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あのアルファードも違う!! 完全に廃れた合掌型ワイパーはなんだったのか

 初代オデッセイや初代エスティマなどなど、かつての大型モデルが軒並み採用していた合掌型ワイパー。今や採用しているのはバス程度と、乗用車市場からほぼ完全に姿を消してしまっている。デカい窓にピッタリな気もするが、一体なぜ乗用車に採用されなくなったのか!?

文/近藤暁史、写真/HONDA、TOYOTA、MITSUBISHI、Alfa Romeo、ベストカー編集部、AdobeStock

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■あんま変わってないはウソ!? 形は一緒も素材で勝負のワイパー

クルマにおける機能重視装備のひとつであるワイパー。現在はパラレル型が主流だが、過去には合掌型(対向型)というタイプも存在した(Sashkin@AdobeStock)

 ワイパーというのは雨などの水分を拭き上げるのがあくまでも最優先かつ目的となる、機能重視装備のひとつ。実際、激しい雨の日ともなると、なかったとしたら走ることすらできなくなるほどだ。

 とはいえ、まったくデザイン性がないかというとそのようなこともなくて、形状で言うと、以前だと高速走行時に浮き上がりを防止するフィンが付いたエアロワイパーや、最近では金属製のブレードに代わって、樹脂のしなりによってガラス面への追従性を確保するユーロワイパーというものもある。

 これらは純正装着だけでなく、ちょっとした憧れ的なアイテムとしてアフター市場でも人気だったりする。

■とくにホンダが好きだった!? 昔のデカいクルマは合掌型がキホン

ホンダは初代&2代目オデッセイなどで積極的に合掌型(対向型)を採用していた

 そしてもうひとつ見た目に関係してくるのが、ワイパーアームだ。レーシーな1本モノは以前であればけっこうなモデルに採用されていたし、アーム自体がボンネットの端に収まって、普段は見えないコンシールドタイプなどもある。

 1本ワイパーの絶滅つながりというわけではないが、同様に現行車では採用されなくなったものとして合掌型がある。

 通常は運転席から見て、右ハンドルの場合は真ん中と左側にアームがあって、同じ方向に動くパラレル型となる。合掌型は別名、対向型とも呼ばれるように、アームが左右両端にあって、作動するときは開いて閉じてというようになるのが特徴で、その動きから喧嘩ワイパーという愛称もあったりした。

 ホンダは以前から好んで採用しているメーカーで、最近までジェイドやクラリティに採用していたし、初代と2代目オデッセイなど、けっこうな数にのぼる。そのほかのメーカーでもトヨタの初代エスティマは印象に強く残っているし、デリカスペースギアなどミニバンに多い装備とも言えた。

■ふき取り面積がデカいもデメリットも多々

アルファロメオ ジュニア(1966)。イタリア車のご多分に漏れず当然のように不調をきたし、アーム同士がぶつかるトラブルもあった

 長所はワイパーが長くできる、つまり左右のワイパーが重なる部分が多くなるので、拭き取り面積も広くなる。

 また、デザイン性などによって、左右の端が大きく湾曲しているガラスでも左右端ではアームが縦に近くなるので隅まできれいに拭くことができる。パラレル式だと、ブレードの先が浮いてしまうことがあるが、合掌型だとそれもない。

 デメリットは裏側に仕込まれるリンクが長くなるので、コストがかさんだり、組付けに手間がかかったりすること。精度というほどはシビアではないが、止まるときは左右ワイパーがチャンと折り重なるようにしてやらないといけないのだ。

 海外では1960年代頃のアルファロメオが非常に好んでいて、ジュニアやジュリアなど多くのモデルで採用していたものの、さすがイタ車、ガタが出てアームの動きがブレ、アーム同士がぶつかるという、本当のケンカワイパーになるという笑えないこともあったりした。

■ケンカワイパーが廃れたのは技術革新!? 先進装備のセンサーが作動しないのが要因

そもそもパラレル式で不満はまったくないうえに、最近ではセンサーやカメラなどがフロントガラスの上部に付いていることが多く、この部分にアームが届きにくい合掌型は次第に姿を消していった(lcswart@AdobeStock)

 話しは戻って、そもそもよく考えたら、パラレル式で不満はまったくないわけで、それでいいというのも大きな理由。運転席前については合掌型と同じようにアームが縦に来るので、良好な視界も得られるのでなおさらだ。

 そして、昨今の大きな理由が、安全装備に関するデメリットだ。

 センサーやカメラなどはフロントガラスの上部に付いているのが通例で、ここは合掌型だと三角形に拭き残りが出る部分。極端なことを言うと、ここだけ拭くことができないのが合掌型だ。そうなると、とくにカメラの場合、水滴が付いている機能が落ちるだけになおさら採用しにくくなる。

 結局はワイパーは雨の日にしか使わないし、雨粒などが付いたらきれいに拭き取るという機能が発揮されればいいわけで、それ以上のことは必要とされない時代になったと言っていいだろう。

 とくに昔のようにボンネットの後端にいかにも生えてます的に付いていた時代から一転して、普段はほとんど見えないようになっているからなおさら。あえて動きも大きなものにしなくていいという判断もあるのだろう。

 デザイン的な潮流は時代とともに変化するので、またいつか、オーバーに左右にビュッと開くように動く、合掌型のワイパーの時代がくるかもしれない。

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