すでに2022年のタイトル争いが決着しているETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、その王座確定翌週となる10月1~2日に、スペインのハラマで第8戦となるシーズン最終戦を開催。2014-2015年に続き、2021-2022年の連覇による自身4度目の戴冠を決めた王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)が、土日ともに予選ポールポジションを獲得し、実質的に「年間予選セッション全制覇」を達成した。
そのまま決勝レースでも、今季の奇数レースでスタンダードとなったリザルトを反復し、キスが年間16勝の金字塔を打ち立てるとともに、シーズン最終のレース4では、今季2度目の総合優勝を果たしたテオ・カルヴェ(バギラー・ZMレーシング/フレイトライナー)が、若手登竜門的カテゴリーの“プロモーターズカップ”で年間チャンピオンを獲得する結果となっている。
9月末にフランスのル・マン、ブガッティ・サーキットで争われた第7戦にて、すでに自身の王座とともに予選ポールポジション獲得数の年間新記録を樹立していたキスは、その1戦からバック・トゥ・バックとなった最終戦でも手を抜くことなくアタックに挑み、土曜時点で今季14回目の最前列を射止めてみせた。
シリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が、2017年に記録したコースレコードに0.7秒と迫ったキスは、そのままレース1でも横綱相撲でリードを維持し、フロントロウを分け合った帝王に4.5秒差をつける完勝劇。3位のアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/MAN)に続き、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/MAN)、アダム・ラッコ(バギラー・ZMレーシング/フレイトライナー)の強豪に喰らい付いたカルヴェが総合6位に入り、自身のインディペンデント王座に一歩近づくリザルトとなった。
そのトップ8リバースで始まったレース2は、今季複数回のリバースポールを得ていたアンドレ・クルシム(ドントタッチ・レーシング/イベコ)が奮闘し、背後からのプレッシャーをかわし“ライト・トゥ・フラッグ”での勝利を決め、自身今季初優勝を飾るとともに、シーズン10人目の総合優勝ドライバーに。2位には僚友でエースのラッコから激しいプッシュを受けたカルヴェが続き、スタートポジションどおりの表彰台となった。
■レース3は接触バトルによるレッドフラッグ掲出の展開に
明けた日曜。今季最後のレースデイは、前日のタイムを更新してレコードにあと0.2秒と迫ったキスが、シーズン最後の定位置を獲得する。これにより、技術的な問題でドイツ・ニュルブルクリンクの予選で失格裁定を受けたことを除くと、キスが年間の予選スーパーポール全セッションを制覇する偉業を成し遂げた。
迎えたレース3は接触バトルによるレッドフラッグ掲出の展開となり、アルバセテとラッコの攻防に始まり、2台がコース上でワイドになると、レンツの背後で視界を遮られたハーンは行き場を失い、連結部に乗り上げるようにしてクラッシュ。ここで20分間のレース中断が宣言される。
この間、ヒットされたレンツのMANは修復が叶ったものの、ハーンのマシンはダメージが大きくインターバルでの修復は不可能との判断に。リスタート後はポールのキスがそのまま前方に姿を消し、年間16勝目のトップチェッカー。地元アルバセテの猛攻を凌いだラッコが続いた。
そして前日同様のリバースグリッド戦となった2022年最終ヒートは、スタートでクルシムを出し抜いたカルヴェが早々に首位を奪うと、そのまま12周を走破してトップチェッカーを受け、この瞬間にプロモーターズカップの年間チャンピオンを獲得が決まった。
2位クルシムの背後では、レース終盤に王者キスやトラックが修復されたハーン、そしてラッコらの猛攻を凌いだシュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)が続き、未勝利に終わった苦戦のシーズンを表彰台で締めくくっている。