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「と…止まらない!!??」最近はサイドブレーキレバーが消失!! トラブルでブレーキが利かなくなったらどうすればいいか

 電動パーキングブレーキが普及し、昨今の新型車ではパーキングブレーキ(サイドブレーキ、足踏み式を含む)がないクルマが増えてきました。

 ご存じのとおり、パーキングブレーキは、レバーを引く(足踏み式ではペダルを踏む)ことで、止めた車が動かないようにするためのブレーキ。また、マニュアル車の坂道発進での使い方のような補助ブレーキとしての役割もあります。

 また、緊急ブレーキとしての役割も。フェード現象やベーパーロック現象に陥ってフットブレーキが使えなくなった際、エンジンブレーキとともにパーキングブレーキも使うことで、緊急時にクルマを止めるアイテムとして利用することができます。

 以上は教習所でも習うことですが、これが電動パーキングブレーキとなると、どう使っていいのか、よくわかりませんよね。先日には、フェード現象に陥ったことが原因と思われる事故で観光バスが横転、ひとりの方が亡くなるという悲惨な事故も起きています。電動パーキングブレーキのクルマで、フェード現象によってフットブレーキが利かなくなった場合、どうすればいいのでしょうか。

文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ nakedking
写真:Adobe Stock、写真AC

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非常事態では、E-PKBのスイッチを「引き上げ続ける」

 従来の手引き式や足踏み式のパーキングブレーキは、レバーやペダルから後輪のブレーキまでワイヤーが繋がっていて、そのワイヤーへテンションをかけることでブレーキが作動しますが、電動パーキングブレーキ(以下E-PKB)では、そのワイヤーが無くなり、後輪のディスクブレーキのキャリパー内部に付けたモーターで、ブレーキを作動させます。電動パーキングブレーキが作動するとき、「ウィーン」という音が聞こえることがありますが、あれはパーキングブレーキを動作させるモーターの音です。後輪がドラムブレーキの場合は、モーターでワイヤーを巻き取る構造となっています。

 E-PKBは、非常事態の際、走行中にパーキングブレーキのスイッチを引き上げ続けることで、ブレーキを利かせることができます。たとえば日産車の場合、引き上げている間はブザー音とともにE-PKBが作動し、スイッチから手を離すと電動パーキングブレーキは解除されるように、設計されているようです。
 
 なかには、E-PKBのスイッチを引き上げ続けることで、エンジンの制御も含めて減速する車種や、4輪のブレーキ制御を行ってくれる車種もあります。メーカーや電動パーキングブレーキの世代によって、動作がバラバラですので、非常事態に備え、愛車の電動パーキングブレーキがどのような動作をするのか、自動車メーカーのWEBマニュアルで調べたり、ディーラー担当者へ確認しておくとよいでしょう。

非常事態の際には、走行中にパーキングブレーキのスイッチを引き上げ続けることで、ブレーキを利かせることができる(PHOTO:Adobe Stock_ Andy)

ギアをいきなり「P」や「R」へチェンジしても減速効果は期待できない

 ワイヤーやロッドとトランスミッションがつながっている従来シフトのAT車では、トランスミッションのロック機構を破壊する覚悟であれば、走行中にギアを「P」や「R」にすることで、クルマを無理やり減速させることは、できなくはありませんでした。ただ、急減速ができたとしても、スピンをしてしまったり、走行不可となってしまう恐れがあるため、一切おすすめはできません。

 一方、E-PKBが備わる電制シフターのクルマでは、ロックピンの作動が電制化されており、走行中にPに入れたとしても、システムが「誤操作」と判断し、ギアがロックされることはありません。つまり、ブレーキが利かないからといって、いきなりギアを「P」に入れても、減速の効果はほとんど期待できないのです。また、エンジンをオフにするのもNGです。油圧パワーステアリングの場合だとパワーステアリングが効かなくなり、緊急回避が困難になってしまいます。

最後の手段は、緊急避難場所へ突っ込む

 電動パーキングブレーキを引き上げ続けても止まることができない場合は、最終手段として、道路脇に設置されている緊急避難所があればそこへ突っ込むか、ガードレールや路肩に車体を擦りつけて、強引にクルマを停止させます。

 緊急避難所は、土や砂利で坂がつくられており、クルマの勢いをうまく受け止めてくれるようになっています。またガードレールで減速するならば、ガードレールとクルマとの接触面積が増えるよう、ボディの側面全体を擦り付けるようにしてください。そして、同乗者がいる場合には、事前に、足を突っ張ってシートベルトを握りしめ、頭や体を守るように声をかけ、覚悟を決めて身構えてもらってください。できれば車両転覆が起きやすいコーナーではなく、直線の場所で止まりたいところです。

 クルマを止めたらガードレールや路側帯側へハンドルを切り、他車を巻き込むような2次災害に発展しないよう、備えます。ギアをパーキングにすることもお忘れなく。

◆      ◆     ◆

 フェードやべーパーロックだけでなく、クルマに何らかのトラブルが起き、ブレーキが機能しなくなる可能性は、ゼロではありません。もしもトラブルが起きたとしても、落ち着いて冷静に必要な行動がとれるよう、普段からイメージしておくこと、そしてなにより、フットブレーキを酷使するような運転は避けるようにしてください。

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