米国政府科学技術政策室は、地球温暖化の影響を緩和するため、地上に届く太陽光の量を減らす方法を研究する5か年計画を調整中だ。この計画では気候介入と呼ばれる方法をいくつか評価し、研究における目標を定め、大気成分の分析に必要な機材や、気候介入によって引き起こされる影響などを含めて研究される。
科学者たちは、太陽からの光を反射することが、気候変動による温暖化を解決する根本的な解決策になるとは考えておらず、温暖化ガスの排出を減らすことが最も優先されるべきことだと述べている。また、気候介入はその方法によって環境や人体に何らかの影響を及ぼす可能性も考えられる。
しかし、人類が温暖化ガス排出目標を下回ることができない状況になると想定した場合、温暖化が加速度的に進む可能性を考え、そうしたリスクに対しバランスをとる最善策を見つけ出すための研究も重要だ。太陽光の反射による気候介入の方法としては、成層圏エアロゾル注入、海上雲の人為的な生成、巻雲の間引きなどが検討されている。
成層圏エアロゾル注入は、航空機を成層圏に飛ばし、細かい霧を噴霧して空中に浮かせ、太陽の光の一部を宇宙空間に反射させる。UCLA法学部の環境法研究者あるEdward A. Parson教授は「成層圏は穏やかなのでそこにエアロゾル状の物質を注入すれば、だいたい6か月から2年はそこにとどまるだろう」「すぐに極端な暑さのピークを取り去ってくれるだろう」と述べている。また近年増えている非常に強力なドカ降り状態の雨もすぐになくすことができるだろうとし、その即効性を強調した。
エアロゾルに用いられる成分として、選択肢のひとつに挙げられるのは二酸化硫黄だ。その効果は火山の噴火でよく知られている。たとえば1991年にフィリピンでピナツボ火山が噴火した際には、数千トンの二酸化硫黄が成層圏にまで到達し、アメリカ地質調査所の調べによれば地球全体の気温を一時的に0.5度前後下げたとされる。
一方で、二酸化硫黄のエアロゾル注入は大きなリスクも伴う。たとえば破壊されたオゾン層の再生を阻害するかもしれない。1980年代後半に、オゾン層を破壊するフロンガスの使用に規制が導入されたが、まだまだ上空のオゾン層は再生の途中だ。また二酸化硫黄は最終的に雨になったとき、強い酸性雨となり、森林、土壌や生態系に影響を及ぼす可能性がある。さらにミスト上になって地表近くに降りれば、呼吸器系疾患を引き起こす可能性も考えられる。
日の光を反射するには、他にもマリンクラウドブライトニング(Marine Cloud Brightning:MCB)と呼ばれる手法も検討されている。これは塩の結晶を海上の空気中に散布することで海面に近い雲の反射率を高める方法だ。ただこの方法は成層圏エアロゾル注入にくらべてそれほど注目されていないとParson教授はCNBCに述べている。
第三の方法としては、巻雲間伐(Cirrus cloud thinning:CCT)がある。巻雲は何種類もある雲の中でも最も高いところに発生する、氷でできた冷たい雲だが、他のタイプの雲とは異なり、赤外線の吸収が太陽光の反射を上回るため、気候全体としては温暖化の効果を生み出してしまう。そこで、この雲が発生する対流圏に氷核物質を注入して巻雲を減らすのが巻雲間伐と呼ばれる手法だ。ただこれも、現在のところは効果がどれほどあるかわからず、方法に対する信頼性もそれほど高くないと評価されている。またこの方法は地球規模で見れば降水量の増加を招く可能性が指摘されている。
どれもこれも決定打に欠けると言ってしまえばそれまでだが、今すぐ使うのでないにせよ、こうした技術について研究を重ねてなんらかの突破口を探しておくのは、間違いではないはずだ。科学者たちは、「すでに排出されたCO2が多すぎるため、いま行われている温暖化対策だけではなく、それに加えて何か他の対策も必要かもしれないと考えている。
- Source:CNBC