞとユーグレナ共同の商標の次世代バイオディーゼルは「DeuSEL」、ユーグレナブランドとして販売する次世代バイオディーゼル・バイオジェット燃料は「サステオ」と差別化されている。

 DeuSEL、サステオはいすゞ自動車をはじめ、これまでに50社以上の車両、船舶、鉄道、飛行機などで使用されてきており、今後も日本の代替燃料の選択肢としてバイオ燃料に注目する企業も増えそうだ。

 いっぽうで、バイオ燃料の供給量と販売価格には課題がある。横浜の製造プラントの生産能力は一日あたり5バレル(約795L)、年産では125kL(125,000L)と、決して多いとは言えない。

 また製造コストも高く、一例としてユーグレナの次世代バイオディーゼルを国内で唯一、一般販売している中川物産、名港潮見給油所(名古屋市)の販売価格はリッターあたり300円(軽油との混合比率20%で販売)ほど。ディーゼル燃料と比べればかなり割高である。

 そうした中ユーグレナは、2025年末までに横浜の実証製造プラントの2000倍の生産能力を持つ、商用プラントを完成させる予定であるとし、製造コストも今の100分の1になることが想定されているという。

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