F1第21戦ブラジルGP土曜日のスプリントに続いて、日曜日の決勝レースでもメルセデスに完敗したレッドブル。3番手からスタートしたマックス・フェルスタッペンはルイス・ハミルトン(メルセデス)との接触によって6位、チームメイトのセルジオ・ペレスは7位に終わった。今シーズン、レッドブルが表彰台を逃したのは開幕戦バーレーンGP以来だった。
しかし、このレースで多くの人々の注目を集めたのは、レッドブルが敗れたことよりも、レース終盤にかわされたふたりのドライバーとチームとの無線内容となった。
レースは終盤にセーフティカーが出動し、60周目に再開された。このとき、ペレスは3番手だったが、セーフティカー出動中にタイヤ交換を行うことができず、さらに上位勢ではただひとりミディアムタイヤだったこともあり、再スタート後は防戦一方となった。
64周目にはドライバーズ選手権で2位争いをしているシャルル・ルクレール(フェラーリ)にもオーバーテイクされ、5番手に後退。さらにフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)にも抜かれ6番手に。このとき、ハミルトンとの接触でレース序盤は後方に下がっていたフェルスタッペンが迫っていた。
ペレスよりもフェルスタッペンのほうがペースがいいと判断したチームは、ペレスに「ルクレールのポジションを奪ってもらうために、フェルスタッペンを前に出せ」という指示を出す。ペレスはそれを受け入れ、67周目にフェルスタッペンが6番手に上がり、アロンソ&ルクレール追撃体制をとる。
しかし、残り1周になってもフェルスタッペンは4番手のルクレールはおろか5番手のアロンソもオーバーテイクできない。そこでチームはフェルスタッペンに「ペレスとのポジション交換」を指示する。土曜日のスプリント終了時点でペレスのポイントは284点で、ルクレールが278点とペレスが6点リードしているが、日曜日の決勝レースでシャルル・ルクレールが4位(12点)、ペレスが7位(6点)に終わると、その差はなくなってしまうからだ。
だが、フェルスタッペンはチームメイトにポジションを返すことなく、アロンソに続いて6位でチェッカーフラッグを受けてしまった。直後にレースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼがフェルスタッペンに「マックス、どうしたんだ?」と無線を入れると、フェルスタッペンはこう言い返した。
「この間も言ったはずだよ。そういうことは二度と言わないでねってね。僕はその理由も説明したし、今回もそうしたまでだ」
今度はチーム代表のクリスチャン・ホーナーがペレスに無線を入れ、謝罪した。ペレスは「あれが彼の本当の姿だね」と言って無線を切った。
ホーナーはマシンを降りたふたりを呼び、緊急ミーティングを行った。その後、メディアにこう語った。
「我々はチームとして働いているし、マックスもそれはわかっている。ドライバーたちは話し合い、握手をした。我々にいま残された目標は、チェコ(ペレス)がチャンピオンシップで2位になること。それは、これまでチームとして達成したことがないことだからね。アブダビではそれを達成するためにベストを尽くす。マックスもそれを約束してくれたから、必要があれば、今度は手助けしてくれるはずだ」
フェルスタッペンもこう語る。
「(今日、ペレスにポジションを譲らなかった)理由は言わないけど、アブダビでチェコがシャルルより前でゴールするために、僕の力が必要なら、今度は協力するつもりだ」
昨年のアブダビGPでフェルスタッペンの逆転優勝を演出したのは、レース前半でペレスがハミルトンを約1周半に渡って抑えていたからだった。その走りを後方で見ていたフェルスタッペンは「伝説だ」とペレスの献身的な走りを讃えた。
あれから1年。フェルスタッペンがアブダビGPでどんな走りを披露するのか? ペレスとレッドブルだけでなく、世界中のモータースポーツファンがフェルスタッペンの走りに注目している。