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ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法

 最近では明るく寿命の長いLEDが標準搭載されるようになったこともあり、ヘッドライトの状態を気にする機会も減ってきている。

 とはいえ、いまだハロゲンバルブのヘッドライトを搭載しているクルマは多く、1台のクルマに長く乗り続けているドライバーほどヘッドライトの明るさに不安を感じることが多いはずだ。

 もちろん、HID(キセノン・ディスチャージ)やLEDヘッドライトであったとしても、クルマの状態次第では新車時と同等の明るさを維持できない場合もある。

 そこで今回は、ヘッドライトが暗くなる原因と対処法について解説していきたい。特に日照時間が短くなっていくこれからの季節、ヘッドライトに不安を残したままでは夜間の走行をするたびにストレスを感じることになってしまう。安全かつ快適に夜間の運転を楽しむためにも、ぜひ参考にしていただきたい。

文/入江 凱、写真/写真AC

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薄暮時間帯に事故が多発! ヘッドライトが暗くなるとどんなリスクがある?

ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法
事故率がもっとも高いのは薄暮の時間帯。この時がもっとも視界が悪くなり、無灯火だと対向車だけではなく、歩行者やバイク、自転車なども見落としやすくなる

 ヘッドライトが暗くなることの最大のデメリットは視認性と被視認性の悪化。視認性は「見えやすさ」、被視認性は「見られやすさ」のことだ。

 特に、日没前後1時間の「薄暮(はくぼ)時間帯」は要注意だ。警察庁の発表によると、薄暮時間帯における「自動車対歩行者」の死亡事故件数は、昼間の約4倍にものぼるという。この薄暮は周囲が最も見えにくくなる時間帯と言われている。

 この時間帯に無灯火だったり、光量が足りない状態で走行すると、対向車や歩行者を見落としやすくなるだけではなく、対向車や歩行者がクルマの接近に気づかずに飛び出してくるといったリスクも高まる。

 クルマが停止できる距離の目安は60km/hで44m、40km/hで22mと言われており、発見の遅れは致命的になりうるのだ。

 また、ヘッドライトは安全保安部品であるため特に車検で厳しくチェックされるため、ヘッドライトが暗いと車検に通らないこともある。

ヘッドライトが暗くなってしまう原因は?

■ヘッドライトバルブの性能、劣化

 以前主流だったフィラメントと呼ばれる金属の線が発光するハロゲンバルブは使い方にもよるが3年程度で交換することが好ましいと言われている。ただし、光は黄色っぽく淡い暖色系で、新品であってもLEDやHIDに比べるとどうしても暗く感じてしまう。

 その後登場したHIDには、ハロゲンにおける球切れの原因になっていたフィラメントがなく、内部での放電によって青白い光を発し、明るさではLEDに勝る。

 しかし、寿命はLEDが1万時間(約15年間)である一方、HIDは約2000時間、5年程度と短い。点灯時の負荷が高いためライトを点けたり消したりする頻度が高いと寿命はさらに短くなる。劣化が進んでくると光量が低下したり、不安定になるといった症状が現れる。

 現在では新車の70%以上がLEDのヘッドライトは、HIDほどではないものの、明るさも十分。さらに廃車まで使えると言われるほど長寿命なため、球切れを起こす心配はほぼない。それでも、経年劣化により徐々に暗くなっていくことは避けられない。

■ヘッドライトカバー(レンズ)の汚れ・劣化

ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法
ヘッドライトカバーが紫外線や熱による劣化を起こすと、写真のライトの左側部分のように黄ばんだり、曇ってしまう。するとHIDやLEDであっても暗く感じることになる

 劣化しづらいLEDや光量の多いHIDであってもヘッドライトカバーが汚れたり劣化すると暗く感じてしまう。

 現在のクルマのヘッドライトカバーの素材にはポリカーボネートが使用されている。ひと昔前まで主流だったガラスと比較して軽量で加工しやすく、それでいて透明度はガラスと変わらない、さらに破損した時に飛散しにくいというのがポリカーボネートが普及したおもな理由だ。

 メリットばかりのように思えるポリカーボネートだが、素材が柔らかいため傷付きやすく、熱や紫外線によって化学変化を起こしやすい。その結果、黄ばみや曇りが発生しやすくなるというのが難点だ。

 特にHIDは発光する際の熱量も多く、光に紫外線も含んでいるため、現在主流のLEDと比べると軽微ではあるがヘッドライトカバーに悪影響を与えやすいと言われている。

 しかし、こうした内部からの影響以上に劣化を進行させる原因となるのは太陽光に含まれる紫外線や飛び石による傷だ。それらからヘッドライトカバーを守るため、表面にはハードコートと呼ばれるコーティングが施されている。

 ただし、このハードコートも長期間使用していれば劣化が進み、黄ばみや曇り、剥がれを起こしてしまう。国産車の場合、通常3~5年はクリアな状態を保つことができるとされているが、屋外に駐車をしていて常に紫外線や風雨にさらされるような状況では、劣化が早く進む可能性がある。

■光軸のズレ

ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法
リフレクター式ヘッドライトの場合、内部の鏡のようなリフレクターに光を反射させることで照らす範囲をコントロールしているが、これは純正バルブの光源、光の出方に合わせて設計されている。社外品に交換すると光源の位置や光の出方が変わって光軸がズレてしまう

 光軸とは端的に言えば「光が照らす方向」のこと。光軸がズレてしまったヘッドライトは適正な方向を照らせず、その結果、暗いと感じてしまう。

 光軸は車検の検査項目にもなるくらい重要なものだが、荷物の重量による浮き沈み、タイヤやサスペンションなど足回りの変更に伴う車高の変化、段差などを乗り越えた際の振動などで簡単にズレてしまう。

 最新のクルマであれば光軸を自動で合わせてくれるオートレベライザーという機能が採用されているため、乗員が増えたり、重量物を積んだりといった程度の多少のズレであれば調整してくれる。

 ただし、センサーがリア側にしかない車両をローダウンしてしまうと、水平に車高を下げていても「車両が尻下がりになっている」と誤解したオートレベライザーがヘッドライトを下向きにしてしまい、暗く感じられるようになってしまうこともある。

 さらに注意したいのがヘッドライトを社外品に変更した場合だ。ヘッドライトは純正バルブを前提に設計されているため、一見同じ形に見える社外品のバルブでも車種によっては光源の位置が変わり、光軸がズレてしまうことがあるのだ。

 そのため、社外品に変更して光軸調整をしないで走行すると、暗さが改善されなかったり、対向車を眩惑してしまったり、熱によるリフレクターやレンズの変色を招く恐れがある。

■バッテリーや配線の劣化

 バッテリーが劣化していると停車中にヘッドライトが暗くなったり、ちらつきといった症状が出ることがある。また、消費電力の多い電装品を多用すると十分な光を発するに足る電量をヘッドライトに供給できなくなってしまうこともある。

 配線の劣化も原因のひとつ。ヘッドライトに到達するまでの間の抵抗が増えて、ヘッドライト部分に電気が届くまでに電量が減ってしまうのだ。

暗いヘッドライトを明るくするには?

ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法
黄ばみや曇りのあるヘッドライトカバーを復活させるには表面の劣化した層を磨き落とすことが有効だ。ただし、失敗すると深い傷になったり、小傷が付くことで
逆に曇ってしまうため、自信がなければ専門店に任せたほうが無難

 暗くなっている原因が黄ばみや曇りといったカバー表面の劣化であれば見た目で判断できるはずだ。劣化したカバーの表面は洗浄して汚れを落としたり、研磨剤入りの洗剤やコンパウンド、耐水ペーパーを使って磨くことで復活する可能性がある。

 ただしこの場合、ヘッドライトを保護しているハードコートも削り落とすことになるため、紫外線によって変色や劣化を起こしやすくなるという副作用も……。そのため、磨き終わったらカバーにコーティングやクリア塗装を行うことが必須となる。

 耐水ペーパーで磨きを行う場合、研磨力の強い粗目から徐々に細目の番手に切り替えていくが、粗すぎる番手や強すぎる力で磨くと深い傷ができてしまうので注意してほしい。

 黄ばみがひどかったり深めの傷がある場合は1000~1500番からスタートして最後に2000番を、軽度の場合は2000番を使用するのがお薦め。仕上げにコンパウンドで研磨して目に見えない小傷を取った後、コーティング剤を使用したら作業は完了。

 結露などでカバー内部に汚れが付いている場合は、ヘッドライトユニットを取り外して、バルブを抜き、穴に布を巻いた割り箸や針金などを差し込んで拭くことで除去できる。

 この時、洗浄剤やパーツクリーナーを使用するとリフレクターやカバー内側に洗浄成分が残ってシミになったり、溶剤によってポリカーボネートが傷むといったさらなるトラブルに発展する恐れがあるので避けたほうがいい。

 しかし、この作業はグリルやパンパーなどの他のパーツを外さなければいけないことが多く、DIY慣れしている人以外にはお薦めできない。

 ハロゲンバルブを使用しているクルマであれば、標準よりも高い消費電力の明るさを再現した高効率のハロゲンバルブまたは、HIDやLEDに交換するという手もある。

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投稿 秋の夜長にチェックしておきたい!! ヘッドライトが暗くなってしまう原因と対処法自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。