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 事前の悪天候予報が的中し、幾度ものセッション中止と都合8回に及ぶセーフティカー(SC)ランが発動する大荒れの展開となった『レプコ・バサースト1000』は、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの盟主として挑んだレッドブル・アンポル・レーシングの王者“SVG”こと、シェーン-ヴァン・ギズバーゲン/ガース・タンダー組(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)が、悪条件とペナルティにも屈せずペア2勝目を獲得。

 これでふたりはホールデン最後のシーズンに、ブランド通算36回目の“グレートレース”制覇の栄誉で華を添えるとともに、チャンピオンSVGはスコット・マクラフランがかつて記録した年間最多勝記録を更新する、シーズン19勝目を飾っている。

 恒例の会期に戻った10月6~9日の週末に、魂の“聖地”マウントパノラマを舞台とする今季唯一の耐久カップ登録戦として開催されたシリーズ第11戦は、本戦を前に来季2023年のRSC投入が予定される新規定車両『フォード・マスタング“Gen3”スーパーカー』が世界初公開されるなど、大きな盛り上がりを見せた。

 しかしこの週末のニューサウスウェールズ州内陸部は、レースウイークに向け大雨への警戒を呼びかける気象予報が出ており、パドックからはレース開催に向けた懸念の声さえ聞こえる条件下での勝負に。

 そんななか、まずトップ10シュートアウト進出に向けた予選では、雨中の走行でフォード陣営が先手を獲り、モンスターエナジ・フォードの6号車を操るキャメロン・ウォーターズ(ジェームス・モファット組/ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)が、40分間のセッションでベストタイムを記録する。

 一方、この予選を4番手タイムで終えたSVGは、最後の数分でマコーレー・ジョーンズ(ジョーダン・ボーイズ組/ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)の走路を妨害し、接触によりクラッシュの原因を作ったとして、決勝3グリッド降格のペナルティ裁定が課されることに。この結果、SVG/タンダー組が続くトップ10シュートアウトで仮に最速タイムを計時しても、ポールポジションからレースを戦う機会が失われてしまった。

 しかし土曜のマウントパノラマは上空からの雨量が減る気配もなく、併催のポルシェ・カレラカップと、ステップアップのスーパー2走行枠がキャンセルされることに。全長6.213kmのトラックは大きな水溜りと至るところに川ができ、スチュワードは続くトップ10シュートアウトをキャンセルする以外に選択肢がない状況に追い込まれた。

週末のニューサウスウェールズ州内陸部は、レースウイークに向け大雨への警戒を呼びかける気象予報が出ていた
予選トップ10シュートアウトのキャンセルで、キャメロン・ウォーターズ(ジェームス・モファット組/Tickford Racing/フォード・マスタング)が最前列スタートを確定させた
マコーレー・ジョーンズ(ジョーダン・ボーイズ組/Brad Jones Racing/ホールデン・コモドアZB)の走路を妨害し、接触によりクラッシュの原因を作ったとしてSVG/タンダー組は3グリッド降格ペナルティに

「この展開には非常に失望している。明らかに大量の雨が降り注ぎ、トラックの保水量は限界を超えていた。もちろんドライバーの安全性を損なうことはできず、当局は競技開催は危険であると判断した。すべてのファンとすべてのドライバーにとって非常に残念なことだが、判断が必要だったんだ」と説明するのは、シリーズCEOを務めるシェーン・ハワード。

 こうしてグレートレースの歴史上初のシュートアウト・キャンセルを受け、ウォーターズ/モファット組がオーストラリア大陸最大の祭典に向け最前列を確保する展開となった。

「僕自身、シュートアウトが大好きなのでガッカリしている。自分だけがトラックを独占できる時間だからね。でも雨は本当にクレイジーで、あちこちで川が流れているのを見た。もちろん、走行すれば危険なことになるだろうね」と、決定に際して複雑な心境を明かしたウォーターズ。

「でも、明日に向けポールポジションでスタートできるのは最高だ。アタック前にはスーツを着て音楽を聴いていて、周囲のタイムを見て『イケるだろう』と感じていた。でも大きなウエットパッチにぶつかるとすぐに制御できなくなり、レースの前日にクルマを大破させたくない……とも思ったよ。今日はそれほど、厳しいコンディションだったんだ」

 その状況は日曜決勝のスタートでも変わらず、オープニングラップから波乱続発の展開に。ここで犠牲者となったのは“セブン・タイムス・チャンピオン”ことジェイミー・ウインカップ(ブロック・フィーニー組/トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)で、ターン1を過ぎたマウンテン・ストレートで水煙により視界を失い、制御不能のままジャック・パーキンス(ウィル・ブラウン組/エレバス・モータースポーツ/ホールデン・コモドアZB)に接触。これを避けられなかったザック・ベスト(トーマス・ランドル組/ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)とともに、早くもリタイアを喫することに。

 このアクシデントで4周のSCランを経たのち、リスタート直後にはセイン・ゴダード(ジェームス・コートニー組/ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がコントロールを失い、2台を巻き添えにして戦列から去ってしまう。

スタート直後には、ジェイミー・ウインカップ(ブロック・フィーニー組/Triple Eight Race Engineering/ホールデン・コモドアZB)が2台を巻き添えに戦列を去る事態に
デビッド・レイノルズ/マット・キャンベル組(Grove Racing/フォード・マスタング)も序盤マルチアクシデントの犠牲に
4回目のSC出動の引き金となりながら、粘りに粘り抜いたデイビソン・ブラザーズ組(ウィル&アレックス/Dick Johnson Racing/フォード・マスタング)も8回目のSC出動の起因に

■天候が回復した中~終盤にかけてもアクシデントが多発

 10周目の再開後も小雨が舞うなか、ほぼ全車がスリックタイヤでの走行を続けると、レコードラインが乾きつつあるなか17周目のザ・チェイスでブロディ・コステッキ(デイヴィッド・ラッセル組/エレバス・モータースポーツ/ホールデン・コモドアZB)がコースオフしてSCが出動。このSCピリオド中に、SVGはアレックス・デイビソン(ウィル・デイビソン組/ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)のピットアウトを妨げる危険なリリースに対して、5秒のペナルティを言い渡される。

 しかし、そのデイビソンが直後のザ・チェイスでタイヤバリアの餌食となり、グラベルに立ち往生したことで4回目のSCが発動。さらに天候が回復した40周目にはティム・ブランシャード(ティム・スレード組/ブランチャード・レーシング/フォード・マスタング)とニック・パーカット(ウォーレン・ラフ組/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)がフォレスト・エルボーで絡み、5回目のSCセッションとなる。

 5周後の再開からレースをリードしたチャズ・モスタート(ファビアン・クルサード組/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)だったが、104周目にピットストップに向かい、ここですでにペナルティを消化していたSVG/タンダー組に首位を明け渡す。

 その後、119周目のグリフィンズ・ベンドでは立て続けのアクシデントで7回目、8回目のSCが発動したものの、残り15周で再開されたレースは首位SVGが2番手モスタートを1.0991秒差で抑え切り、自身2度目のグレートレース制覇を達成。ペアを組むタンダーも、これで通算5度目のバサースト1000優勝を記録する結果となった。

 このレースで3位に入ったランキング2位のウォーターズに対し、567ポイントの差をつけてタイトル防衛に邁進するSVGだが、続くRSC第12戦は10月28~30日にサーファーズ・パラダイスを舞台に『ブーストモバイル・ゴールド・コースト500』が争われ、12月初旬にはアデレードでの最終戦が控えている。

中盤以降、ドライアップが進んだ路面だったが、至るところでアクシデントが発生する展開が続いた
グリッド降格やタイム加算ペナルティも跳ね除け、SVG/タンダー組が終盤のレースを支配した
年間最多勝記録更新のSVG(左)は、自身2度目の”Great Race”制覇を達成。ペアを組むタンダーも、これで通算5度目のバサースト1000優勝を記録する結果となった