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ぜーんぶ一緒のなぜ!! スチールホイールのデザインがアレだけのワケ

 軽自動車やコンパクトカーのベースグレードなどに採用されるスチールホイール。一般にフルホイールキャップなるモノを装着しており、普段はその全貌がよくわからないモノがほとんど。

 だが、それを取ってしまえば大体同じデザインのスチールホイールが出現!! アルミホイールは素材の観点からさまざまなカタチ、あるいはデザインが可能となっているが、スチールホイールは誰しもが想像するアレ程度……も、もう少しなんとかならないのか!? そもそもなんであのデザインなんだ!?

文/小鮒康一、写真/SUBARU、SUZUKI、NISSAN、AdobeStock(トップ画像=Chepko Danil@AdobeStock)

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■安くて強度もアルミより有利!! スチールホイールの知られざる実力

ワンメイクレース仕様のスバル BRZ “Cup Car Basic”。ユーザーが好みのホイールを後付けできるようにあえて何の変哲もないスチールの武骨なホイールを装備しているが、「このままでイイ!」といいたくなるほど激シブ

 商用車や軽自動車、コンパクトカーのエントリーグレードなどに採用されることが多いスチールホイール。いわゆる“鉄チン”とも呼ばれるモノだが、アルミホイールよりも低コストで製造できること。強度や耐久性の面でアルミホイールよりも優れているためにこういった仕様の車両に採用されるケースが多いものだ。

 そんなさまざまな車種に採用されているスチールホイールであるが、サイズこそバラバラであるにもかかわらず、そのデザインはほぼ似通っている。ディスク部分に丸型、もしくは長穴や長方形の穴が規則正しく並んでいるというものがほとんど。

 その無骨さ故にアウトドアカスタムなどを施される車種に敢えて装着するケースや、スチールホイールを模したデザインのアルミホイールが存在するといった逆転現象も起きているほどなのである。なぜスチールホイールはどれも似通ったデザインを採用しているのだろうか?

■自由なデザインはムリ!? そもそもアルミホイールと製造方法も違う!!

スチールホイールは鋼板をプレス機で打ち抜いて作るため複雑なデザインを施しにくく、コストや強度の都合もあり、どれも似通ったデザインとなる(evannovostro@AdobeStock)

 同じホイールではあるものの、材質が違う両者のホイールは製造方法も異なっている。アルミホイールにおいてはホイールの型に溶かしたアルミを流し込んで生産する「鋳造」や、型に流し込んだあとに圧をかけてより強くて軽量なホイールとする「鍛造」という製造方法が取られている。

 一方のスチールホイールは鋼板をプレス機で打ち抜いて作るという製造方法が取られているため、そもそもそこまで複雑なデザインを施すことが難しいという根本的な理由が存在しているというワケだ。

 そのためコストと強度を鑑みた結果、ああいったどれも似通ったデザインとなってしまっているというのが実際のところなのだ。

■クラウンですら鉄チンだった!? アルミに憧れすぎて飾り鉄チンなる今思えば不思議なモノも

 今でこそアルミホイールもかなり安価で生産することができるようになり、我々ユーザーも買いやすい値段で入手できるようになっている。だが、まだまだ超高級品だった時代はスポーツモデルや高級セダンでもアルミホイールを標準装着しているのはごく一部の車種のみだった。

 その時代に採用されていたのが、“飾り鉄チン”などと呼ばれるデザイン性を持ったスチールホイールである。1970~80年代にかけて多く採用されていて、代表的な車種ではトヨタ クラウンやセリカといったモデルがそれとなっていたのである。

 ちなみに現在においても当時ほど凝ったデザインではないものの、スタイリッシュなスチールホイールも存在しており、例えばハスラーやジムニーシエラのスチールホイールなどはその車種が持つイメージとも相まってスチールホイールでありながら人気の高いものとなっている。

■スチールホイール=重いってのは過去の話!! アルミより軽いのもかなりあるゾ

日産 デイズはグレードによってスチールのホイールを装備するものとアルミホイールを装備するものに分かれるが、アルミホイールのほうがスチールよりも重い。アルミホイール=軽量とは一概に言えないのだ

 余談ではあるが、スチールホイール=重い、アルミホイール=軽量と考えている人は多いのではないだろうか?

 確かに材質としてみた場合は鉄よりもアルミの方が軽量であることは間違いないのだが、ホイールの形状などによってこの常識が覆ることもあるのである。

 特に純正品として採用されているアルミホイールは、さまざまな使用用途やシチュエーションを見越してかなり強度に余裕を持たせた設計となっていることが多く、かなり肉厚に作られていることが多い。

 さらに最近多くの車種で採用されているディッシュタイプで切削加工がなされているようなデザイン性の高いホイールは、かなりの重量となっているケースも珍しくないのだ。

 一方、シンプルなデザインで鋼板をプレスして作っているスチールホイールは、そもそも十分な強度を持ち合わせているため、アルミホイールより軽量となっていることも多いのである。

 例を挙げると、日産の軽自動車であるデイズに装着されているホイール。

 ベーシックなグレードに装着されている14インチのスチールホイールの重量は1本約5.5kgとなっているが、中間グレードに採用されているアルミホイールでは1本約6kgと500gも重くなっている。ちなみにこの14インチホイールはオフセットやリム幅は全く同一である。

 また最上級グレードに装着されている15インチの切削加工が施されたアルミホイールに至っては、1本7.1kgとかなりの重量となっており、一概にアルミホイールだから軽量とは限らないことがお分かりいただけるだろう。

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