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 11月12日に行われたWEC世界耐久選手権の2022年最終戦『バーレーン8時間』で、LMGTEプロクラス最後のタイトルを目指しフェラーリとの争いに挑んだポルシェGTチームのケビン・エストーレは、ルーティンピットのタイミングに2度フルコースイエロー(FCY)が絡んだ瞬間、タイトル争いが「終わった」と語った。

 92号車ポルシェ911 RSR-19をドライブするエストーレとミカエル・クリステンセンは、トラブルを克服し劇的な形でGTEドライバー選手権を2連覇したAFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evoのアレンサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド組から、わずか3点差のランキング2位で2022年シーズンを終えた。

 ポルシェはチームメイトの91号車がクラスポールからスタートしていた、しかし序盤の2回のFCY中にルーティンピットのタイミングが合致したフェラーリ、およびコルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC8.Rが先行した一方、2台のポルシェはグリーン下でのピット作業となったことで、遅れを取り戻すことができなかった。

「とても悲しいし、いい気分ではないね」とエストーレは語った。

「正直なところ、何かが起きてラッキーだった他のライバルがいた一方で、僕らは絶望的な状況で、異なる戦略をとることになったから最後には3位でフィニッシュできただけだ。僕らは本当に運がなかった」

「僕らがピットインした2周後にFCYが導入される、ということが2回発生したんだ。そのせいで(2度)40秒も遅れてしまい、かなりの時間をロスしてしまった。その瞬間、レースは終わったんだ」

「51号車が問題を抱えることがあれば、僕らがタイトルを獲れるしれないという希望はあった」

「結果的にここバーレーンで僕らはタイトルを失ったけど、モンツァ、富士そしてル・マンでも、僕らは多くのポイントを失っていた」

「ポルシェにとっても、僕らにとっても、富士とモンツァのドライバーにとっても、遅すぎだった。最後の3レースは勝つチャンスがなかったね」

 ポルシェはバーレーン8時間レースの最終ラップに入るところで、3番手を走っていた91号車をピットインさせた。これにより92号車は3位へと浮上してフィニッシュし、このレースに優勝したAFコルセ52号車のランキング2位を阻むこととなった。

ポールポジションからスタートし、終盤は3番手を走行していた91号車ポルシェ911 RSR-19だったが、最終ラップで“戦略的”ピットインを行った
ポールポジションからスタートし、終盤は3番手を走行していた91号車ポルシェ911 RSR-19だったが、最終ラップで“戦略的”ピットインを行った

 ペースという面で、彼らはこのレースで2位に入ったコルベットよりも良かったとエストーレは信じている。皮肉なことに、もし92号車が2位でフィニッシュできていれば、トラブルに見舞われた51号車が5位となったことから、世界タイトルはエストーレ/クリステンセン組のものとなっていたのだ。

「だけどそれは普通にレースをした場合の話だ。ただ、僕らは普通のレースをしていたのでは、チャンピオンシップを獲得することはできなかっただろう」とエストーレ。

「だから僕らは勝つために全力を尽くしたし、51号車のトラブルのことは頭になかった。もし彼らがコース上で止まっていたら、僕らがチャンピオンを獲得していただろうけどね」

「昨年はなかった運を取り戻したいと思っていたが、結局このレースでのペースという点では、我々にはないペースが彼らにはあったんだ」

「最終的に彼らにトラブルが起きたことはアンラッキーだったが、完走できたことはとてもラッキーだったし、タイムもそれほど落としていなかった。そういうものなんだ」

「彼らは連覇を達成した。僕が推測するに、彼らはシーズンをうまくやりくりして、最後の3レースではさまざまな部分で僕らより速い状態になっていたんだと思う」

「BoP(性能調整)も役割を握っていたことは間違いないし、タイヤもそうだ。でも、それが現実というものだ」

「僕らに悔いはない。ただ、自分たちの思うようにいかなかったことが残念だよ」

特別カラーで挑むも、タイトル獲得ならなかったポルシェGTチームのポルシェ911 RSR-19。LMGTEプロは、2022年限りで終焉を迎える
特別カラーで挑むも、タイトル獲得ならなかったポルシェGTチームのポルシェ911 RSR-19。LMGTEプロは、2022年限りで終焉を迎える
92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストーレ
92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストーレ