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親切心が仇になる!? トラブルを招く4つの運転マナー

 よかれと思ってやったはずなのに相手には不快感を与えてしまった……。そんな経験はしたことはないだろうか? これはクルマを運転しているなかでも起こりがち。マナーを守るつもりで行った行為も相手は不快きわまりない行為と感じてしまう場合もある。その結果、大きなトラブルに発展する恐れも。

 ここでは、トラブルや交通事故の原因になりかねない、4つの運転マナーを検証していきたい。

文/斎藤由紀子、写真/写真AC、イラストAC

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クラクションの音は不快指数100%の爆音!

親切心が仇になる!? トラブルを招く4つの運転マナー
クラクションの音はなんと、救急車のサイレンよりデカい!! 乱用することは騒音をまき散らす迷惑行為にほかならないのだ

■救急車のサイレンより大音量!?
 クラクションの使い方に関しては耳タコという人も多いかもしれないが、それほどクラクションが原因のトラブルが多いということだ。事実、クラクションが引き金となった殺人事件も数多く発生している。

 保安基準でクラクションの音は112デシベル以下87デシベル以上と定められているが、112デシベルとは電車が通る時のガード下の音くらいの大きさで会話を成立させるのはほぼ不可能とされている大きさ。救急車のサイレンでさえ80デシベルだ。

 クラクション(警音器)はその名のとおり警告音を鳴らすための装備なので大音量であることは仕方がないが、それだけの大音量を発する装備を乱用すればおのずとトラブルの種になることは想像に難くないはずだ。

 たとえお礼のクラクションであっても、周囲の人たちを不快にさせたり驚かせたりする可能性がある。また、周囲に子どもや足腰が弱った高齢者などがいた場合、驚いて転倒させたりする危険もはらんでいることは心しておこう。

■お礼であっても法律違反
 クラクションは基本的には事故を防ぐために鳴らすもので、鳴らしていいシチュエーションは法的にかなり限定されている。

 道路交通法第54条では「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。 ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」とされている。

 つまり、お礼の意味でクラクションを鳴らすのは法律違反なのだ。警音器使用制限違反とみなされると3000円の反則金が科せられる。

 不要なトラブルを回避するためには、クラクションは使用せず、軽く会釈をする、手をあげるなどの方法でお礼をすることが賢明だ。

親切心パッシングにはメリットよりデメリットが多い

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たとえ他車に行ったパッシングであっても、他のクルマが挑発されたと勘違いすることも考えられる。パッシングの使用は極力控えることが賢明

■パッシングで道を譲るという親切心が事故を誘発!?
 パッシングもクラクション同様、相手を不快にさせるリスクが高い行為。道を譲るつもりだったり、譲ってもらったお礼にパッシングをしたつもりが挑発行為と勘違いされ、あおり運転の被害者になってしまったという事例は決して少なくないのだ。

 また、パッシングの場合は他にも危険なシチュエーションを生み出す恐れがある。例えば、交差点の右折待ちをしている対向車が「お先にどうぞ」パッシングをされることで、その対向車以外の状況の確認がおろそかになり、事故を誘発することも考えられる。道を譲ってくれている対向車を追い越してバイクや自転車が突っ込んできたりする恐れもあるからだ。それで事故が発生したら、あなたは「余計なお世話」をしてしまったということになってしまう……。

■「お先にどうぞ」は全国共通ではない
 道を譲る際に行うパッシングが「お先にどうぞ」ではなく、「お先に行きますよ」と、自分が止まらず走り続けるつもりであることを知らせるという真逆の意味を持つ地域もある。

 もしあなたがそういった地域を走っていてパッシングをされ、道を譲られたと思い込んで右折をした場合は追突事故が発生する危険もある。逆に、道を譲ったつもりなのに「こっちが優先だろ!!」と激怒されることもあり得るのだ。

 ただしクラクションとは異なり、パッシングを規制する法律は存在しないものの、執拗にパッシングをした場合はあおり運転=妨害運転とみなされる可能性がある。警察のホームページなどでもパッシングがドライバー同士のコミュニケーションツールとして浸透していることは認識したうえで、パッシングの使用にはリスクも伴うため、使い方には注意が必要としている。

 対向車が道を譲ってくれたので感謝の意を示すためのパッシング自体は法的に問題がないとはいえ、パッシングという行為に良いイメージを持っていない人が多いことも事実。そのため、周囲が明るい時は軽く手をあげて謝意を示したり、ジェスチャーで道を譲ることを示すほうがトラブルに巻き込まれるリスクが減らせる。

無灯火走行の危険も…停車中のライトオフ

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信号待ちで停車している時に、対向車がヘッドライトをつけたままだとまぶしいと感じることはあるが、走行に支障をきたすということはないので、イライラする必要もないのだが……

■停車中でも存在を周知することは必須
 これに関しては、なかなか難しいところ。「対向車がまぶしくないように」という心遣いなので、相手をイライラさせたりすることはありえない。しかし、停車中のライトオフは教習所でも警察でも推奨していない。

 安全面からみると停車中のライトオフは好ましいことではない。夜間は、「今、ここにクルマがいますよ」と、事故を防ぐために周囲のクルマや二輪車、自転車、歩行者にクルマの存在をしっかり認識できるようにしておくことが必要だからだ。

 また、ヘッドライトのつけ忘れの原因となることも大きな問題。特に、交通量が多い幹線道路や周囲が明るい道では無灯火であることに気づかず走行してしまう恐れがある。ヘッドライトは視界をクリアにするためだけではなく、前述のとおり歩行者や自転車、他車に存在を知らせるという役割も持つ。無灯火に気づかず走行していると、クルマが近づいていることに歩行者や自転車が気づくことができず、急な飛び出しなどをしてくる可能性が高くなる。

 もちろん、無灯火走行は違法。取り締まられた場合、違反点数1点、反則金6000円(普通車)が科せられてしまう。

 こういったことを考慮すると、停車中のライトオフはしてはいけない心遣いということになる。

 ただし、2020年からはクルマのヘッドライトを自動点灯する「オートライト」が義務化され、ヘッドライトが消せないクルマが増えている。そのため、今後は停車中のライトオフマナーは消滅していくことになるだろう。

お礼どころか追突リスクが高まるサンキューハザード

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ハザードを操作すること自体が事故の原因となる場合も。運転中はわき見運転の原因となる行為はできる限り減らそう

■サンキューハザードを禁止する法律はないが……
 車線を譲ってくれた後ろの車両の運転手に感謝を示す「サンキューハザード」は、もともと運送業に従事するドライバー同士が行っていたコミュニケーション手段で、それが一般にも浸透していったと言われている。

 ハザードランプとは、日本語では「非常点滅表示灯」。この名前からもわかるとおり、故障などで止まってはいけない所に停車せざるを得なくなった時に「ここにクルマが緊急停止しています」と周りのクルマに知らせることが本来の役割。つまり、謝意を示すためにハザードランプを使用することは本来の使い道からは逸脱しているということだ。

 道路交通法第18条では、ハザードランプを使用しなくてはならないシチュエーションを「夜間、幅5.5m以上の道に停車、または駐車しているときは、非常点滅表示灯か尾灯をつけなければならない」と規定している。厳密に言えば、夜間での使用に限定されているということになる。

 他に、通学通園バスに関しては小学校などの児童、生徒または幼児の乗降時にも使用が義務付けられている。

 ただし、ハザードランプはクラクションとは異なり、「使用してはいけないシチュエーション」は規定されていない。そのため、サンキューハザードが取り締まりの対象になる可能性は低い。

 とはいえ、サンキューハザードが原因の事故も多発している。例えば、交通量が多い道路でタクシーが停車のためにハザードランプを出したところ、後続車がサンキューハザードと勘違いをして減速をしなかったことから停車したタクシーに追突してしまったという事例も発生している。

 ハザードランプが緊急停止を知らせるものという本来の使い方を知っていれば、前を走っているクルマがハザードランプを出したら当然ブレーキを踏んでいたはずだ。この事故はサンキューハザードが浸透しすぎた弊害と言える。

 また、ハザードランプを操作するため視線を外すことで追突事故や不意の飛び出しなとに対応できないといったことも考えられる。

■ハンドサインで代用するのがベスト
 とはいえ、割り込みさせてもらったのにお礼をしないのは、相手を不快にさせて別のトラブルを招くこともあると心配する人もいると思う。最善の対応策は、後続車に見えるように手をあげるハンドサイン。もし、リアウィンドウにスモークフィルムなどを貼っている場合は、窓を開けて手をあげるなどもありだ。

 ちなみに、海外を運転するような場合はクラクション、パッシング、ハザードランプを使用して謝意を表すのはタブー。海外では、威嚇や挑発ととらえられる可能性が高く、危険な目に遭う恐れがあるからだ。これらの習慣は日本限定と考えよう。

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