日本の駐車場の1台当たりのスペースは平均的に幅が2.3m~2.5m×長さが5.0~6.0m。日本の道路の車幅は一般国道、高速道路ともに3.5m程度。これは昔から変わらない。にもかかわらず、クルマはどんどんデカくなっている。手に汗握りながら駐車を行っている、トラックが横に走っているとドキドキしながらハンドルを握っているという人も多いはず。
そんななか、先日フルモデルチェンジを果たしたシエンタは5ナンバーサイズをキープ。クルマが膨張の一途をたどり、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンも全車3ナンバーになってしまうなど、5ナンバーサイズボディのクルマが激減するなか、5ナンバーのボディサイズはそのままにフルモデルチェンジを果たしたシエンタの存在感は大きい!
ミニバンが肥大化している現状を踏まえ、今回はボディサイズと居住性の両立に焦点を当て、デカいミニバン全盛期にあえて再評価したい5ナンバーサイズミニバンを検証してみたい。
文/藤原鉄二、写真/スズキ、トヨタ、日産、ホンダ
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狭さ感ゼロ! シートアレンジの豊富さは随一!! 「日産 セレナ」
セレナは、1991年、バネットコーチのフルモデルチェンジにあわせてデビュー。当時は「バネットセレナ」という名で販売された。それ以来、1BOXタイプのミニバンとして安定した人気を維持し続ける日産の主力車種のひとつ。
5代目となる現行モデルは2016年に登場。日産の誇る運転支援機能プロパイロットをいち早く搭載するなど、鳴り物入りでの登場となった。基本は5ナンバーボディのラインナップとなるが、エアロパーツを装着したハイウェイスターのみが5ナンバーの規格を超えているため3ナンバーとなっている。
セレナのウリはなんといっても、全高1.8m以上の1.5~2.0リッタークラス8人乗りミニバンNo.1の広さとシートアレンジの豊富さ。グレードによって仕様は異なるが、1-2-3列ウォークスルーモード、2列+荷物モード、スーパーカーゴモード、カーゴモード、自転車載せモード、3列ゆったりモード、6人旅モード、2列スーパーリラックスモード、ベビーケアモード、2列横スライドウォークインモード、3列目テーブルモード、2-3列フルフラットモードなどなど、とにかくシートアレンジのバリエーションの豊富さはミニバン随一!
特にセレナをお薦めしたいのは、アウトドアレジャーなどを楽しむ人。車中泊などが快適に楽しめる装備やモデルが用意されているからだ。なかでも、オーテックが手掛けるXV、e-POWER XVをベースにした車中泊仕様車シリーズの「セレナ マルチベッド」は特にお薦め。大人でもゆったり寝ることができる奥行2150mm、幅1310mmのベッドが装備されているほか、防水シートも標準装備となっている。
プロパイロットは一部グレードでオプション設定となっているが、360°セーフティアシスト(全方位運転支援システム)が全車標準装備されるなど、安全装備の面も合格点で、お得感は高い。
唯一の欠点は1865mmと車高が高いため、立体駐車場では難ありのことが多い点か……。
5ナンバーが”ちょうどいい”と納得できる!「ホンダ フリード
モビリオの後継車として2008年のデビューしたフリード。現行モデルは2016年9月にフルモデルチェンジした2代目となるが、2021年6月末で累計販売台数が100万台を突破するという破竹の勢いで売れ続けている5ナンバーサイズのミニバンのトップランナー。
「ちょうどいいホンダ」というキャッチフレーズどおり、いろいろな部分がホントにちょうどいいのがホンダ フリードの良さ。コンパクトなボディサイズながら、大人でもゆったり座れる3列目シートを備えるなど、3ナンバーサイズのミニバンに勝るとも劣らない広々とした室内空間はちょうどいい以上!
2列目シートが個別にゆったり座りたい人のためのキャプテンシートと、スペースを有効活用できる長椅子スタイルのベンチシートのいずれかを選択できることも嬉しいポイント。また、さらにゆったり座れる2列シート仕様(フリードプラス)もラインナップ。
おまけに、先進の安全装備「ホンダセンシング」が全車に標準装備! 廉価グレードでも衝突軽減ブレーキ(CMBS)、歩行者事故低減ステアリング、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、LKAS(車線維持支援システム)、路外逸脱抑制機能、誤発進抑制機能、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、後方誤発進抑制機能が搭載されているというのは超嬉しい。
5ナンバーサイズというボディサイズもさることながら、安全装備の充実ぶりもフリードのお得感を高めるポイント。フリードに乗ると「5ナンバーでちょうどいいじゃん」と納得してしまうはず。
コスパの良さはダントツ!「スズキ ソリオ」
5ナンバーサイズだったランディが7月のフルモデルチェンジで新型ノアのOEMとなったことで3ナンバーボディに。ということで、ここでの一押しはソリオ、ソリオのカスタムモデルであるソリオバンデッド。
2020年11月に登場した現行モデルは4代目にあたる。ソリオは先代よりも全長が80mm延長、全幅は20㎜拡大されて1645mmに、ソリオバンデッドも全長が70mmほど延長されている。サイズ的にはひと回り大きくなったものの、最小回転半径は先代と変わらない4.8mと、取り回しの良さがキープされているのは嬉しい点だ。
今回のフルモデルチェンジで傾注されたのが、後席の快適性向上と荷室の拡大。実際、足元スペースは先代よりかなり広くなった印象を受けるはずだ。トールワゴンとしてもカテゴライズされるだけに室内高は1365mmと、ヘッドクリアランスも十分。ちなみに、フリードの室内高が室内高1275mm、シエンタは1300mmとなっている。
荷室床面長は100mm拡大されたことで荷室空間も拡大。さらに、シートアレンジによっては自転車やサーフボードなどの長尺物もラクに積むことができる。ラゲッジスペースは大人5人が乗った状態でも通常の大きさのゴルフバッグ2つは詰めるスペースを確保している。
今回ピックアップしている車種のなかで2列シート、5人乗りのみのラインナップとなるのはこのソリオだけだが、日常使いのなかで不便さを感じることはないはずだ。
また、デュアルカメラブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストに加えて、標識認識機能を搭載したスズキセーフティサポートが装備(一部オプション)されているなど、安全装備の充実度も推しポイント。
ソリオとソリオバンデッドのどちらを選ぶかだが、外観はフロントグリルのデザインが大きな違いだが、インテリアはバンデッドのほうがスポーティー感が強めといったところ。居住性や取り回しに関しては同等なので、見た目の好みや標準装備の内容によって選択するということになるだろう。
控えめな価格設定も大きな魅力。特に、大きなコストアップなしに搭載が可能と言われるマイルドハイブリッドを採用することで、バンデッド(ハイブリッドモデルのみの設定)が200万6400円~213万1800円、ソリオ(HYBRID MX/MZ)では185万200円~214万8300円と、ハイブリッドモデルが消費税込みでも200万円前後で購入できてしまうというのは大きな魅力! 3ナンバー車ではできない技がいっぱいのソリオも捨てがたい5ナンバーミニバンだ。
メインターゲットはファミリー層「シエンタ」
オオトリを飾るのは、この8月にフルモデルチェンジされたばかりのシエンタ。トヨタのミニバンラインナップのなかで5ナンバーサイズのモデルはついにこのシエンタのみとなってしまった……。
2003年に登場した初代はコンパクトなボディサイズながら7人がゆとりをもって乗車できるミニバンとして人気に。2015年に登場した2代目は先代と比較して全長135mm、ホイールベースは50mm延長、全高も2WD車が5mm、4WD車が15mm高くなるなど、ひと回り大きくなったものの、全幅は1695mmと、5ナンバーサイズであることにこだわったスペックに。
そして3代目となる今回のモデルもそのこだわりは健在。5ナンバー枠内のボディサイズを維持しての登場となった。「日本の家族の生活に寄り添い、安心・快適な毎日をサポート」というちょっとほっこりしたコンセプトはまさしく日本の道路・駐車場事情を理解したものだ。
3列シート車と2列シート車がラインナップされているが、今回の目玉は、いずれも2列目シートの居住性の向上。前席と後席との距離が非常に広く、買い物かごやバッグなどを足元に置いても、足の置き場がないといったこともなし。
また、室内高が20mm拡大されたことで、先代以上に解放感のあるヘッドクリアランスを実現している。パワースライドドアの開口部の高さも先代より60mmを拡大し1200mmとすることで後席の乗降性を高めるなど、微に入り細に入りの快適さを追求した変更が施されている。
最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備(グレードにより搭載機能が異なる)とするなど、安全面も強化。これで195万円~310万8000円という幅広い価格レンジも大きな魅力だ。
5ナンバーサイズであることのデメリットをいっさい感じさせない新型シエンタ。ここしばらく販売台数も含め、ライバルのフリードに大きく水をあけられていた感が否めなかったが、今後、シエンタの巻き返しは確実!
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