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今度は買える! ひょっとすれば内燃機関は今回が最後!!? 新型シビックタイプR プロドライバーが鈴鹿で実感した進化

 ベース車・ホンダ シビックのフルモデルチェンジから遅れること1年。「タイプR」がついに新型へモデルチェンジを果たした。

 開発を率いた柿沼秀樹LPLが「FF最速を目指した」と言うだけあって、「純内燃機関のタイプRの集大成」として徹底的に磨き上げられている。そんな新型の進化を、レーシングドライバー山野哲也選手が鈴鹿サーキットで徹底的に引き出した!

※本稿は2022年10月のものです
文/山野哲也、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2022年11月10日号

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■走り出した瞬間から「違い」がわかる

シビックタイプRを山野哲也が鈴鹿サーキットで超絶本気のドライビング!

 コースに入るまでの、パドックからの連絡道をゆっくりと走り出した瞬間、旧型との違いがパッとわかるほどの進化ぶりだ。

 ゆっくりとクラッチをミートして走り出すと、エンジンの低速トルクがしっかりと立ち上がって、「あれ? マイルドハイブリッドだったっけ??」と一瞬思ってしまったほど。

 もちろんそんなことはなく、シビックタイプRのパワーユニットは従来型同様、2Lターボの「純内燃機関」。

 だが、まるでモーターのアシストが効いているかのようなスムーズな発進から低速でのトルク感。

 2000回転台後半から大排気量NAエンジンのような加速を見せてくれるのには驚いた。サーキットも一般道もひとつ高いギアで走れそうだ。

直列4気筒2Lターボエンジンは、吸排気系のフリクション低減、ターボのハイレスポンス化などでシャープなピックアップを実現

 これは「頭のいいエンジン」。比喩的な表現ではなく、実際、エンジンを制御するコンピュータの演算速度が速いのだろう。

 燃焼状態、走行状態、そしてドライバーの操作などのフィードバック演算が瞬時に行われるため、エンジンの回転がスムーズで、トルクをしっかりと出すことができているという印象だ。

 このため、シフトアップ時のつながりもいい。

 トルクの落ち込みが小さいため、まるで2ペダルDCTのように3ペダル6MTを操れる。

 先導車として前を走る旧型タイプRのリミテッドエディションとはずいぶんと車間を開けていたつもりだったのに、ストレートでグイグイ追いついていく。

 もちろん、空力のよさなどもあるのだが、明らかにエンジンのパフォーマンスの差が大きい。

■トレッドを実際の数値以上に感じる操縦性の高さ

慣性で4輪をスライドさせながらもしっかりと高いコントロール性を維持するため、安心してコーナーにアタックできると山野選手は言う

 コーナリングは新型タイプRの真骨頂を実感する。

 例えて言うなら、「クルマが正方形に感じる」のだ。実際には全長は全幅に対し2倍以上長く、長方形なのだが、長さを感じない操りやすさなのだ。

 具体的にはトレッドが実際の数値以上に広い印象で、グッとタイヤが接地してしっかりと路面をつかんでいることがステアリングを通じてわかる。

 ステアリングギア比はそれほどクイックレシオではないのだが、あたかもクイックレシオのように、操舵に対しダイレクトにノーズが反応する。

 車体剛性はもちろんだが、ステアリング系やサスペンションを構成するパーツのどこかひとつにでも緩さや遊びがあったら、このダイレクトでスムーズな操舵反応は得られない。

 タイヤサイズを従来型の245/30R20から265/30R19に変更したことも効いているのだろう。

 タイヤが持つ衝撃吸収ダンピングのよさなどから、最適なしなりを発生させながら、接地面がしっかりと引き出されている印象だ。

アクセル操作に対するトルク立ち上がりの反応がよく、低い回転からしっかりとトルクが出ているため、コーナー脱出時の加速が従来型より鋭い!

 とにかくコントローラブルで安心してコーナーにアタックすることができる。

 試乗会当日は外気温が29℃と高かったにもかかわらず、2分26秒92というベストラップを刻んだ。

 これは市販車としては驚異的なタイム。シビックタイプRはS耐レーシングマシンのようなパフォーマンスを見せつけてくれた。

 もちろん、まったく欠点がないということではなく、コーナリングで最大限に横Gがかかった状態で、“ダッダッダッ”とリバウンドするような動きをする場面があった。

 これは乗り方で改善するのだが、想定以上の入力が入った時の動きとしては、ハード面での改良ポイントとして開発陣には伝えた。

 ただし、サーキットで限界の限界を引き出した際の、極めて限定的な場面での話ではある。

 新型シビックタイプR、開発陣が目指したように“FF最速マシン”を実現していると実感できた。

●ホンダ シビックタイプR主要諸元
・全長:4595mm
・全幅:1890mm
・全高:1405mm
・ホイールベース:2735mm
・車両重量:1430kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ
・ボア×ストローク:86.0×85.9mm
・総排気量:1995cc
・最高出力:330ps/6500rpm
・最大トルク:42.8kgm/2600-4000rpm
・トランスミッション:6速MT
・ギア比:1速:3.625/2速:2.115/3速:1.529/4速:1.125/5速:0.911/6速:0.734
・最終減速比:3.842
・タイヤサイズ:265/30R19
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・価格:499万7300円

(TEXT/山野哲也)


【解説01】新型シビックタイプRここが進化のポイント

特にフロントサスはジオメトリーを最適チューニング

 基本ボディはベースとなるシビックを踏襲するが、タイプR専用に徹底的に剛性を高めた。

 特にステアリング剛性はこだわった部分で、緻密な操舵に応えるサスペンションとの連携で、高い操縦性を実現。

 ワイドトレッド化、265/30R19のタイヤを履きこなすためにキングピン軸を外側に移動するなど、チューニングを施した。

 タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4SをタイプR専用チューニング。

 コーナリング時に接地内側の変形を抑制し、タイヤの接地面を生かし切るため、19インチ鍛造アルミホイールはイン側リムを表側に出した「リバースリム」を採用。

330ps/42.8kgmを発揮する直4、2Lターボを搭載する

 エンジンは直列4気筒1995ccターボで、基本は従来型を踏襲するが、吸気経路のフリクション低減、ターボチャージャーの小型軽量、低フリクション化による高回転化などにより、低回転からトルクが立ち上がり、シャープな応答性を実現。

 最大トルクの42.8kgmは2600rpmから4000rpmでフラットに発生。最高出力は330psを発揮する。

【解説02】今度のシビックタイプRは「買える!!」

 今モデルのタイプRは「カタログモデル」で、販売期間や台数が限定ということはなく、いつでも購入可能。しかし、生産キャパの関係で納期はすでに1年以上となっている。

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