ミドルクラスのSUVの全幅は、ハリアー=1855mm、RAV4=1865mm、エクストレイル=1840mm、CX-60=1890mmと、今やミドルクラスSUVの平均の全幅は1850mmと、デカ過ぎで日本の道に合っていないといっていい。
そこで、いったいどのくらいまでが、日本の道路を走るための許容範囲なのか、どれくらいの全幅から嫌悪感を感じるのか、幅デカ過ぎでも運転しやすいSUVはあるのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、ベストカーweb編集部
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■車高が高く視界のよいSUVだが年々全幅がデカくなる傾向のため、運転しにくいSUVが増えた
SUVは大半が海外市場を視野に入れて開発され、全長が短くても、全幅のワイドな車種が多い。5ナンバーサイズに収まるのは、ジムニー&シエラ、ライズ&ロッキー、クロスビー程度だ。そのほかは、全長が4m少々のヤリスクロスでも、全幅は1700mmを超えて3ナンバー車になる。
カローラクロスとレクサスUXは、両車ともに全長は4500mm弱だが、全幅は1800mmを上まわる。つまり今のSUVの大半は、全長が4400mm以下なら全幅も1800mmを下まわり、全長が4400mmを超えると全幅も1800mmをオーバーとなる。SUVの全長と全幅のバランスは、ミニバンなどとは大幅に異なる。
そこで気になるのが運転のしやすさだ。日本の街中を走る時の尺度として、全幅が1800mmを超えると、取りまわし性が一気に悪化する傾向がある。そこで先代型までのクラウンは、一部の仕様を除くと、全幅を1800mm以下に抑えていた。
以前のクラウンの開発者は「全幅が1800mmを超えると、運転感覚も変わるため、お客様はこの数値にこだわる」と述べていた。輸入車のBMW3シリーズも、日本仕様の全幅を1800mmに抑えていた時期があった。
このように全幅の1800mmは重要な数値だが、メーカーからは「全幅が1800mm以上でも、ミラー・トゥ・ミラーの寸法(ドアミラーの外側で測った全幅)を抑えていれば、運転がしにくくならない」という話も聞かれる。
これは状況によって異なる。狭い道を通り抜ける時は、ミラー・トゥ・ミラーの寸法が大切だが、駐車場での乗り降りでは全幅が使い勝手を左右する。ショッピングセンターなどの駐車場で、両側に別の車両が駐車していると、全幅が1800mmを超えるワイドボディはドアを開きにくい。
また全幅が1800mmを上まわると、ドライバーの視界に入り込んでくる左側のフロントピラー(右ハンドル車の場合)が、見えにくくなる。左側のピラーが遠く感じられると、車幅感覚も低下して、運転しにくい印象になるわけだ。
■SUVの全幅の運転のしやすさの限界は?
●コンパクトSUVのボディサイズ(全幅の小さい順)
・ジムニーシエラ:全長3550×全幅1645×全高1730mm
・ライズ&ロッキー:全長3995×全幅1695×全高1620mm
・キックス:全長4290×全幅1760×全高1605mm
・ヤリスクロス:全長4180×全幅1765×全高1580mm
・エスクード:全長4175×全幅1775×全高1610mm
・ヴェゼル:全長4330×全幅1790×全高1590mm
・CX-30:全長4395×全幅1795×全高1540mm
・カローラクロス:全長4490×全幅1825×全高1620mm
・レクサスUX:全長4495×全幅1840×全高1540mm
そこでSUVの全幅について、運転のしやすさの限界はどのあたりなのか、改めて考えてみたい。
まず基本的には、全幅はワイドになるほと運転がしにくく感じられる。一番運転しやすいのは、先に挙げたライズ&ロッキーやクロスビーのような5ナンバー車だ。ただし5ナンバーサイズのSUVは選択肢が限られ、選ぶのは難しい。
そこでコンパクトSUVとして一般的な選択になるのが、全幅を1800mm以下に設定した3ナンバー車だ。人気の高い推奨車種としては、キックス(全幅は1760mm)、ヤリスクロス(1765mm)、ヴェゼル(1790mm)、CX-30(1795mm)がある。
これらの車種は、全幅が1800mm以下で全長も4400mmを下まわるから、3ナンバー車でも混雑した街中や駐車場で扱いにくい印象はない。
特にヴェゼルは後席が広く、4名乗車時の快適な居住性と、運転のしやすさを両立させた。
キックスは荷室長(荷室の奥行寸法)に余裕があり、荷物をタップリと積めて運転しやすい。コンパクトなサイズには、実用的なSUVがそろう。
■いまやミドルクラスSUVの全幅の平均は1850mm
一方、全幅が1800mmを超えると、駐車場で乗り降りする時は、ほぼすべてのSUVがワイドなボディを意識させる。左右に車両が駐車している時は、ドアの開閉時に、ぶつけないように気を使う。日本の駐車場のサイズでは、全幅が1800mmを上まわると、取りまわし性の限界を超えてしまうのだ。
一般公道を走る時は、車種によってユーザーの評価が分かれる。運転している時に、ボンネットや左右のフェンダーがどのように見えるのか。この違いにより、ボディの先端位置や車幅の分かりやすさ、サイズの感覚、運転のしやすさが変わってくる。
ボディの四隅が分かりやすいと、全幅が1800mmを超えても、裏道や駐車場を除くとさほど大柄な印象は受けない。また最小回転半径が5.4m以下に収まると、車庫入れをする時などに、ボディが比較的コンパクトに感じられる。
ハリアー、RAV4、エクストレイル、アウトランダー、CX-60、ZR-VといったミドルサイズSUVの全幅を見ていくと、いまやミドルクラスSUVの平均は1850mm(実際以下13台の全幅の平均は1850mm)といっていいだろう。最小回転半径は、売れ筋グレードで見ると、5.4~5.5mだ。
●ミドルクラスSUVのボディサイズ(全幅の小さい順)
・エクリプスクロス:全長4545×全幅1805×全高1685mm
・フォレスター:全長4640×全幅1815×全高1715mm
・エクストレイル:全長4660×全幅1840×全高1720mm
・ZR-V:全長4570×全幅1840×全高1620mm
・CX-5:全長4575×全幅1845×全高1690mm
・アリア:全長4595×全幅1850×1655mm
↓全幅1850mm以上のSUV
・ハリアー:全長4740×全幅1855×全高1660mm
・アウトランダーPHEV:全長4710×全幅1860×全高1745mm
・bZ4X:全長4690×全幅1860×全高1650mm
・ソルテラ:全長4690×全幅1860×全高1650mm
・RAV4:全長4610×全幅1865×全高1690mm
・レクサスNX:全長4660×全幅1865×全高1660mm
・CX-60:全長4740×全幅1890×全高1685mm
これらのなかで、最も運転しやすいのはエクストレイルになる。水平基調のボディによって、SUVのなかでもボンネットが良く見える部類に入る。フロントピラーの位置は、比較的手前に引き寄せられ、斜め前方の見やすさも損なっていない。
エクストレイルの全幅は1840mmだから、ZR-Vと並んで、ミドルサイズSUVに属する6車種では最も狭い。最小回転半径も5.4mに収まり、ボディスタイルとサイズの両方で、運転のしやすさに配慮した。従って運転中もボディがあまり大きく感じない。
RAV4もボディの四隅が分かりやすい。ボンネットが視界にしっかりと収まる。ヘッドランプを高い位置に吊り目状に配置したから、左右のフェンダーの上端が少し盛り上がり、この部分も視野に入って車幅が分かりやすい。
RAV4の全幅は1855mm、最小回転半径は5.5mだから、ミドルサイズのSUVでは平均的だが、運転がしやすく感じる。
アウトランダーも、水平基調のデザインにより、ボディの四隅が分かりやすい。フロントピラーを手前に引き寄せたから、斜め前方も見やすい。全幅は1860mm、最小回転半径は5.5mになる。ZR-Vも比較的運転しやすい。このあたりが取りまわし性の限界だ。
ハリアーは全幅や最小回転半径はRAV4と同等だが、外観に少し丸みがあり、四隅の位置が若干分かりにくい。街中ではボディが少し大きく感じるので、購入時には注意したい。
CX-60は、全幅が1890mmとワイドだ。混雑した街中や駐車場では、ボディが大きく感じる。ボンネットの視認性に不満はなく、後輪駆動がベースとあって、最小回転半径は5.4mに収まる。ボディが大柄な割に小回りの利きは良いが、1900mm近い全幅には注意したい。
このように車種によって運転感覚が異なるため、SUVを買う時は、販売店の試乗車を使って、頻繁に使う混雑した街中を走る。縦列駐車や車庫入れも試すと、運転のしやすさを総合的に判断できる。
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